【完結】 女に弄ばれた夫が妻を溺愛するまで

紬あおい

文字の大きさ
8 / 12

8.変わりゆく夫、不安な妻

しおりを挟む

前回タチアナの住まいに行ってから、アヴィスが妙にベタベタしてくる。
あちらに一日しか滞在しなかったけど、何の心境の変化だろうか。
初夜に愛する人が別に居ると言われてからも、充分優しくしてもらっていたのに、輪をかけて優しくなった。

これはもしや、本格的にタチアナを離れに迎える前兆なのか。
ご機嫌取りなのか。
だとしたら、尚更執務を頑張らないと。
子どもも出来ないし、追い出されたらどうしよう。

その日から私は、食事も忘れて仕事に没頭した。
ちょうどアヴィスも文官の仕事が忙しいと言って、帰らない日が増えていた。
皇宮に泊まっているのか、タチアナの住まいに行っているのかは聞けなかった。

私は今出来ることをしようと思い、どうしてもアヴィスの決裁が必要なものは分けて、雑務は全部こなした。
実家の伯爵家では家長が決裁するような書類も、公爵家ではアヴィスが請け負っていた。
文官の仕事もしながら、よく倒れないなと感心する。

(少しでも役に立ちたい。私が頑張らなくちゃ!)

グレゴリーやメアリーに体を心配されても、私は捨てられるのではないかと焦ってばかりだった。

そんなことをひと月続けていたら、私は倒れてしまった。
執務室の床にだらーんと倒れているのを、グレゴリーが見つけたそうだ。

「アヴィス様には言わないで…」

それだけ言って気絶したらしい。
医師を呼び、診察を終え、私が目を覚したのは二日後だ。
そこには、かなり怒った顔のアヴィスが居た。
碧眼が更に濃くなり、睨んでいる。

(怖っ!完全に怒ってる…どうしよう…追い出される…)

私は布団を被って視線を避ける。

「それで隠れているつもりか?」

「追い出さないで…」

「はぁ?」

「追い出さないで…ここに居させてください…お願いです…あなたのお傍に…」

心臓の鼓動が激しくなり、呼吸もままならなくなった私は、そのまま気を失ってしまった。

「ノア?おい!ノア!!」

(初めてだわ…夢かしら…)

薄れゆく意識の中で、最愛の人が私の愛称を呼んでいた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

真面目な王子様と私の話

谷絵 ちぐり
恋愛
 婚約者として王子と顔合わせをした時に自分が小説の世界に転生したと気づいたエレーナ。  小説の中での自分の役どころは、婚約解消されてしまう台詞がたった一言の令嬢だった。  真面目で堅物と評される王子に小説通り婚約解消されることを信じて可もなく不可もなくな関係をエレーナは築こうとするが…。 ※Rシーンはあっさりです。 ※別サイトにも掲載しています。

再構築って簡単に出来るもんですか

turarin
恋愛
子爵令嬢のキャリーは恋をした。伯爵次男のアーチャーに。 自分はモブだとずっと思っていた。モブって何?って思いながら。 茶色い髪の茶色い瞳、中肉中背。胸は少し大きかったけど、キラキラする令嬢令息の仲間には入れなかった。だから勉強は頑張った。両親の期待に応えて、わずかな領地でもしっかり治めて、それなりの婿を迎えて暮らそうと思っていた。 ところが、会ってしまった。アーチャーに。あっという間に好きになった。 そして奇跡的にアーチャーも。 結婚するまで9年かかった。でも幸せだった。子供にも恵まれた。 だけど、ある日知ってしまった。 アーチャーに恋人がいることを。 離婚はできなかった。子供のためにも、名誉の為にも。それどころではなかったから。 時が経ち、今、目の前の白髪交じりの彼は私に愛を囁く。それは確かに真実かもしれない。 でも私は忘れられない、許せない、あの痛みを、苦しみを。 このまま一緒にいられますか?

片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく

おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。 そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。 夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。 そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。 全4話です。

図書館の秘密事〜公爵様が好きになったのは、国王陛下の側妃候補の令嬢〜

狭山雪菜
恋愛
ディーナ・グリゼルダ・アチェールは、ヴィラン公国の宰相として働くアチェール公爵の次女として生まれた。 姉は王子の婚約者候補となっていたが生まれつき身体が弱く、姉が王族へ嫁ぐのに不安となっていた公爵家は、次女であるディーナが姉の代わりが務まるように、王子の第二婚約者候補として成人を迎えた。 いつからか新たな婚約者が出ないディーナに、もしかしたら王子の側妃になるんじゃないかと噂が立った。 王妃教育の他にも家庭教師をつけられ、勉強が好きになったディーナは、毎日のように図書館へと運んでいた。その時に出会ったトロッツィ公爵当主のルキアーノと出会って、いつからか彼の事を好きとなっていた… こちらの作品は「小説家になろう」にも、掲載されています。

お買い上げありがとうございます旦那様

キマイラ
恋愛
借金のかたに嫁いだ私。だというのに旦那様は「すまないアデライン、君を愛することはない。いや、正確には恐らく私は君を愛することができない。許してくれ」などと言ってきた。 乙女ゲームのヒロインの姉に転生した女の結婚のお話。 「王太子殿下に魅了をかけてしまいました。大至急助けてください」にチラッと出てきたアデラインが主人公です。単体で読めます。

貴方の子を産み育ててますが、ホッといて下さい

鳴宮鶉子
恋愛
貴方の子を産み育ててますが、ホッといて下さい

第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】

日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。

処理中です...