【完結】 夫の『二番目』から『唯一』になった妻 〜優しい夫が嫉妬に狂うと絶倫なんて聞いてません〜

紬あおい

文字の大きさ
3 / 14
【フィリーネ編】 夫の『二番目』から『唯一』になった妻 〜優しい夫が嫉妬に狂うと絶倫なんて聞いてません〜

3.二番目の二人

しおりを挟む

私とセルジュは、皇宮の控室に来た。
ここは、俗に言う逢い引き部屋だ。
セルジュはソファに座るよう、私に目配せする。

「殿下、この部屋は…」

「大丈夫だ。話をするだけだ。まず、座ってくれ。」

先程と変わらず、ずっと穏やかに微笑むセルジュに、私を傷付けようという意図はなさそうだ。
私とセルジュは、ソファに向かい合って腰を下ろした。

「フィリーネ夫人に詫びたくてな。俺がソフィアとアレクシスを引き裂いて結婚したから、要らぬ噂を耳に入れてしまっているのではないかと。俺があちこちから言われてるのは仕方ないが、フィリーネ夫人は大丈夫だろうか?」

「はい、私はアレクシス様を愛しておりますし、大丈夫です。そのお言葉はアレクシス様に掛けるのも、今となっては変ですし…あまりお気になさらない方がよろしいかと思います。でも、殿下はお幸せですか?」

セルジュは、ふぅっと溜め息をついた。

「幸せかぁ…そうだな…悪意があった訳ではないが、アレクシスから奪い取ってしまったように手に入れた女だからな。たぶん幸せだ。でも、ソフィアの最愛にはなれていないのかもしれん。」

(あぁ、同じだ。二番目…)

私は、セルジュが何故ここに私を連れて来たか、分かった気がした。
俯き暗い表情をしているセルジュを見て、きっと私が悩んでいる時は同じ表情をしているのだろうなと悟った。

「殿下も、ご自分を『二番目』だと思ってらっしゃるのでしょうか?」

セルジュは、はっとして顔を上げ、私を見つめた。

「フィリーネ夫人もか?どんなに愛しても、所詮俺はソフィアの『一番』にはなれないのかと思ったりするんだ。ソフィアは皇子妃として、よくやってくれてるんだがな。」

「私はアレクシス様がご友人と話しているのを聞いてしまいました…『君が一番』とか『愛してる』はちゃんと言った方がいい。妻の機嫌も良くなるし、言っているうちに真実になるかもしれないからと。それを聞いて、あぁ頑張って言ってくれてたのかと、思っていたよりもショックで…しばらく体調を崩してしまいまして…」

私はちょっと恥ずかしい気持ちになったが、セルジュは真面目に聞いてくれる。

「それはキツいなぁ…でも、ここ二年位のアレクシスは、愛妻家としての名を馳せていないか?」

「どうでしょうか…私には良くしてくださっていますし、そう見えるなら、そうかもしれません。あの会話を聞かなければ、私は何の迷いもなく幸せだったと思います。」

「今は幸せじゃないのか?」

「幸せだとは思います。二番目を受け入れる努力をしていますから。アレクシス様のご友人のお話だと、一番好きな人とは結婚出来ないらしいですし…あっ…でしたら、殿下と私は幸せなのでは?」

「要は…気の持ちようなのか。」

「そうですね。殿下とお話ししていて気付きました。誰が何と言おうと、私は夫が一番で最愛です。だから、過去や夫の心に仕舞った想いは気にしないことにします。もしかしたら、この先夫の一番になれるかもしれないし。私が欲を出さなければ、きっと今、幸せなんですよね。」

「そうだな。俺も幸せだとは思う。その気持ちを大事に、お互いに一番になれたらいいな。夫人と話せて良かった。気が楽になったよ。でも、あの二人、今何をしてるだろうか。疑う訳ではないが、気になるな。」

「見に行ってみます?イチャイチャしてたら、殴ってやりましょう!あ、殿下、フィリーネとお呼びくださいね!!」

「あはははっ!フィリーネ、面白いな!じゃあ、俺は蹴飛ばしてやる!!」

「何なら、腕を組んで嫉妬させちゃいますか?」

「それいいね!さあ、行くぞ!!」

私とセルジュは、明確な答えは出なくても、何となく心を通わせた気がした。
『二番目』の同士みたいな奇妙な関係。
笑いながら腕を組む変な二人は、弾む足取りでアレクシスとソフィアの元へ向かった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

実兄の嘘で悪女にされた気の毒な令嬢は、王子に捨てられました

恋せよ恋
恋愛
「お前が泣いて縋ったから、この婚約を結んでやったんだ」 婚約者である第一王子エイドリアンから放たれたのは、 身に覚えのない侮蔑の言葉だった。 10歳のあの日、彼が私に一目惚れして跪いたはずの婚約。 だが、兄ヘンリーは、隣国の魔性の王女フローレンスに毒され、 妹の私を「嘘つきの悪女」だと切り捨てた。 婚約者も、兄も、居場所も、すべてを奪われた私、ティファニー16歳。 学園中で嘲笑われ、絶望の淵に立たされた私の手を取ったのは、 フローレンス王女の影に隠れていた隣国の孤高な騎士チャールズだった。 「私は知っています。あなたが誰よりも気高く、美しいことを」 彼だけは、私の掌に刻まれた「真実の傷」を見てくれた。 捨てられた侯爵令嬢は、裏切った男たちをどん底へ叩き落とす! 痛快ラブ×復讐劇、ティファニーの逆襲が始まる! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

ローザリンデの第二の人生

梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。 彼には今はもういない想い人がいた。 私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。 けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。 あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。 吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 1/10 HOTランキング1位、恋愛3位ありがとうございます。

旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?

白雲八鈴
恋愛
 我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。  離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?  あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。  私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

処理中です...