【完結】 夫の『二番目』から『唯一』になった妻 〜優しい夫が嫉妬に狂うと絶倫なんて聞いてません〜

紬あおい

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【フィリーネ編】 夫の『二番目』から『唯一』になった妻 〜優しい夫が嫉妬に狂うと絶倫なんて聞いてません〜

3.二番目の二人

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私とセルジュは、皇宮の控室に来た。
ここは、俗に言う逢い引き部屋だ。
セルジュはソファに座るよう、私に目配せする。

「殿下、この部屋は…」

「大丈夫だ。話をするだけだ。まず、座ってくれ。」

先程と変わらず、ずっと穏やかに微笑むセルジュに、私を傷付けようという意図はなさそうだ。
私とセルジュは、ソファに向かい合って腰を下ろした。

「フィリーネ夫人に詫びたくてな。俺がソフィアとアレクシスを引き裂いて結婚したから、要らぬ噂を耳に入れてしまっているのではないかと。俺があちこちから言われてるのは仕方ないが、フィリーネ夫人は大丈夫だろうか?」

「はい、私はアレクシス様を愛しておりますし、大丈夫です。そのお言葉はアレクシス様に掛けるのも、今となっては変ですし…あまりお気になさらない方がよろしいかと思います。でも、殿下はお幸せですか?」

セルジュは、ふぅっと溜め息をついた。

「幸せかぁ…そうだな…悪意があった訳ではないが、アレクシスから奪い取ってしまったように手に入れた女だからな。たぶん幸せだ。でも、ソフィアの最愛にはなれていないのかもしれん。」

(あぁ、同じだ。二番目…)

私は、セルジュが何故ここに私を連れて来たか、分かった気がした。
俯き暗い表情をしているセルジュを見て、きっと私が悩んでいる時は同じ表情をしているのだろうなと悟った。

「殿下も、ご自分を『二番目』だと思ってらっしゃるのでしょうか?」

セルジュは、はっとして顔を上げ、私を見つめた。

「フィリーネ夫人もか?どんなに愛しても、所詮俺はソフィアの『一番』にはなれないのかと思ったりするんだ。ソフィアは皇子妃として、よくやってくれてるんだがな。」

「私はアレクシス様がご友人と話しているのを聞いてしまいました…『君が一番』とか『愛してる』はちゃんと言った方がいい。妻の機嫌も良くなるし、言っているうちに真実になるかもしれないからと。それを聞いて、あぁ頑張って言ってくれてたのかと、思っていたよりもショックで…しばらく体調を崩してしまいまして…」

私はちょっと恥ずかしい気持ちになったが、セルジュは真面目に聞いてくれる。

「それはキツいなぁ…でも、ここ二年位のアレクシスは、愛妻家としての名を馳せていないか?」

「どうでしょうか…私には良くしてくださっていますし、そう見えるなら、そうかもしれません。あの会話を聞かなければ、私は何の迷いもなく幸せだったと思います。」

「今は幸せじゃないのか?」

「幸せだとは思います。二番目を受け入れる努力をしていますから。アレクシス様のご友人のお話だと、一番好きな人とは結婚出来ないらしいですし…あっ…でしたら、殿下と私は幸せなのでは?」

「要は…気の持ちようなのか。」

「そうですね。殿下とお話ししていて気付きました。誰が何と言おうと、私は夫が一番で最愛です。だから、過去や夫の心に仕舞った想いは気にしないことにします。もしかしたら、この先夫の一番になれるかもしれないし。私が欲を出さなければ、きっと今、幸せなんですよね。」

「そうだな。俺も幸せだとは思う。その気持ちを大事に、お互いに一番になれたらいいな。夫人と話せて良かった。気が楽になったよ。でも、あの二人、今何をしてるだろうか。疑う訳ではないが、気になるな。」

「見に行ってみます?イチャイチャしてたら、殴ってやりましょう!あ、殿下、フィリーネとお呼びくださいね!!」

「あはははっ!フィリーネ、面白いな!じゃあ、俺は蹴飛ばしてやる!!」

「何なら、腕を組んで嫉妬させちゃいますか?」

「それいいね!さあ、行くぞ!!」

私とセルジュは、明確な答えは出なくても、何となく心を通わせた気がした。
『二番目』の同士みたいな奇妙な関係。
笑いながら腕を組む変な二人は、弾む足取りでアレクシスとソフィアの元へ向かった。
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