【完結】 夫の『二番目』から『唯一』になった妻 〜優しい夫が嫉妬に狂うと絶倫なんて聞いてません〜

紬あおい

文字の大きさ
5 / 14
【フィリーネ編】 夫の『二番目』から『唯一』になった妻 〜優しい夫が嫉妬に狂うと絶倫なんて聞いてません〜

5.一番になっていた妻

しおりを挟む

(美味しそう…)

客間のソファに座り、目の前に用意された軽食とワインを、私はじっと見つめた。

「フィリーネ、まさかと思うが、このタイミングで腹が減ったと?」

アレクシスに、すっかりバレている。

「腹が減っては戦はできぬというじゃないですか…」

「ぷぷっ、誰と戦うんだ?せっかくのご配慮だからいただこう。」

私がサンドイッチをむしゃむしゃ食べ出すと、アレクシスが吹き出す。

「やっぱりフィリーネは可愛いな。」

私はアレクシスをチラッと見て、また食べ出す。
お腹が空いてると、無駄にイライラするからだ。
アレクシスも美味しそうに食べているし、取り敢えず、和やかに食事を終えた。

「なあ、フィリーネ。ちゃんと愛されてるって何だ?」

さっきの庭園の四阿での続きが始まった。

「自信がなかったんですよ、私も殿下も。一番になれなくて、いつまでも二番目の人なんだなって。」

「いつも愛してるって、ちゃんと伝えてるだろう?」

「マクレガー様と話しているのを聞いてしまったんです。一番好きな人とは結婚出来ないとか、『君が一番』や『愛してる』は、言っているうちに真実になるかもしれないからと。それって私は、二番目とか、それ以下って話でしょう?」

アレクシスは、あぁぁあと唸りながら頭を抱えた。

「それは例え話だ。マクレガーは政略結婚で、好きな女も居ないから、いろいろやってみろって言いたかったんだ。」

「でも、アレクシス様だって結婚した時は、私を好きじゃなかったじゃないですか。だから『君が一番』とか『愛してる』とか、自分にも言い聞かせる為に言っていたのでしょう?」

「今でもそうだと思ってるのか?」

「いえ、さっき嫉妬してるのを見て、今は違うかもしれないなと思いました。」

私は、ワインをゴクゴク飲み干して、笑ってみせた。
もうお腹いっぱいだ。

「だからこの前、体調を崩してたのか…」

アレクシスは立ち上がって、私の隣に座り直し、私の肩に頭を乗せて、目を閉じた。

「俺さ、ソフィアが結婚した時、ほんとにショックでさぁ…何で殿下の目に止まったんだよって悔しかった。何もやる気がなくて、喪失感でいっぱいで。だから、フィリーネとの結婚も、どうでもいいやと思って承諾したんだ。」

さっきまでふざけていた私も、流石に涙が出そうになる。

「申し訳ありません。私がアレクシス様の未来を潰してしまいましたね。この先、素敵な出逢いがあったかもしれないのに。軽率な私のせいで、ごめんなさい。」

立ち上がって離れようとした瞬間、アレクシスの胸の中にすっぽり包まれた。

「また早とちりする!俺はフィリーネに救われたんだ。あったかくて、明るくて、いつも俺の周りをチョロチョロして、可愛くて。いつしかフィリーネは、俺の中にちゃんと一番として居たんだ。だから、言葉で伝えてきたんだぞ?」

ぎゅーっと抱き締めるアレクシスの胸の中で、今までの想いを解放するかの如く、私は子どものようにわんわん泣いた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

私の願いは貴方の幸せです

mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」 滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。 私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。

大人になったオフェーリア。

ぽんぽこ狸
恋愛
 婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。  生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。  けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。  それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。  その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。 その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

二度目の初恋は、穏やかな伯爵と

柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。 冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

貴方の✕✕、やめます

戒月冷音
恋愛
私は貴方の傍に居る為、沢山努力した。 貴方が家に帰ってこなくても、私は帰ってきた時の為、色々準備した。 ・・・・・・・・ しかし、ある事をきっかけに全てが必要なくなった。 それなら私は…

愛さないと言うけれど、婚家の跡継ぎは産みます

基本二度寝
恋愛
「君と結婚はするよ。愛することは無理だけどね」 婚約者はミレーユに恋人の存在を告げた。 愛する女は彼女だけとのことらしい。 相手から、侯爵家から望まれた婚約だった。 真面目で誠実な侯爵当主が、息子の嫁にミレーユを是非にと望んだ。 だから、娘を溺愛する父も認めた婚約だった。 「父も知っている。寧ろ好きにしろって言われたからね。でも、ミレーユとの婚姻だけは好きにはできなかった。どうせなら愛する女を妻に持ちたかったのに」 彼はミレーユを愛していない。愛する気もない。 しかし、結婚はするという。 結婚さえすれば、これまで通り好きに生きていいと言われているらしい。 あの侯爵がこんなに息子に甘かったなんて。

処理中です...