【完結】 兄上にヒトカケラの想いも残さぬよう俺が愛してやると言われて溺愛されています

紬あおい

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21.和解

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実家のフォレスター侯爵家を後にし、そのままレオリスとメイスン公爵家を訪ねた。
応接室には、グレン・メイスン公爵が一人で待っていた。

「父上、お久しぶりです。」

「公爵様、急に伺いましたが、お時間いただき、ありがとうございます。」

「レオリス、リアンナ嬢、おかえり。充実した旅行になったか?」

「はい、父上。とても有意義な時間を過ごせました。リアンナとも結婚することになり、先程フォレスター侯爵様に報告し、許可をいただきました。」

「そうか…結婚式は急ぐのか?」

「可能であれば、兄上よりも先に式を挙げたいと思います。身内だけで小ぢんまりと。」

「ジュリウスよりも早く?」

「はい。リアンナの立場を明確にしたいと思います。」

私はレオリスがそこまで考えていたのを知らなかった。
今の私の社交界での立場は、婚約破棄された傷物侯爵令嬢だ。
十八歳という年齢も、結婚するには決して早い方ではなく、寧ろ子どもがいる夫人もいる位だ。
レオリスは、私を可哀想な傷物から解放してくれるつもりなのだ。

「リアンナには、慰謝料という形の謝罪はまだしていないからな…分かった。結婚を認めよう。では、何処に住まいを構えるのだ?」

「ウィルシムの海辺の村の辺りにしようと思います。リアンナが海と朝市を気に入ったようなので。」

「あの辺りは良い所だな。それなら侯爵位を譲るから、マジェスティ侯爵を名乗るがよい。諸々の手続きが済んだら、結婚式を挙げればいい。」

「ありがとうございます、父上。」

「リアンナ、この度はジュリウスが大変迷惑をかけた。再度詫びさせてくれ。申し訳なかった。それに、レオリスと添い遂げる覚悟も決めてくれて、ありがとう。慰謝料として、ウィルシム近くの領地を受け取ってくれたら嬉しい。」

「慰謝料については、正直よく分かりませんが、レオリスと相談してからで宜しいでしょうか…」

「それでいい。しかし、婚約者として我が家に尽くそうとしてくれた十三年間の対価だと思って、受け取って欲しい。リアンナにとっての十三年の重みとしては少ない位だ。なぁ、レオリス?」

「はい。ありがたく受け取ります。リア、そうしよう?領地の利用価値を見出せたら、事業も拡大出来るし、お互いの両親にも親孝行が出来るだろう?」

「分かりました。公爵様、ありがとうございます。」

話し合いが終わりかけた時、メイスン公爵夫人のアリッサが応接室に入ってきた。

「アリッサ様!」

私は駆け寄って、手を取った。

「リアンナ、ジュリウスがいろいろごめんなさいね。レオリスと結婚してくれてありがとう。」

アリッサは涙ながらに、私の手を握り返してくれた。

「母上、座ってください。」

レオリスに背中を支えられ、アリッサはソファに座った。

アリッサは持病がある為、殆ど部屋から出て来ない。
婚約破棄の話し合いの時は、療養の為に遠くの別荘に行っていたので、久しぶりに顔を見た。

「アリッサ様、大丈夫ですか?」

「今日は調子が良いの。リアンナに会いたくて来ちゃったわ。」

「お顔が拝見出来て嬉しいです。」

頬に赤みが刺しているアリッサに、ほっとする。

「リアンナ、私がこんなだから、あなたには随分苦労を掛けてしまったわね…本来なら私が教えるべきことも、自分から学んで公爵家の女性になる努力を厭わないあなたに、私は甘えてしまったわ。ジュリウスも、母としてちゃんと見ていれば、こんなふうにリアンナを傷付けることもなかったでしょうに。レオリスにも寂しい想いをさせてきたのよね…」

「いろいろありましたが、私はレオリスと生きていくことを選びました。これからもよろしくお願い致します。」

「そうね、リアンナが娘になるんだもの、こんな嬉しいことはないわ。レオリス、よくやったわ。今まで、あまり構ってあげられなくて、ごめんね…」

私の隣のレオリスは、穏やかにアリッサを見つめている。
愛されていなかった訳ではない。
病弱な母と、その母の面倒を見ながら執務に忙殺される父を、今この場で理解したのかもしれない。

「母上、どうか謝らないでください。俺も子どもでしたから、見えていないモノがたくさんあったようです。母上の大変さも、父上のつらさも。これからはリアと二人で協力しながら、父上や母上にも親孝行出来たらと思います。」

「レオリス、すまなかった…そんなつもりはなかったというのは言い訳だ。お前には寂しくつらい想いをさせてきたのだろう。本当にすまない…これを機に、事業を盛り上げる手伝いをさせてくれないか?領地からの税収が安定しているのは、レオリスの功績が大きいと陛下も気付いたようだ。恐らく、爵位も結婚も早めに承認されるだろう。」

「一日でも早くリアと結婚したいので、よろしくお願いします。」

「まぁ、レオリスったら!本当にリアンナにゾッコンなのね。これなら孫もすぐ抱けるかしら?」

「アリッサ様、是非とも孫の子守り、お願いしますね?私、たくさん産みます!」

「へっ!?リア…?」

「レオリス、逞しい妻を得たようだな。私も負けられんな。あははは!」

「もっと元気になるように、治療を頑張るわね。この前、良いお薬に巡り会ったから。元気なおばあちゃんを目指すわ!」

グレンもアリッサも笑っている。
こんな公爵夫妻は初めて見たが、私は心があたたかくなった。

隣で涙ぐむレオリスには気付かない振りをして。
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