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31.お祝い
しおりを挟む月日が経つのは早いもので、新居となる邸が完成した。
流石に領主となるレオリスの自宅の中を全てお披露目出来ないにしても、海辺の宿にてささやかなお祝いの席を設けることにした。
海辺の宿の女将さんヘルザと、市場の食堂の女主人エルザ姉妹に協力してもらい、お祝いの会場は整った。
全ての領民を招待することは無理なので、朝市の開かれる場所に、配給という形で料理を振る舞う特設会場も設置した。
「お坊ちゃん!じゃなくて、もうレオリス・マジェスティ侯爵様とお呼びしなければならないですね!!」
ヘルザが慌てて言い直すと、レオリスが笑いながら訂正する。
「あははは、マジェスティ侯爵じゃなくてもいいけど、妻のいる身だからお坊ちゃんはやめてくれ!」
「あら、そっちでしたか!?では、侯爵様にしますね?リアンナ様は奥様でよろしいかしら?」
「それでいいぞ。重要なのは、俺達が夫婦ってことだけだからな。」
隣で聞きながら、重要ポイントがそこなのかと、ちょっと動揺した。
でも、ジュリウスやセリーヌよりも結婚式を早く挙げる話の時も、レオリスは誰よりも私の立場を考えてくれた。
レオリスの中の一番は、いつも私なのだろうということは、最早疑う余地もない。
「そろそろ始めようか!」
レオリスの掛け声と共に、マーティン、サミュエル、バトラー、ヘルザ、エルザ、村長を始め、役員達も集まる。
「皆、集まってくれて、ありがとう。既に知っている者も多いが、隣にいるリアンナと結婚し、この地を治めることとなった。マジェスティ侯爵と名乗ることにもなったが、俺は今まで通り、この地の繁栄に力を注いでいく。今までと違うのは、最愛の妻が一緒に尽力してくれることだけだ。ふらっと現れた俺を、まるで自分の家族のように育ててくれた皆に感謝する。生きていく上で大切なことは、ここで教わったと思っている。これからは妻と、何れ産まれるだろう子ども達と、ここに骨を埋める覚悟だ。皆、この地の繁栄に協力してもらいたい。よろしく頼みます。」
レオリスの言葉に拍手が湧き起こり、村長を始め、涙ぐむ人までいる。
ヘルザに至っては、号泣に近い。
「これからも俺ら三人は、侯爵様に付いて行きます。拾ってもらったご恩は一生かけてお返しします。」
「ああ、これからも頼むよ。お前らは護衛だけでなく、兄のような人達だからな。世帯を持っても、傍にいて欲しい。皆で、ここで暮らそう。」
「じゃあ、嫁も紹介してもらわないと、ですね。」
バトラーはレオリスの肩を抱いて笑う。
レオリスはきっと、バトラー達が結婚したら、何かしら手を打って爵位を授けるだろうなと思った。
そんなことをぼんやり考えていたら、体調が良くないことに気付いた。
「レオ、ちょっと休んできていい?」
「どうした!?具合が悪いのか?医者に診てもらえ!ヘルザ、医者!!」
慌てたレオリスが叫ぶと、ちょうど村の医者がその場にいた。
私は初めて会うが、村に一人しかいない医者のオースティンだった。
「私が診ましょう。」
「奥様、お顔の色が真っ青です!あちらで横になりましょう。」
レオリスは会場に残り、ヘルザとエルザが私に付き添ってくれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
オースティンの診察が終わり、私は呆然としていた。
(このタイミングかぁ…これからなのに、レオは喜んでくれるかな…)
バタバタと部屋に飛び込んできたレオリスは、焦っている。
「リア、どうだ!?何か病気なのか?」
「妊娠した…」
「へっ!?」
「だから、子どもが出来たの!」
「あぁぁぁ…」
ヘナヘナと床に倒れ込むレオリス。
「忙しくなるのに…ごめんね?」
ヨロヨロと立ち上がり、私に抱き付いてきたレオリスは泣いていた。
「リア、ありがとう…ありがとう!俺達の子だ。嬉しいに決まってる。ありがとう、ありがとう、リア…」
「レオ、こちらこそ、ありがとう。私達、親になるのね。あなたは面倒見が良いから、素敵な父親になるわ。」
レオリスは私に頬擦りしながら、まだ泣いている。
震える体を撫でながら、私は幸せに浸った。
「ちょっとだけ待っててくれ。皆に報告してくる!」
レオリスは返事も聞かずに部屋から走り去った。
(安定期まで…ま、いっか。行っちゃったし…それより、眠いわ…)
そのまま私は眠りに付いた。
会場の雄叫びはレオリスなのか、皆なのか、はっきり認識出来ない位に眠かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
しばらくして目が覚めると、隣に寝転んだレオリスがニヤニヤしていた。
「リア、皆、喜んでくれたぞ?会場はヘルザとバトラーに頼んできた。好きに飲み食いして、終わるまで見てくれるってさ。今日からリアは体を一番に考えるんだ!領地の執務は、俺だけでも余裕で出来る。足りなければ、信頼出来る者を雇ってもいい。だから、無事に子を産むことだけ考えてくれ。」
一気に話すレオリスに、安心して出産出来るんだと、ほっとする。
「人を雇うなら、お父様に言えば、誰か寄越してくれる筈よ。娘には甘いから。」
「そうか!早速、両親達に手紙を書こう。
立ちあがろうとしたレオリスの手を掴んで、私は引き止める。
「今は、傍にいて?」
「ああ、そうだな。具合はどうだ?何か食べられそうか?」
「レオを補充するだけでいいわ。ちょっと抱き締めていて欲しいな…」
「分かった。リアは可愛いな。俺、幸せだよ。もっともっと幸せになろうな。」
あたたかいレオリスの胸で、私はまた眠りに付いた。
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