【連載版】 極秘任務で使いたいから自白剤を作ってくれと言った近衛騎士団長が自分語りをしてくる件について

紬あおい

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1.騎士団長からの極秘の依頼

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ここは、エルネスト帝国の皇宮の薬師部屋。
その日も、下っ端薬師のリンネは、先輩に押し付けられた後片付けを一人でしていた。

皇宮にはたくさんの人が出入りする為、急病や怪我で薬師部屋を訪れる者は多い。
その患者の対応で、どうしても使用した器具の手入れは夕方からになってしまう。

本来なら分担すれば早いのだが、ちゃっかりした先輩達は、薬師長の目を盗み、リンネに押し付けて帰宅してしまうのだ。

しかし、毎日使う乳鉢や乳棒、薬匙、粉砕器の手入れから、包帯や清浄綿の補充や在庫管理をするのは苦にならない。
誰も居ない薬師部屋は、自分だけの空間に思えて、一つ一つの作業はリンネの楽しみだった。

コン、コン、コン

「はい!」

普段なら誰も訪れない筈の夜、リズミカルにノックされたドアを開けてみると、目の前に誰かの胸元が見えた。

思わず見上げると、現れたのは近衛騎士団長でもあるリースハルト・フェルディナンド卿だ。

「君がリンネ嬢だったか?近衛騎士団長のリースハルト・フェルディナンドだ。突然失礼する。」

「はい、リンネでございます。騎士団長様、どうぞお入りください。」

リンネが部屋のドアを大きく開くと、リースハルトは大股で歩き、中へ入って来た。

「早速なのだが、とても重要な極秘任務で使いたいので、自白剤を調合して欲しいのだ。極力副作用のない物で、可能であれば液体を頼みたい。少々なら媚薬成分は許可する。」

若干二十歳のリースハルトは、きりりと精悍な面持ちで、リンネに話し掛ける。
銀髪碧眼の麗しい大男を、リンネは呆然と見上げた。
クリオネア侯爵家の落ちこぼれ二女のリンネにとって、リースハルトは眩し過ぎるお方だったのだ。

(女性達が騒ぐのも納得だわぁ!)

「リンネ嬢、聞いているのか?」

しばらく見惚れてしまったようで、リースハルトがリンネの顔を覗こんでくる。
そこで我に返ったリンネは、一歩下がり慌てて応える。

「は、はい!しかし、ここで一番下っ端薬師の私が自白剤ですか!?しかも、媚薬の成分入りですか?」

「リンネ嬢はとても優秀だと、あちこちから聞いている。是非、君に頼みたいのだ。媚薬成分で興奮状態にした方が自白させやすいので、そのように調合してもらいたい。」

「傷薬やいくつかの飲み薬は調合しておりますが、私が優秀などとは、おそれ多いです…それに、極秘任務とはいえ、薬師長に無断で薬草や薬剤を使用する訳にはいきません。」

「薬師長はマルガリーテ殿だったな。こちらから連絡しておく。」

「それならば……み、三日!三日お待ちいただいても?」

「分かった。三日後の夕方、また来る。」

「承知しました!」

来た時と同じく、大股で歩き、リースハルトは部屋を出て行った。

(私なんかでいいのかな…でも、頼られるのは嬉しいな。取り敢えず、明日薬師長に相談してからにしよう。)

リンネは手際良く後片付けをし、少し弾んだ気持ちを抱えて帰宅した。


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