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10.両親の帰宅
しおりを挟むクライスに名案が浮かばず悩んだまま十日過ぎた頃、両親が旅行先からふらりと帰ってきた。
「「ただいま!」」
アルト・イグネシアス公爵とマリーナ夫人は、三年振りに公爵邸に戻ってきた。
その間のことは、全てクライスに任せていたが、執事のマーラーとは定期的に連絡を取り合っていたので、特に心配はしていなかった。
しかし、旅先で耳にしたクライスの最愛ジュリエットの行いを見過ごすことが出来ず、急遽帰宅したのだった。
「父上、母上、お帰りなさい。こちらがファニアです。」
「初めてお目にかかります。ファニアでございます。」
嫁いで一年後に初めて顔を合わせる義両親に、ファニアは緊張した面持ちで挨拶をした。
「クライスの父のアルトだ。こちらは母のマリーナだ。留守にしていて、すまなかったな。どうだ?公爵邸は。」
「はい、クライス様も皆様も大変良くしていただいています。」
「そうか、なら良かった。」
「でも、折角お目にかかりましたが、すぐにお暇することとなります。それまでは、よろしくお願い申し上げます。」
「「へっ!?」」
「では、久々のご家族の団欒をお過ごしくださいませ。」
ぺこりとお辞儀をし、ファニアは応接間を出て行った。
(お義父様やお義母様がお帰りになったということは、本格的にジュリエット様をお迎えになられるということね。早めに荷造りしなければ…でも、二年経っていないしお子も授からなかったから、きっとあの契約は無効よね…どうしようかしら…?)
ファニアは一人、執務室で悩んでいた。
せめて、一年分のお給金はいただけないかと。
その頃、クライスはまた頭を抱えていた。
「父上、母上、どうしよう…ファニアと離縁したくないんだ…気付いたら傍にずっと居て欲しくなって、避妊薬を飲んで、妊娠を避けていた…子を産んだら、きっとファニアは契約だからと去ってしまいそうで…」
アルトとマリーナは、自分達の息子ながら情けなくなってきた。
「お、お前はっ!別れたくない、子も作らない、挙げ句の果てに謝ることも出来んのかっ!!」
「だっ、だって!毎日楽しくて、気付いたら一年経っていたんだ…」
「全く…我が子ながら何て鬼畜なの!?何も知らない令嬢と勝手に契約結婚して、執務と命懸けの出産の後に捨てるつもりだったなんて!」
「だから!これから挽回したいんだ!!………でも、どうしたらいい?」
「取り敢えず、ジュリエットを何とかしなさい!」
「あの女、酷いんだ!執務も出産も子育ても他人がやればいい、私は公爵夫人になりたいと抜かしやがった!!」
「そんな馬鹿に入れ込んでいたのはお前だ。」
「馬鹿には馬鹿が寄って来るのかしら…?」
クライスは、両親にもけちょんけちょんに言われ、只管頭を抱え続けた。
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