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284.【Para_kidでの相談】
雅臣「……助かった」
案の定、あの後また梓蘭世が火に油を注ぎまくって、一条先輩が珍しくキレ気味に謎の……何たら構文を披露し続けていた。
俺に矛先が向く前に衣装と荷物だけ引っ掴んで部室から出てきたのは正解だったな。
バイトの提案をしてくれた三木先輩には感謝しないと。
もしあの場に蓮池がいたらフラットな感じで梓蘭世を抑えてくれたのに……そんなことをぼんやり考えながら地下鉄に揺られていた。
雅臣「ん?」
スマホの振動に気づいてポケットから取り出すとSNSのグループチャットに柊がメッセージを連投していた。
『来週、衣装が出来てる人は実際に着て体育館で練習しましょう!!』
『騎馬戦の騎馬も組んでみよう!!』
ついでに動く鳥のGoodスタンプが10連打もされているが、それどころではない。
…………ら、らら、来週?
嘘だろ。
来週にはもう衣装が出来てないとまずいのか?
俺は東山線を走る車両の中で1人で焦るが、まるで俺の気持ちを読んだかのように三木先輩から個人メッセージが飛んでくる。
『完成しなければ最悪文化祭も体操服でいい』
『できる範囲でいい、無理するなよ』
…………。
優しい言葉ではあるが自分だけ体操服なんて悪目立ちもいいところだ。
おっとりしているように見えて意外と男らしい一条先輩はあの様子だときっとみっともなかろうが何だろうが気にせずホッチキス衣装で参加するだろう。
俺1人あの派手な衣装の中で体操服を着ている姿を想像して、そんな屈辱は嫌だと項垂れる。
本当に勉強は一旦どこかに置いといて、どうにかこの衣装を作り上げないと。
___そうだ。
とりあえず小さいミシンでも買えば……。
また安易に親父のクレカを使おうとしていて本当にどうかと思うがこれは必要経費で背に腹は代えられない。
電車に揺られながらスマホで検索しているうちに、気がつけばPara_kidの最寄り駅に着いていた。
______
____________
「いらっしゃーせ……あれ!」
雅臣「こ、こんにちは……」
お店の扉を開けるとシルバーのふわふわした髪を揺らしながら呉さんがカウンターから顔を出した。
今日は黒のメッシュのタンクトップにわざと破いたようなダメージデニムを穿いている。
腰に巻いたチェーンベルトがジャラジャラ鳴って、まるで90年代のクラブキッズがそのまま大人になったみたいな格好だ。
まだ9月の陽射しは容赦ないのに、季節を先取りする業界のせいか店内中央のマネキンは分厚いキャメルのダブルコートを着せられていた。
修司「藤城くんだっけ?もしかして春樹の代わりに靴取りに来てくれたん?」
雅臣「靴…かはすみません、そこまでは聞いていなくて。ただ三木先輩に取りに行って欲しいものがあると言われたので来ました」
修司「あーそかそか!ちょっと待っててな!2階一緒に来てくれるか?」
鉄骨の螺旋階段を登る修司さんの後ろを着いていくとそこはもう完全に作業場だった。
修司「あれ……試作品どれやったかな……ちょっと待っとってな!」
部屋の奥へと消えていく呉さんを待つ間さり気なく辺りを見渡してみると、床には布の切れ端が散乱し壁際の巨大な作業台には図案が山積みとなっている。
中央に据えられたトルソーには肩口にピンが無数に刺さり、生地が仮縫いの糸で吊るされているが袖はまだ片方しかなく裾は床に這うように垂れ下がっていた。
こんなに細かいものを全部ミシンで縫うのだろうか?
そっとトルソーまで近づいて観察すると布が何枚にも重なって縫い合わせられていて、その繊細な仕上がりに感動する。
改めて俺たちの衣装は柊のお姉さんが素人でも簡単にできるよう設計してくれたんだと実感した。
でも………。
雅臣「俺に出来るわけないじゃないか……」
「___何が?」
雅臣「うわ!!!!!!」
突然背後から低い声が聞こえて、慌てて振り返ると二階堂さんの姿があった。
雅臣「あ、え、二階堂……さん、こんにちは……」
「こんにちは」
シンプルな黒のセットアップを纏っているが大きく開いた白いシャツの胸元からタトゥーが覗いて見え鎖骨のラインが妙に生々しい。
相変わらず服も本人もめちゃくちゃセクシーな人だと慄いていると、
「服飾興味あるの?」
二階堂さんはトルソーを指さした。
雅臣「え!?あ、いやそうじゃなくて……」
どうやらジロジロと見ていたのがバレていたようで頭を下げるが、ふとミシンのことこそプロの方に聞けばいいんじゃないかと気づく。
さっき電車で調べていたミシンはピンキリで、正直どれを買えばいいのか分からずそっと画面を落としたのだ。
雅臣「すみませんが……お時間があれば少し質問したいことがありまして……」
「全然時間あるから何でも聞いて」
恐る恐る尋ねる俺を見てにっこりと笑う二階堂さんは作業台の上に置いてあった生地を指でつまんだ。
次の瞬間、裁ち鋏が空気を裂く音が響き、余分な生地が床に落ちる。
……。
……ほ、本当にいいのだろうか?
全然時間があるようには見えないが本人がいいと言ってるのだからと手短に質問することにした。
雅臣「あの、1番安い小さなミシンでおすすめはありますか?」
「ミシン?」
雅臣「実はですね……」
二階堂さんは鋏を置くと、説明する俺をまじまじと見つめた。
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