山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

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288.【自意識過剰】

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三木先輩の一言に誰もがどことなく納得した方向に
傾いた。


蘭世「あー……確かに、このセンス二階堂さんだわ」

雅臣「そ、そうなんです!!二階堂さんが作ってくれたんです!!」

楓「はぁ?てめぇわざわざ依頼まで掛けたんか!
そうまでして目立ちた___」

雅臣「違う!!!!」


ようやく説明するチャンスが回ってきて俺は必死に
あの日の一連の惨劇を全部ぶちまける。

ミシンの相談をしただけなのにいつの間にか二階堂さんが勝手に改造し始めてたこと、そして断るタイミングを完全に失って……。

自ら目立とうとしているわけではないと必死に訴えたが、蓮池はそれはもう面白がってニヤニヤと左口角を
上げた。


雅臣「サイズのちょうどいいミシンがないか聞いただけなんだよ……」

楓「またてめぇは凝りもせず親金ばっか使いやがって……」

雅臣「お前が使っても怒られないってこの間言ってた
じゃないか!!それに背に腹は変えられないだろ!?
結局二階堂さんが全部__」

蘭世「おい、それはもうどうでもいいって!!ちょ、
梅ちゃん!!!ストップ、ストップ!!!」


梓蘭世の絶叫に振り返ると、一条先輩がジャケットを
脱いで真顔で袖を引き裂こうとしていた。


雅臣「い、一条先輩!!?」

蘭世「ちぎるなって!!まだいけるから!!な!?
な!?」

梅生「いけるって何?ハイハイどうせ俺だけホッチキスですよ縫う気ももうしませんよ俺だけ体操服で出ればいいんだろ?」


恐ろしいことに一条先輩は真顔でぐぐぐと袖を引っ張り布がビリビリと悲鳴を上げている。


蘭世「待て待て待て!!!」


俺たちは大慌てでなだめ始めるが、こうなった一条先輩を止めるのは至難の業で……。


楓「あー…先輩、一旦、一旦止まりましょう」

夕太「梅ちゃん先輩ー!!今はまだ仮止め!仮止めってことでそこからちゃんと縫えばいけるから!!」

雅臣「て、手伝います!!俺本当に何もしてないんで
一条先輩の全部手伝いますから!!」

蘭世「俺も手伝うって!!な?三木さんもいいよな?」

三木「あ、あぁ。一条は何もしなくていい。俺らで
作ろう」


ついに俺たちが総出で飛びかかると一条先輩の動きが
ピタリと止まった。

ゼーゼー息を荒らげる俺たちとは対称的に一条先輩は
とても満足気に微笑んでいる。


梅生「なら最初からそう言ってよ。さ、体育館行こう?」


その清々しい笑顔に、俺は一条先輩こそSSCで1番怒らせてはいけない人だと知った。




______

_________



………。

…………………。

嫌だ。

普通にものすごく嫌だ。

だがいくら足掻いても俺にはあのギラギラした衣装しかなくて、体育館へ向かう途中柊と蓮池にここぞとばかりに弄られる。


夕太「雅臣、ムーディ負山そっくりだね!」

楓「違うよ夕太くん、こいつは紅白の美川憲二のつもりなんだよ」

雅臣「そんなつもりはない!!!やめてくれよ!!!」


クソ、さっきからムーディだの美川だの言いたい放題
言いやがって……。

でもそんな事よりも、もっと大きな問題が発生した。


何で他の部活の奴らがここにいるんだ!?


てっきり俺たちが終わる頃に次の部が練習に来ると
思っていたのに、体育館はすでに演劇部とバレー部で
反面ずつ占領されていたのだ。

他の部も体育館の空いたスペースを使うなんて知らなくて、俺は身を隠すように梓蘭世と一条先輩の後ろを
歩く。



夕太「てか普通に歌うの久しぶりすぎる。でんちゃん
歌える?大丈夫?」

楓「歌える?って何さ、余裕だよ」

蘭世「1ヶ月もありゃ半音ズレるのもマシになってるだろ」


舞台に向かって体育館の縁を邪魔にならないようぞろ
ぞろと歩くが、痛いくらいに視線を感じて辛い。

こんなの注目の的じゃないか!!!


「何だあれすげー派手だな」

「どこの部?」



さ、最悪だ……。

俺だけ衣装が違うせいかめちゃくちゃ見られている。

SSCのメンバーにすっかり飼い慣らされて忘れていたが、俺はやっぱり舞台の上で衣装を着て歌うなんて恥ずかしい。

ジャケットのスワロフスキーが光るたびに視線が刺さる気がして、背中を丸めて歩いていると突然蓮池が足を止めて振り返った。


楓「誰もお前なんか見とらんわ」

雅臣「は、はあ!?」


心を読まれたみたいに蓮池に鼻で笑われ顔から火が出そうになる。


楓「自意識過剰かよ。よく見ろ」


その言葉に全ての視線が俺の前を歩く梓蘭世に向かっていたことに気づく。

白い燕尾服の裾を揺らして踊るように軽やかに歩くその姿はただの体育館を一瞬でランウェイに変える力がある。

俺がいくら1番目立つ衣装を着ていても地味な背景扱いで、さっきまで注目の的は自分だと縮こまっていたのが急に滑稽に思えてきた。

……蓮池の言う通り、自意識過剰すぎたかもしれない。

己の勘違いが無性に恥ずかしくなって更に下を向いて
歩くと、俺の隣を歩く柊が梓蘭世の裾を引っ張った。


夕太「蘭世先輩さぁ、山王の生徒だけでこれなのに
文化祭大丈夫そ?」

楓「ほんとですよ。クラスでやるカジノとかそういう時も写真撮られないように気をつけてくださいね」

蘭世「あぁ?まぁ……」

梅生「今年はSSCの部室があるし、最悪そこに逃げ込むのも手じゃない?」


確かにただ衣装を着ただけでこの注目度なら文化祭当日はもっと大変だろう。

梓蘭世だとは気が付かれなくても、この美貌と華やかさで注目の的となることは間違いない。

俺も恥ずかしいとか言ってる場合じゃない。

梓蘭世を守るために部長として先手を打って行動できるようにしようと気を引きしめた瞬間、


桂樹「あれ!?体育館人多くね!?」


黒い燕尾服に身を包んだ桂樹先輩が現れた。





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