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287.【笑うな!!】
しおりを挟むほ、ほ、……。
雅臣「ほ、本当にホッチキスで作ったんですね……」
梅生「何だよ藤城、見れば分かるだろ?」
一条先輩が止めてある箇所を指差して笑っているが、
袖口も裾も布端も全部所々ホッチキスの針がギラギラ
光っている。
ちょっと触ったら怪我しそうなレベルで、むき出しの
針が危なっかしいことこの上ない。
梅生「どうせ藤城も布用ボンドとかで付けたんだろ?
仲間仲間、あ、ここ挟んでくれる」
ぜ、全然仲間じゃない………!!!
一条先輩がにこにこしながら俺に袖を差し出しホッチ
キスを押しつけてきたがヤバすぎる。
俺の衣装も似たようなレベルと信じて疑わない一条先輩の前でどうやってあのド派手な衣装を見せるんだよ!!
二階堂さんに相談なんかしなければ良かったとどれだけ後悔してももう遅い。
梅生「藤城?」
雅臣「は、はい……」
針が一条先輩の身体に刺さらないように細心の注意を
払って外れた箇所を止めるが、自分の置かれた状況の
絶望感をこれ以上ないほど実感していた。
雅臣「み、皆さん良ければコーヒーでも飲みますか……?」
まだ時間が欲しい。
せめて数分でもいいから俺の心を整える時間が欲しい。
素直にこの衣装になってしまった経緯を話したところで弄られるだけで、誤魔化すようにコーヒーメーカーの前に立つが、
夕太「体育館あと20分で使えるでしょ?」
楓「呑気にしとらんとお前もさっさと着替えろよ」
雅臣「え!?」
俺が先輩たちに目を奪われている間に蓮池も柊もサッサと衣装に着替えてしまっていた。
驚いたことに蓮池の衣装は1番見本通りに作られていて、縫い目も綺麗で普通に良い出来栄えだ。
柊のはお姉さんが作ってくれたから完璧なのも分かるが、蓮池はあの優しいお母さんに手伝ってもらったのだろうか……。
蘭世「へー、でん中々上手いじゃん」
梓蘭世も同じことを思ったのか素直にその出来栄えを
賞賛している。
夕太「でんちゃん家庭科はできるんだよな」
楓「はいはい、家庭科だけって言いたいんでしょ」
梅生「はいはい、どうせ俺は家庭科不得意ですよーだ」
だが、突然2人のやり取りに一条先輩が割り込んできた。
夕太「出た……梅ちゃん先輩のヒス構文」
一条先輩は2人の綺麗な衣装を見て拗ねたようにぷいっと顔を背けるが、俺と目が合うとにこっと微笑んだ。
こ、これは完全に〝俺たちは仲間だもんな〟みたいな目で見られている……!!!
雅臣「い、一条先輩?その、今から先輩の衣装直し
手伝いますから、今日は皆には先に体育館に行って貰うのはどうですか?」
梅生「いいよこのままで別に。それに藤城もアンピンで作ったんだろ?一緒に恥をかこうな」
雅臣「え!?」
俺の必死の時間稼ぎはあっさり跳ね除けられた。
一条先輩は完全に俺のを自分のクオリティと変わらないと信じている。
ど、どどどうすれば___。
蘭世「はよ着替えろって。何?できてねぇの?」
雅臣「い、いや……あの、梓先輩……俺の衣装と交換
しませんか……?」
睨む梓蘭世に、もし奇跡が起これば衣装を変えて貰えるかもしれないと半ばやけくそで頼み込んだ。
蘭世「はぁ?」
雅臣「変えてください!お願いします!!」
蘭世「急に何だよ。お前のやつなんかガバガバで脱げ
落ちるわ」
雅臣「それこそ安全ピンで止めればいいじゃないですか!!」
あんな豪華絢爛な衣装は梓蘭世みたいな人にこそ似合うものなんだよ!!
つい俺もヒステリックに叫んでしまうが、その瞬間、
痺れを切らした蓮池に横から思い切り蹴飛ばされた。
雅臣「うわっ!……な、何すんだよ!!」
楓「生娘みたいに勿体ぶってねぇではよ着替えろや!!」
雅臣「き……!?な、何だよ俺は勿体ぶってるわけ
じゃない!!」
夕太「大丈夫だって雅臣!!変でも下手くそでも誰も
何も言わないよ?ほら、俺が出してあげるから!!」
態勢を崩しながらも大声で反論するが、柊まで加勢してきて俺の衣装の入った紙袋に手を伸ばす。
雅臣「や、やめろって!!!」
俺は慌てて袋を奪い返そうとしたが、時すでに遅し。
柊がサッと袋の中からそれを取り出し皆に掲げて見せてしまった。
……………。
部室が一瞬で凍りつき、全員の視線が柊の手にある衣装に釘付けになる。
そりゃあ……そうだろうよ!!
俺のだけチェーンがジャラジャラで襟にはキラキラの
スワロフスキーとボリュームいっぱいの羽根がフワフワしてるんだから!!
しかも裏地はラメでギラギラだなんて、これじゃあ1人だけ目立ちたいみたいじゃないか!!!
楓「……お前」
雅臣「い、言うなーーー!!俺は転生しようとした訳
じゃない!!!!!」
夕太「ま、雅臣……」
雅臣「柊も言うな!!!俺は芸能界デビューしようだ
なんて大それたことも考えてない!!!」
ニヤニヤと笑い出す蓮池と柊を見て必死に言われそうな言葉を先手必勝で全部潰していくが羞恥心で死にそうだ。
だが俺の努力も虚しく最初に腹を抱えて大爆笑したのは梓蘭世だった。
蘭世「………おま、それ!!!ぎゃははははは!!!」
その笑い声を皮切りに柊と蓮池も吹き出し始めて、だからこいつらには特に見せたくなかったんだと頭を抱えて座り込む。
まるで今世紀最高のネタを見つけたみたいに爆笑されてしまって軽く死にたくなった。
夕太「ま、雅臣張り切りすぎじゃん!?てかこれスワロフスキーじゃね!?」
楓「ほれ見ろ!やっぱり目立ちたくて仕方なかったんか!!おかしいと思ったんだよな!!器用な癖に変に
できないぶって!!」
雅臣「違うって!!!俺は本当にミシンが苦手で針が
怖いんだよ!!」
夕太「えぇ?なのにこんな作れんの?」
2人に畳み掛けられ必死に弁明するが、柊が机にばさっと広げた衣装を見ると俺が縫ったガタガタのところは一から全部解かれて完璧に縫い直されていた。
こんなに細かいところまで二階堂さんが手直ししていたなんて……。
過去に自分が作ってきたとび森の島やミサンガの実績が仇になっている。
確かにこの精巧すぎる作りはまるで俺が製作したとしか思えないものだった。
梅生「……分かった、分かったよ。そうかそうか、藤城はそういう奴だったんだね」
蘭世「梅ちゃんエーミールじゃねぇんだから」
梓蘭世が一条先輩の言葉をヘッセの小説に例えて笑っているが、ギロっと睨まれた途端に静かになる。
梅生「この前三木先輩がバイト頼んでたよね?バイト代の代わりに三木プロの衣装担当に縫って貰ったとか?そういうことなの?……ハイハイ俺だけホッチキスの小汚い衣装で出ますよ」
雅臣「違います!!!!」
一条先輩の冷ややかな目に声が裏返りそうなくらい必死に否定するが、みんなのニヤニヤ顔は止まらない。
梓蘭世はまだ腹抱えて笑ってるし、どう足掻いても収集つかなくて途方に暮れてしまう。
三木「……これ二階堂さんが作ったんじゃないか?」
それまでしげしげと衣装を見ていた三木先輩の一言に
俺は泣きそうになりながら必死に頷いた。
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