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294.【蓮池のお母さん】
しおりを挟む騎馬戦の練習の後、サークルも終わって一旦家に帰った俺は荷物を置いてホランテに買い出しに来た。
夕飯の材料が足りないのと、体育祭の弁当に何を入れようか下見も兼ねて来たのだ。
あれから体育祭の話題になって先輩たちから当日は愛知県体育館に直接集合と教えて貰い、しかも座席は学年関係なしの自由席と聞いて驚いた。
東京では普通にクラスごとに座っていたからてっきり
そうだと思っていたが、山王は友達同士座るもよし、
部活のメンバーで固まって座るもよしとかなり自由だ。
その話を聞いた柊は早速「じゃあSSCで座ろう!」と
言い出した。
意外にもすぐに快諾したのは三木先輩で、2年の2人も一緒でいいと言ってくれたがもしかして気を遣ってくれたんだろうか?
本当は友達と座りたかったのかもしれないのにと少し
不安になったが、
夕太『それなら雅臣!体育祭らしいみんなで食べれる
もの作ってきてよ!』
と、柊の一言で有耶無耶になってしまった。
先輩たちからもかなり期待が高まったのもあって、
嬉しくて今ホランテにいるのだが____。
雅臣「おかずにするなら全員で摘めて……腹持ちも
良くて……」
せっかくなら美味しいものをサークルの皆に食べて
欲しい。
ただ体育祭となるとどういうものがいいのか分からず、ホランテの各コーナーをあてもなく歩いた。
雅臣「お、ホットケーキミックス」
たこ焼きパーティーの時に使ったホットケーキミックスを何気なく手に取ると裏面にアレンジレシピが載っていた。
アメリカンドッグにミニドーナツ……。
………。
これがいいんじゃないか?
アメリカンドッグならジャンクフードが好きな梓蘭世や柊が喜ぶし、ミニドーナツは一条先輩が絶対喜ぶだろう。
あとは三木先輩や蓮池が摘めるようにフライドポテトやポップコーンも入れて弁当は弁当でおかずを作ればいい。
一先ず買っておこうと何個かカゴにいれてから精肉
コーナーへ移動すると、俺はある人を見て思わず声を
上げた。
雅臣「あ」
「あらあら……」
そこにいたのは、蓮池の母親だった。
相変わらず髪は低めの位置できっちり結い上げていて、秋冷の9月にふさわしい薄紺の絽の訪問着は涼しげでとても上品だ。
雅臣「こんにちは」
「こんにちは。お買い物?偉いわねぇ」
雅臣「いえいえそんな!!あ、あの、合宿で差し入れ
ありがとうございました。美味しかったです!」
「いいんですよ。いつも楓さんと仲良くしてくれて
ありがとうね」
にっこり穏やかに微笑むその顔に、どうして蓮池のような暴君がこの人から生まれたのか本当に不思議でならない。
この優しいお母さんにババアと暴言を吐くあいつの気がしれないとしみじみ思う。
「よいしょっと……」
蓮池のお母さんはカートの上下にカゴを2つ積んでいて
中身が食材で恐ろしくパンパンだ。
もしかしなくてもこれは全部あの大食漢の蓮池のためのものじゃないのか?
この量をホランテの地下の駐車場まで運ぶのは……。
雅臣「あの、よければ___」
放っておくこともできずに俺はつい声をかけてしまった。
______
____________
結局、一緒にレジを通して地下駐車場までカートを押すことになった。
車のトランクに入れ込むのを手伝いそのまま帰ろうと
したのだが、蓮池の母親にお礼代わりに家でお茶を飲んでいかないかと誘われてしまった。
雅臣「あ、あの本当に___」
「いえいえ、運んで貰ったんですもの。せめてお茶くらいは出させてくださいな。それに後から家までまたお送りしますよ」
もちろん遠慮したがしゅんと悲しそうな顔をされたら
上手く断ることも出来ず、蓮池のお母さんの荷物を家に運んであげる名目で車に同乗することにした。
ベンツのドアを開けて後部座席に座らせてもらうと、
体がシートにふわりと包まれるような感覚がする。
上質な革の匂いを感じながら車はゆるやかに発進し、
ふと前を見るとルームミラーに何かがぶら下がっている。
よく見れば水引きのストラップで、〝かえで〟と筆ペンか何かで名前がひらがなで書かれていた。
……絶対、子供の頃の蓮池が作った物だろう。
こんなに愛されているというのに、あのバカは何故か
今俺のスマホにわざわざ転生アニメのスタンプを連投してきてやがる!!!
あの馬鹿野郎……!!!
ぶん殴りたい気持ちを抑えながらうるさいくらいの
スマホの通知を切ると、シャッターが空いて蓮池の敷地内のガレージに入った。
レクサスに黒のGクラス、奥にはロールスロイスまで
全部自家用車なのかと目を疑うくらいだ。
「さ、降りてくださいな」
雅臣「あ、荷物運びますよ!ち、ちなみに蓮池、いや息子さんは……」
「もう終わると思うんですけどねぇ……」
蓮池は仕事があるとSSCの途中で帰ってしまったから、今日はこの覚王山の家で稽古か何かなのだろう。
友達の家に招待されてる感じがして正直嬉しい気持ちはあるのだが、その本人がいないのはやっぱり少し気まずくて。
もし俺が蓮池家でお茶なんか飲んでいるのがバレたら
死ぬほど悪態つかれるのでは……。
怯えながらトランクの荷物を取り出し、案内されるまま家の中へ運び込むと、
「あら?楓さんの携帯……あの子休憩して忘れて向こうにいったのかしら?」
蓮池のお母さんが息子のスマホを手にため息をついた。
……それならあの馬鹿野郎はここでわざわざ転生アニメのスタンプを俺に送っていやがったのか!!
袋を指示通りに机に置いていくがムカムカして仕方がない。
楓「___何しに人の家まで来とんだお前は」
俺の念が通じたかのようなタイミングで蓮池の声が聞こえてきた。
母屋まで戻ってきたのなら一言言ってやろうと振り返ると、
「できるだけ近くに来た方がいいかなと思ってさ」
楓「何言っとんだ。それで人の実家まで来て敵情視察か?やらしい性格だなほんと」
「やだなぁ……そんなこと、な、……」
どうやら仕事相手が傍にいるのか談笑しているようで、襖が開くと蓮池より先にその相手が俺に気づいたが何故か俺を見て固まってしまった。
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