女の子がエロい服を着てる世界でもラブコメはできる!

キューマン・エノビクト

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103. 暖かな時間を過ごした、その後

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「どうぞ、入って」
「お邪魔します…」

 一生分の心拍数は決まっているという説があるが、その回数をすべて使い果たしてしまうのではないかというほどうるさく心臓が鼓動している。
 …落ち着け。こういうときにがっつく男は嫌われるんだ。
 何からしていいかわからない。

「…と、とりあえずご飯つくるから待ってて!」
「て、手伝うよ、それくらいなら!」

 二人して慌てながら、最初にやることは食事作りだった。

 ◆ ◆ ◆

 それなりに忙しい作業を終えて食べる飯は、格別だ。
 それも、好きな人と一緒なら、なおさらだ。

「白宮さんの作った炊き込みご飯、美味いな」
「そっちこそ、このサラダすごく美味しいよ」

 二人で褒めあって、互いに頬を緩める。
 …あぁ、まるで新婚生活のようだ。
 自分にこんな未来があるなど、予想すらしていなかった。
 その幸福感に浸りながら箸を進めれば、食事はあっという間に終わってしまった。

「ごちそうさまでした。美味しかった」
「ごちそうさま、良かったね」

 食器を軽く流して食洗機に放り込んでゆく。

「これでよし、と…片付け手伝ってくれてありがとね」
「お邪魔させてもらってる身だからな。これくらいはやるよ」
「それじゃ、私はお風呂沸かしてくるから、ゆっくり待っててね」

 俺はお言葉に甘えてソファに腰を落ち着けた。
 一息つくと、静かな家の中に白宮さんが風呂で作業する音が響いてくる。
 家の中に、誰かがいる感覚。
 これが、同居というものらしい。

「お風呂出してきたよ。あとは待つだけ」
「ありがとう」

 白宮さんは、俺の横にすとんと座った。
 風呂のお湯の出る音と、時計の針の音だけがする。
 俺は少し腰を浮かせて、白宮さんとくっついた。
 腕同士がぶつかる。
 手先を動かして、白宮さんの小さな手に指を絡ませる。
 白宮さんも、俺の手を握り返してきた。
 じんわりとした温かさが広がってくる。
 ふと、顔を横に向けてみると、白宮さんも同じようにこちらを向いていた。
 至近距離で、目が合う。
 互いの息がかかるほどに、近い。
 それこそ――キスでもしてしまえるほどに。
 ゆっくりと、だが確実に、俺たちの距離は縮まっていき…

『お風呂が湧きました』
「っ…!」

 突然闖入してきた電子音声に、俺たちはバッと離れた。
 そうだ、何をやっているんだ。
 この世界においてキスが持つ意味を考えれば、今やるべきではなかった。
 危ないところだった…。

「俺、先に風呂使わせてもらってもいいかな」

 その場から一旦離れて落ち着こうとする。
 家主が先だとか女の子が先だとか、そういうことを後から思いついて若干後悔してしまう。
 しかし、彼女の言葉は、それらの考えとは全く違うものだった。

「…一緒に、入らない?」
「一緒、に…」

 その誘いを理解するまでには、数十秒を要した。
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