平凡雑音日記。

赤屋カル

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雨と服

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 昨日から体調が悪い。
喉が痛く,1時間後には熱が出た。
最近流行っているインフルかもしや例のウイルスの奴か。

気が気ではなかったが,どうやら両者とも違うらしい。

お薬をもらい,薬局から出ようとすると,
大きな巨人の涙がバタバタと降り注ぐ。

「げ、かさ。」
傘を忘れたわたしの選択肢は1つ。
走る。

黒いリュックを頭の上にあげ,
中高生の男子学生みたいに
周りが見えないモヤモヤした中を
ひたすら走った。

走った。走ったけど,途中で疲れて
もう,いいや。

ってなったから
リュックを肩にかけ,全身で大粒の涙を浴びてしまった。

浴びた後に気づいた。
この前お客様にいただいた大事な服であることに。

私は急いで家へ向かう。

家に着く頃には雨の早さも鈍く(のろく)なっていた。

近くの細長い鏡からは,雨に濡れた女の肌が服から透けていた。

絶妙に色気のない顔で写し出された鏡は,
何か物言いだそうだ。

私はギシギシなる焦茶の階段を上がり,部屋に入る。

部屋は,さっきまで熱風だったのだろう。
開けた瞬間に夏を感じさせる暑さだ。

私はそのまま服を脱ぎ,ハンガーにかけた。


1時間後には重い身体を起こす。
どうやら寝てしまったらしい。

はっ
ハンガーにかかった服を見ると,雨で汚れていた。

私は急いで服の汚れを落とそうと
まずは石鹸で洗った。
落ちない。

次に柔軟剤をスポンジに染み込ませ,取ろうとする。

しかし落ちない。

このまま落ちないのだろうか。

最後の手段,私はその服をそのまま蛇口から勢いよく出た水の前に差し出す。

バッシャー。

はっ!

雑巾のように絞り,広げると,先ほどまでの汚れが落ちていた。

先ほどまでのわたしの地味に頑張った努力とあたふたしたよー分からん感情が

すんなりと消えた。
まるで,踏切を通り過ぎた電車のようだ。

わたしはその服をドライヤーで乾かした。

元に戻った服を見て,心の底からホッとした。
そして,雨の日には新品やら貰い物はなるべく着ないようにしようと心に誓ったのだった。
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