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気になる匂い
結婚する理由
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俺たちが入ったのはいかにも『居酒屋!』と言う雰囲気の店だった。こういうときはバーに行った方がいいのかもしれないけれど、伊藤がここがいいと言ったのだから仕方がない。
「いらっしゃい」
先に店に入った伊藤が二人と告げるとカウンターに案内された。おでんがあるようだ。和風だしのいい香りが漂ってくる。
「生でいい?」
「生二つ」と注文をしていく。
重たいジョッキを持ち上げて軽く乾杯をする。初めてビールを呑んだときは泡で髭ができたとはしゃいでいた雪菜を思い出す。そのあと一緒に写真を撮ってそれからキスをした。彼女はどうなのだろう。そもそもビールを呑むのか。
「それで?相談ってなんだよ」
「あー…」
躊躇う素振りを見せるが、やがて覚悟を決めたように口を開いた。
「俺さ、来月結婚するじゃん?あれ迷っているんだよね」
「はぁ?お前、まゆのことすげー好きじゃん。なにが不満なんだよ?」
「あー…麻由に不満なんてないよ。ただ俺の問題で…」
煙草が吸えないこともあり、イライラしていて少し強く「はっきり言えよ」と言った。
「その…正直に言うと、俺さ、高校の時からすみれのことが好きなんだよ…」
「高校の時からすみれのことが好きなんだよ」伊藤の言葉を反芻する。スキ?すき??
「はぁぁぁぁ!?なのにまゆど結婚しようとしてるのか!?」
立ち上がり、叫んだ。店主にギロリと睨まれる。周囲のお客に頭を下げ座り直す。
「静かにしろよ!バカ!」
「ごめん。つーか、全然気づかなかったわ」
驚きと戸惑いをビールで胃に流し込む。十年越しの真実ってところか?事件のタイトルみたいだな。
「だろうね」
衝撃の告白をしておいて尚、いつものように涼しい顔をしてジョッキを持ち上げている。
(まじかよ…)
金本すみれと佐藤麻由。彼女達は俺達の高校の同級生だ。それぞれ大学も職場も全く違うが予定を合わせて飲みに行ったりするほど今でも仲がいい。麻由と伊藤が付き合いはじめたのは高二の夏だったと思う。…思い返してみれば告白したのは麻由だった気がする。伊藤は言われたから付き合った…四人でいるのが気まずくならないように。うん。こいつならあり得ることだ。自分よりも相手のことを優先する伊藤のしそうなことだと容易に見当がつく。それがいいところでもあるが、たまに深読みしすぎてすれ違うんだよなぁ。たぶん今回もそういうことだ。すみれの気持ちをはっきり聞いたわけではないが、あいつも多分伊藤のことが好きだ。
ん?待てよ?純粋に疑問に思ったことをぶつけてみる。
「じゃあ、すみれと付き合えばよかったじゃねぇの?」
「だってさぁ、麻由がすみれには好きな人がいるっていってたから…」
「なぁぁぁぁに言ってんだよ!?そんなのお前のことに決まってんじゃん!」と、叫びたかったがグッとこらえた。俺もいい大人だ。店主にまた怒られるぞ。落ち着け、俺。
「ん~…そうだ!電話しろよ」
「は?」
間の抜けた表情をこちらに向ける。「何を言っているんだこいつは」と顔にかいてある。
「いいよな?」
店主の方に顔だけを向け一応疑問系にはしてみたものの有無を言わせぬ圧をかける。返事をする代わりに、「もう一品。半額にしてやるよ」といってくれた。
「じゃあ、卵…二つ」
店主はニヤリと笑って「あいよ」と言って俺たちの間に出汁がたっぷりと入った器をおいた。
「はぁ…分かった。あっちで電話してくるよ」
店の隅に行って緊張した面持ちで携帯を耳に当てている。
「お前も、何かあるんだろ?」
おやじの渋い声が隣に伊藤がいないからか大きく聞こえた。
「あー…まぁな。元カノがひどいやつだったからな」
苦笑が漏れる。ガラリと扉が開く音が響いてくる。こんな時間に誰だろうと思い、なんとなくそちらに顔を向けた。それと、同時に俺は持っていた割り箸を落としていた。
「…雪…菜…」
「秀…?」
間違いない。この呼び方。俺の元カノ…小松雪菜だ───
「いらっしゃい」
先に店に入った伊藤が二人と告げるとカウンターに案内された。おでんがあるようだ。和風だしのいい香りが漂ってくる。
「生でいい?」
「生二つ」と注文をしていく。
重たいジョッキを持ち上げて軽く乾杯をする。初めてビールを呑んだときは泡で髭ができたとはしゃいでいた雪菜を思い出す。そのあと一緒に写真を撮ってそれからキスをした。彼女はどうなのだろう。そもそもビールを呑むのか。
「それで?相談ってなんだよ」
「あー…」
躊躇う素振りを見せるが、やがて覚悟を決めたように口を開いた。
「俺さ、来月結婚するじゃん?あれ迷っているんだよね」
「はぁ?お前、まゆのことすげー好きじゃん。なにが不満なんだよ?」
「あー…麻由に不満なんてないよ。ただ俺の問題で…」
煙草が吸えないこともあり、イライラしていて少し強く「はっきり言えよ」と言った。
「その…正直に言うと、俺さ、高校の時からすみれのことが好きなんだよ…」
「高校の時からすみれのことが好きなんだよ」伊藤の言葉を反芻する。スキ?すき??
「はぁぁぁぁ!?なのにまゆど結婚しようとしてるのか!?」
立ち上がり、叫んだ。店主にギロリと睨まれる。周囲のお客に頭を下げ座り直す。
「静かにしろよ!バカ!」
「ごめん。つーか、全然気づかなかったわ」
驚きと戸惑いをビールで胃に流し込む。十年越しの真実ってところか?事件のタイトルみたいだな。
「だろうね」
衝撃の告白をしておいて尚、いつものように涼しい顔をしてジョッキを持ち上げている。
(まじかよ…)
金本すみれと佐藤麻由。彼女達は俺達の高校の同級生だ。それぞれ大学も職場も全く違うが予定を合わせて飲みに行ったりするほど今でも仲がいい。麻由と伊藤が付き合いはじめたのは高二の夏だったと思う。…思い返してみれば告白したのは麻由だった気がする。伊藤は言われたから付き合った…四人でいるのが気まずくならないように。うん。こいつならあり得ることだ。自分よりも相手のことを優先する伊藤のしそうなことだと容易に見当がつく。それがいいところでもあるが、たまに深読みしすぎてすれ違うんだよなぁ。たぶん今回もそういうことだ。すみれの気持ちをはっきり聞いたわけではないが、あいつも多分伊藤のことが好きだ。
ん?待てよ?純粋に疑問に思ったことをぶつけてみる。
「じゃあ、すみれと付き合えばよかったじゃねぇの?」
「だってさぁ、麻由がすみれには好きな人がいるっていってたから…」
「なぁぁぁぁに言ってんだよ!?そんなのお前のことに決まってんじゃん!」と、叫びたかったがグッとこらえた。俺もいい大人だ。店主にまた怒られるぞ。落ち着け、俺。
「ん~…そうだ!電話しろよ」
「は?」
間の抜けた表情をこちらに向ける。「何を言っているんだこいつは」と顔にかいてある。
「いいよな?」
店主の方に顔だけを向け一応疑問系にはしてみたものの有無を言わせぬ圧をかける。返事をする代わりに、「もう一品。半額にしてやるよ」といってくれた。
「じゃあ、卵…二つ」
店主はニヤリと笑って「あいよ」と言って俺たちの間に出汁がたっぷりと入った器をおいた。
「はぁ…分かった。あっちで電話してくるよ」
店の隅に行って緊張した面持ちで携帯を耳に当てている。
「お前も、何かあるんだろ?」
おやじの渋い声が隣に伊藤がいないからか大きく聞こえた。
「あー…まぁな。元カノがひどいやつだったからな」
苦笑が漏れる。ガラリと扉が開く音が響いてくる。こんな時間に誰だろうと思い、なんとなくそちらに顔を向けた。それと、同時に俺は持っていた割り箸を落としていた。
「…雪…菜…」
「秀…?」
間違いない。この呼び方。俺の元カノ…小松雪菜だ───
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