異世界でもうちの娘が最強カワイイ!

皇 雪火

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第4章:魔法学園 入学準備編

第115話 『その日、街を巡った②』

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 レストランを後にし、改めてソフィー主導による街の案内へと繰り出すと、すぐに代わりの人員がやってきた。
 そう、さっき報告に行ってもらったエイゼルさんの同僚の人だ。

 今朝、何かあったらこき使って構わないという陛下の熱いご温情を頂き、その際にエイゼルさん含む暗部の隊長格の男女を何人か紹介してもらっていた。

 その人の名前と顔を1度でも認識すれば、あとはマップの能力で見えてしまうので、たぶんきっと隠れているつもりなんだろうけど、私からしてみればモロバレだった。うん、隠密部隊型無しね。
 屋根の上に居るし、本来なら見えない位置だと思うけど……。とりあえず目があったから手を振ってみた。
 あ、隠れちゃった。カワイイわね。

「それで次はどうする? 何か見てみたいお店とかあるかしら」

 先程煙が出そうなほどに頭を抱えていたソフィーも、小一時間で回復したようで、元気に案内するスポットを考えてくれている。
 先輩も、それなりに重大情報だったにも関わらず飲み込めたみたいで、スッキリした顔をしていた。

 ちなみに先ほど話し合っていた謝礼の件だけど、先程の情報料と共に、陛下と公爵様に決めてもらうことになった。
 まあ、実際に確認してからになると思うから、今日明日中に支払われるなんてことにはならないでしょ。

「そうねぇ……。あ、先輩。学園の施設で聞きたいことがあるんだけど」
「ええ、何でも聞いてちょうだい」
「自由に使える錬金釜ってありますか?」

 そう、錬金術。
 色んな素材を混ぜることで新たなアイテムを作り出す、万能器具だ。
 最終的にシラユキを作るのにも必須だし、前々から欲しいと思っているカメラであったり、各種魔道具の作成にも使う。今後の生活に絶対的に必要となる物だ。これを使える権限を持てるかが重要なファクターとなる。

「諸事情でスキル0からのスタートになるけど、色んな物を作る予定よ」
「それって一体……。ううん、絶対それ難しい話なのよね? なら良いわ、今それを聞いたら消化不良起こしそうだから」
「あ、大丈夫よソフィー。この話はもうちょっと仲良くなるまではする気がないから」

 そうね、せめてキスくらいする仲にならないと。

「……そっか、そうよね。私達、出会ってまだ数日だもんね。濃密な時間を過ごしたせいで混乱していたわ」
「ええ。時間はたっぷりあるし、ゆっくり仲良くなっていきましょ」

 ソフィーの横に並んで手を握る。するとソフィーも、恥ずかしそうにしながらも握り返してくれた。
 そして反対側の手はフェリス先輩の手に包まれる。

「シラユキちゃん、私は?」
「勿論先輩もよ」
「ふふ、良かった。それで錬金釜の事だったわね。まず学園には幾つかの部活があるの。錬金釜を使用するには、錬金術の専門部に参加するか、部外の人は事前に申請してレンタルする形になるの。ちなみにだけど、部活に入ると個人用の錬金釜を用意してくれるらしいわ」
「ほほう」

 レンタルという形態はゲーム中と同じなのね。
 ただ、プレイヤーの順番待ちみたいな大渋滞を起こしていたから、使う人は皆その部活に入っていたりしたけど。

「……あれ、でも錬金釜って結構貴重だったんじゃ」
「うん、そうみたいね。だから錬金術部に入るには、部長や先生から出される無理難題を突破する必要があるとか、特別優秀な成績保持者でないとか、そんな噂があるらしいわ」
「ほへー」

 うーん、ゲーム中、そんな条件何てあったかしら? 全然覚えていないわ。
 プレイヤーから見て簡単なクエストだったのか、それともその部長が『卒業』したことでそのルールが廃止されたのか。まぁ、どちらにせよなんとかなるでしょ、私なら。

「それじゃもう1つ。まだ学園に在籍していなくても使えるのかしら。具体的に言えば、試験前とか試験当日とか」
「うーん、試験前は難しいかもしれないわ。学園は関係者以外立ち入り禁止だもの。錬金術部がある部室棟なら猶更ね。でも試験中なら……。そうね、私が申請しておくから、試験の日に案内しましょうか?」
「本当ですか? 頼もしいわ、先輩!」
「シラユキちゃんの為だもの。先輩に任せて」

 はぁー、フェリス先輩頼りになるなー! 私やソフィーの1つ上とは思えないくらい美人だし。ソフィーが1年でこうなるとはとても思えないんだけど。そんな事伝えたらソフィーは怒るかしら??
 それにしても、正史ではこんな綺麗な人を喪っていたなんて。勿体ない話ね。

「という訳で、ソフィー。魔物素材とか魔石とか扱ってるお店はあるかしら」
「うーん、それなら冒険者ギルドの提携店が良いわね。あそこはいろんな掘り出し物が並ぶから色んな人が来るのよ」
「そうね、たまにガラの悪そうな人も来てたりするけど、品揃えは素晴らしいわ」
「じゃあ行ってみましょ!」


◇◇◇◇◇◇◇◇


 私たち、超絶カワイイ集団だもの。ガラが悪い人もいるって話だったし、テンプレ的に絡まれたりするのかな。
 なーんて思っていたけどそんな事はなく、そんなフラグ発生器は影から見守っている護衛の人たちが睨みを効かせているおかげか、近寄ってこない。今も、視界の端でニヤついて近づいてきた冒険者っぽい人が、護衛の人に睨まれてスゴスゴと去っていった。

 さっきのレストランまでは入ってこなかったみたいだけど、どうやら暗部の人達と公爵家の護衛によって、私達は2重に護られているみたいね。陛下と公爵様の過保護っぷりが伺えるわ……。

 安全にお買い物が楽しめてありがたいと思うべきか、刺激が足りなくてつまらないというべきか。正直もう、目立つことをしても問題ないから、お馬鹿さん達に力を見せつけるのは問題ないのよね。
 舐められないためにも、早めにどこかで見せつけておきたいところだわ。

「わぁ、すっごく高いの」
「そうね、これがダンジョンから見つかった原本の魔法書なのよね」
「数日前までは整然と並ぶ魔法書が輝いて見えていたのに、シラユキの話を聞いてからは値ばかりの骨董品に見えてきたわ……」
「ソフィア、そんな風に言ってはダメよ。お店の人が困ってしまうわ」
「まあ実用性はさておき、インテリアとしては優秀なんじゃない? 見た目だけは格好良いし」
「フフ、そう言えば魔法書が理解出来なくても、見栄え目的で購入する方がいらっしゃいましたね」

 昔に仕えた人の情報だろうか。
 アリシアに笑われちゃうって事は、だいぶ点数低そうね。

 それはともかくとして、魔法書を除くと売られている素材の品質は、案の定低かった。その上、格というかランクがショボい上に、値も張っていた。

「ソフィー、ここが王都で一番のお店なのね?」
「ええ。お眼鏡にかなわなかったかしら」
「まぁそうね。素材もしょぼいし値段も高いし。でもまだ学園のダンジョンには入れないし、王都近辺のダンジョンも寄る時間はないから、結局買うしかないんだけど」
「シラユキの強さなら倒せない敵はいなさそうね……」

 でもほとんどボッタクリだわ。
 一部はゲーム時代と同じ価格だったりそれ以下だったりするけど、それは多分その素材の価値が理解されていないからでしょうね。
 とりあえず、値段には目を瞑って、必要になりそうなものだけ買っておきましょうか。

「アリシア、ちょっと店員さん呼んできて。それなりの量を買うから」
「承知しました」

 店員さんが来るまでに、ある程度目星を決めておく。
 学園が始まれば自分で素材を取りに行くだろうから、今買うべきは一番最初のスキル上げで使う事が多く、その上良いお値段で売れるレシピが良いわよね。
 スキル鑑定の魔道具やパーティ編成用の魔道具は、素材がちょっと特殊だし要求スキルも20ちょっとある。最初から狙うのは厳しい。
 だからココで作るのは、女の子に大人気の『精油』ね。まず間違いなく売れる。というか私が使いたいし家族にもお裾分けしたい。『香水』も似たようなレシピだし、一緒に作って売るなり友人にばら撒くなりしたいわね。
 まぁ、シラユキちゃんは元から良い匂いだから、『香水』は必要ないけど。

「お待たせいたしました、お客様。大量にお求めとのことですが……」

 若いお兄さんがやって来た。なんだか新人っぽいけど大丈夫かしら?

「ええ、まずは『スライムオイル』を最低5キロ。あれば最大20キロまで買います」
「はっ……?」
「次にここの列に並んでいるハーブを2袋ずつ。上段にあるダンジョン果実も2袋ずつ。最後に闇の魔石(小)を20ダースほど頂けるかしら」
「しょ、少々お待ちくださいっ!」

 そう言ってお兄さんは奥の方へと走って行った。やっぱり無理だったか。

「申し訳ありませんお嬢様、人選を誤ったようです」
「気にしていないわ。とりあえず文句はレイモンドに言えばいいのよ」
「それもそうですね」
「いや、シラユキの買い方がおかしいのよ。普通、個人の買い物で大口の買い物をするとしても、せいぜいが素材数十個とかそんなレベルじゃないかしら。なのに唐突に個数じゃなくキロだなんて、店員さんもビックリするでしょ」

 そんな物かしら?
 魔物であるスライムには、魔石とは異なる『核』が存在していて、死後に体から取り出すと『核』から少量のオイルを吐き出す。それが『スライムオイル』の正体だ。
 一応倒さずとも、『テイム』で手懐けて譲渡してもらうことも可能で、上質な『スライムオイル』を手にするなら、スライムを乱獲するより効率が良かったりする。

 今回はスキル上げで大量に使いたいのと、お金には余裕があるからここで揃てしまいたい。
 スライムはゴブリンよりも弱い魔物だし、いくらこの世界が残念で……いや、残念だからこそ『スライムオイル』は初心者の稼ぎ頭であるはずだ。

 案の定、店長らしき人がやって来たので確認してみると、『スライムオイル』は倉庫を逼迫するレベルで在庫があるらしいので、20キロの『スライムオイル』を購入することにした。
 そしてハーブとダンジョン果実、魔石も購入することが出来た。

 属性付きの魔石は、初心者脱却した辺り……この世界でもそうだと願いたいけれど、割とポピュラーな素材だ。ゲーム時の数倍値は張ったが、闇は属性的にも使い所が難しい物のようで、不人気なのか8属性の中で一番安かった。
 それに比べて、日常的に使われやすい炎と水、それから光の魔石は高額だった。ゲーム時代の10倍以上と言って良い。中サイズなんて桁が2つ違う。高すぎて怖い上に、一部の属性は店に並んですらいなかった。

 闇取引なら扱われてるかもしれないけど、表の一番の店がこの惨状でしょう? 目も当てられないわ。

「シラユキ、こんなに買って何を作るの?」

 あれ、素材でわかんない?
 アリシアをチラリと見るが、首を横に振った。もしかしてこのレシピ、知られてないのかしら? だとしたら『スライムオイル』の使用用途、だいぶ限られちゃうんだけど……。
 それとも秘匿かしら?? まあどっちでも良いわ。女の子がカワイくなる為の必需品みたいな物だし、遠慮せずに大量生産するわ。

「そうね、完成してからのお楽しみってことで」
「ふうん?」

 支払いは全てアリシアに任せた。
 ママがその値段を知ったら卒倒しそうだったけど、私も顔を顰めるくらいには高いと思った。金貨126枚て。所持金からしたら端金だけど。
 ……いや、でもそうなっちゃうのかな。この世界とゲームの世界とでは、んだもの。本当に命懸けの結果、値段が上乗せされてしまうのは仕方のないことなのかな……。
 まあそれにしても高すぎるけどね。

「そう言えば、お父様からシラユキを連れていって欲しいって言われていた場所があったわ」
「そうなんだ、何処なの?」
「盗賊ギルドね」
「ああ、情報収集の為ね。ここから近いの?」
「ううん、この辺り南地区にあるのは冒険者ギルドと商業ギルドね。盗賊ギルドは東地区にあるわ」

 学園に入った最初はバタバタしそうだし、いまのうちに済ませておこうかな。それに今すぐ欲しいような素材は、今のところ無いはずだし。

「それじゃあ案内してもらえる?」
「ええ、任せておきなさい!」


◇◇◇◇◇◇◇◇


「お嬢様」
「うん?」

 張り切って案内を率先してくれているソフィーが、目的地まであと少しと言ったところでアリシアから待ったがかかる

「少々お時間をいただいても宜しいでしょうか」
「いいけど、どうしたの?」
「この辺りには盗賊ギルドの他、各職業関係のギルドが密集しているのですが、その中にメイドを斡旋している所があるのです。そこでお母様の証明証を発行して来たいと思うのです」
「あー、検定とかあるんだっけ」

 ママは昔にメイドになっていた時期はあったけど、10年以上経過しているから証明証が失効しているんだったっけ?

「はい。数時間ほどかかる場合もございますが、学園開始まで時間もないことですし、今のうちにと。お嬢様が盗賊ギルドで用事と見学を済ませる頃には、粗方目処は立っているかと思います」
「許可するわ。ママも頑張ってね」
「ありがとうシラユキちゃん」
「では、行って参ります」
「「「「いってらっしゃい」」」」

 アリシアとママを見送り、4人で盗賊ギルドへと向かう。

「ここがそうよ」

 冒険者ギルドとは雰囲気が異なるが、構造は似ているわね。お仕事募集の掲示板に、クエスト発注系のカウンター。
 『盗賊』という悪い感じの名前はついているものの、街の外を屯しているゴロツキのような盗賊とは違う。れっきとした信用あるお仕事としての盗賊のようだった。

 そんな所に美少女4人がノコノコとやって来たんだから、注目を集めるのは当然ね。
 更にはソフィーと先輩は顔が知られているわけで、すぐにざわめきが起こる。

「意外と女の子が多いのね」
「なんでも、身のこなしが上手いのは女性が多いらしいわ。実際のところどうかは知らないけどね」

 だからかしら。
 おへそ丸出しだったり、デニムのショートパンツだったり、肌色率がとてつもなく高いわね。あの子なんてお尻ちょっと見えてない?
 是非ともワキワキしたい……。

「お姉ちゃん、先に用事を済ませちゃうの。見学はその後なの」
「あ、はあい」

 フラフラと身軽そうな子達の方に行こうとしたら、叱られてしまった。
 流石リリちゃんね、私の考えなんてお見通しかぁ……。

 先にカウンターの方で要件を説明していた姉妹の所へ追いつくと、すぐに話は通ったようで、ギルドマスターの部屋へと案内された。
 流石公爵家、顔パスなのね。

 辿り着いた部屋には、何処かで見たことのあるような、着物を着た女性が待っていた。

「よく来たね、あたいが盗賊ギルドのギルドマスター、リンネさ。そろそろ来ると思っていたが、あんたがシラユキだね? 噂通りの可愛い子じゃないか! 腕も立ちそうだし、是非ともうちに欲しいところだね」

 あっ、見たことあると思ったら!
 王国で仲間に出来る女性キャラの中でも、プレイヤーから姐さんと慕われていた女傑だった。
 ふわあ、正史では片腕&義眼なスタイルで、クールで格好良いスタイルだったけど、五体満足な完全体の姐さんも美人で格好良いわ!!

「初めましてリンネさん、ご存知の通りシラユキと申します。リン姐さんとお呼びしても良いかしら」
「おう、良いぜ。それにあたいもレイモンドと同じ様に扱って構わねえ。丁寧に扱われるとムズムズしちまってしょうがねえや」

 カラカラと笑う姐さんに、釣られてこっちも笑顔になる。
 椅子に案内され、ソフィーと先輩も挨拶をしてリリちゃんの番になる。

「こんにちは、リリです!」
「おう、こんにちはお嬢ちゃん。飴ちゃん食うかい?」
「いただきます!」

 早速カワイがられてる。流石リリちゃん。

「ねえ、リン姐さんの職業って、『ローグ』なのかしら。それとも『侍』?」
「おっ? シラユキは『侍』を知ってるんだね。しかしどうしてそのチョイスなんだい? あたいの職業は誰にも教えてないし隠しているんだが……」
「着物やギルドマスターと言うところからある程度の予想ではありますが……。強いて言えば、カンですね!」

 まあゲームでは、その2つが突出して高かったからだけど。

「へぇ……。イイ読みしてんじゃねえか。さすがアリシア嬢から永劫の誓いを受けただけはあるね」
「耳が早いんですね」
「それが出来なきゃ、あたい達は商売あがったりさ。なんなら見るかい? お前さんはんだろ?」
「良いんですか? では遠慮なく」

 リン姐さん優しいわね。普通見せないもんじゃないの?

「『隠蔽解除』」
「『観察』」

**********
名前:シドウ・リンネ
職業:侍
Lv:50
補正他職業:剣士、格闘家、狩人、シーフ、武闘家、レンジャー、暗殺者、ローグ
総戦闘力:4490(+220)
**********

 おお、優秀。
 レベル50のカンスト状態がノーマル4種、ハイランク3種、エクストラ1種。きっと全部50で止まってるんでしょうね。
 まあ、上限突破を2回した陛下は単純なレベル上昇の恩恵で総戦力が上だけど……。

 +220は着物か、あのチラリと見える脇差か。
 どちらにせよ、出会った頃のアリシアより強いわ。

「なるほど、参考になりました」
「『隠蔽』。んで、どうだった? アリシアと比べて」
「そうですね、正直に申しますと近接戦闘ではアリシアより少し上ですけれど、魔法も有りとなればアリシアの方に分がありますね」
「ほーう、そうかいそうかい。いやぁ、怖気ずに素直に言ってもらえるのは嬉しいもんだねぇ。あの王子が気に入るのもわかる気がするよ」

 王子? 王族とはまだ陛下以外、会っていないはずなんだけど……。姐さんは得心が行ったかのようにうんうんと頷いていた。
 まぁそれはともかくとして、やっぱりアリシア、姐さんの反応からしてここにも在籍していたことがあるのね。まあ、『ローグ』への転職に必要な条件って、王国内ではこのギルドで受けるのが一番簡単だから、当然と言えば当然なのかな。

『これが和風美人ってやつなのね!』
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