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第2章 勇者大戦
魔王となった主人公。己の中の魔王と出会う
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『何か』を感じて目を開ける。
その光景は俺の予想を遥かに超えた、炎に包まれた煉獄の世界だった。
体を炙るような熱さに晒されて、俺はこの世界が夢ではない事を知ってしまう。
《そんな事では困るのだよ》
どこかで聞いたような声が、あちこちから聞こえてくる。
周りを見渡して声の主を探そうとするが、辺り一帯は赤で埋め尽くされておりそれ以外は何も見えない。
《己の炎で死に掛けるなど、魔王としてはどうなのだろうな?》
俺をからかうようなその声は、どうやらこの炎から聞こえてくる事に今の俺はようやく気付く事が出来る。
「何が言いたいのかよく分からんが俺をこんな所に連れて来て、いったい何がしたいんだ? 俺も暇じゃ無いんだから、とっとと要件を言ってくれ」
俺の言葉に、炎が笑うかのように揺れ始める。
あまりに面倒そうなので、俺はこの場から帰還する為にどうすれば良いのか考えてみるが今の俺の能力ではこの世界から出ることはかなり難しそうだ。
《やれやれ、ここまでされても気付かぬとは、今回の主人はどうやら期待できそうにもないな……》
その言葉に僅かながら苛立ちを感じ、魔力の刃を作ろうとするが、やはり普通の場所ではないのだろう……魔力を感じる事さえ出来なかった。
《大体おかしいとは思わなかったのか? 普通の生活をしていた己がこの世界に来て、いくら復讐の為とはいえ人を殺し街を滅ぼし、同郷の者すら躊躇なく殺せる……そんな心の強さがお前にあると思っていたのか?》
謎の声の人物に俺は更に苛立ちを感じ、魔力以外で何か使えるものはないか自分自身に問い掛ける。
すると微かにだが、スライムから反応があった為、己の中のスライムを解放する事にしてみる。
亜空間に残っている『紅い波』と呼ばれたスライムを解放すると煉獄の炎と拮抗するような形となり、やがて炎と波は、ぶつかり合い炎の波となっていく。
《くくくっ、まさか『虚無の女王』の力が使えるとはな。これは予想外だ》
炎の波は俺の意思に従い、海が割れるように声の主人を俺の前へと誘ってくれる。
「ようやく顔を拝めるようになったな。色々ふざけた事を抜かしやがって……覚悟は出来ているんだろうな? 」
炎の波が男の姿を照らし出す中、男はまるで喜劇を見終わったように拍手までしてきて俺の感情を逆撫でしてくる。
「何も言わないなら…死ね!」
俺の言葉と共に炎の波が男を包み込もうとするが、男はその場から一歩も動かず両手を開いたままなのに炎の波を一向に寄せ付けずに自分の周りの炎の波を消し去った。
《ここは私の世界だからね。いくら君が彼女の力を使えても、私を傷付ける事は出来ないよ?》
明らかにこちらを見下した言い方に、俺は怒りを覚えるが、それよりおかしな言い回しに気がつく。
「おかしい……彼女の力をとやらが使えるのに、何故俺の力は使えない? それに俺が奴等から吸収した能力が使えないのも今考えるとお前は俺より遥かに強いはず。ここはお前の世界だと言っていたが、ここまで強力なお前が何故俺を『主人』などと呼ぶんだ? 」
《ようやくそこに気が付いてくれたか……》
俺の疑問に嬉しそうに笑い出す男。
そこで俺はその男の姿を始めて確認し、その姿を見て愕然としてしまう。
「どうして…俺の姿をしている…」
俺の姿をした男は、今の俺独特の笑みを浮かべながら俺の目の前まで歩いてくる。
《色々忘れている事があるのは知ってはいたが、まさか自分の姿すら忘れているとは思わなかったぞ》
よく考えてみれば、その声すら俺の声と似ているのだろうが……自分以外の人が出す俺の声がこんなに聞こえるとは考えもしなかった。
《まぁ…自分の声は中々分からないと言われているし仕方がないと言えばそれまでだが、散々力を貸してやっているのに今更知らない振りをされてもな》
男の笑みが苦笑いへと変わるが、俺にはこの男に力を借りた覚えがない…もしかしたらそんな記憶さえ、今の俺は失ってしまっているのだろうか…
《いや、覚えているはずだ…研究所での苦痛の毎日…その中で奴等が人間とは違う、人間もどきだと認識したあの日の事をお前が忘れるはずがないだろう? 》
確かにある時から奴等の事を人間とは認識出来なくなった事は認めるがそれとこいつのどこに接点があるのか俺には分からない…
《何を言っている? 『あの日』こそ私が誕生した日ではないか!憎悪という憎悪を糧として、お前に復讐という火を灯し続けた『私』を生み出した男が何を言っているのだ! 》
俺が…生み出した? 研究所で復讐をする為に……俺は、研究と称する虐待の中、奴等に笑われながら……そして奴等に復讐する為に…
《そうだ! 思い出したか? あの復讐の心がお前の能力を目覚めさせたのだよ! この『憤怒』と呼ばれるお前の能力をな! 》
男の狂ったような笑いが聞こえる中、俺の意識は覚醒しようとしていた。
しかし、俺はあの男の狂った笑みをきっと忘れる事は出来無いだろう…
その光景は俺の予想を遥かに超えた、炎に包まれた煉獄の世界だった。
体を炙るような熱さに晒されて、俺はこの世界が夢ではない事を知ってしまう。
《そんな事では困るのだよ》
どこかで聞いたような声が、あちこちから聞こえてくる。
周りを見渡して声の主を探そうとするが、辺り一帯は赤で埋め尽くされておりそれ以外は何も見えない。
《己の炎で死に掛けるなど、魔王としてはどうなのだろうな?》
俺をからかうようなその声は、どうやらこの炎から聞こえてくる事に今の俺はようやく気付く事が出来る。
「何が言いたいのかよく分からんが俺をこんな所に連れて来て、いったい何がしたいんだ? 俺も暇じゃ無いんだから、とっとと要件を言ってくれ」
俺の言葉に、炎が笑うかのように揺れ始める。
あまりに面倒そうなので、俺はこの場から帰還する為にどうすれば良いのか考えてみるが今の俺の能力ではこの世界から出ることはかなり難しそうだ。
《やれやれ、ここまでされても気付かぬとは、今回の主人はどうやら期待できそうにもないな……》
その言葉に僅かながら苛立ちを感じ、魔力の刃を作ろうとするが、やはり普通の場所ではないのだろう……魔力を感じる事さえ出来なかった。
《大体おかしいとは思わなかったのか? 普通の生活をしていた己がこの世界に来て、いくら復讐の為とはいえ人を殺し街を滅ぼし、同郷の者すら躊躇なく殺せる……そんな心の強さがお前にあると思っていたのか?》
謎の声の人物に俺は更に苛立ちを感じ、魔力以外で何か使えるものはないか自分自身に問い掛ける。
すると微かにだが、スライムから反応があった為、己の中のスライムを解放する事にしてみる。
亜空間に残っている『紅い波』と呼ばれたスライムを解放すると煉獄の炎と拮抗するような形となり、やがて炎と波は、ぶつかり合い炎の波となっていく。
《くくくっ、まさか『虚無の女王』の力が使えるとはな。これは予想外だ》
炎の波は俺の意思に従い、海が割れるように声の主人を俺の前へと誘ってくれる。
「ようやく顔を拝めるようになったな。色々ふざけた事を抜かしやがって……覚悟は出来ているんだろうな? 」
炎の波が男の姿を照らし出す中、男はまるで喜劇を見終わったように拍手までしてきて俺の感情を逆撫でしてくる。
「何も言わないなら…死ね!」
俺の言葉と共に炎の波が男を包み込もうとするが、男はその場から一歩も動かず両手を開いたままなのに炎の波を一向に寄せ付けずに自分の周りの炎の波を消し去った。
《ここは私の世界だからね。いくら君が彼女の力を使えても、私を傷付ける事は出来ないよ?》
明らかにこちらを見下した言い方に、俺は怒りを覚えるが、それよりおかしな言い回しに気がつく。
「おかしい……彼女の力をとやらが使えるのに、何故俺の力は使えない? それに俺が奴等から吸収した能力が使えないのも今考えるとお前は俺より遥かに強いはず。ここはお前の世界だと言っていたが、ここまで強力なお前が何故俺を『主人』などと呼ぶんだ? 」
《ようやくそこに気が付いてくれたか……》
俺の疑問に嬉しそうに笑い出す男。
そこで俺はその男の姿を始めて確認し、その姿を見て愕然としてしまう。
「どうして…俺の姿をしている…」
俺の姿をした男は、今の俺独特の笑みを浮かべながら俺の目の前まで歩いてくる。
《色々忘れている事があるのは知ってはいたが、まさか自分の姿すら忘れているとは思わなかったぞ》
よく考えてみれば、その声すら俺の声と似ているのだろうが……自分以外の人が出す俺の声がこんなに聞こえるとは考えもしなかった。
《まぁ…自分の声は中々分からないと言われているし仕方がないと言えばそれまでだが、散々力を貸してやっているのに今更知らない振りをされてもな》
男の笑みが苦笑いへと変わるが、俺にはこの男に力を借りた覚えがない…もしかしたらそんな記憶さえ、今の俺は失ってしまっているのだろうか…
《いや、覚えているはずだ…研究所での苦痛の毎日…その中で奴等が人間とは違う、人間もどきだと認識したあの日の事をお前が忘れるはずがないだろう? 》
確かにある時から奴等の事を人間とは認識出来なくなった事は認めるがそれとこいつのどこに接点があるのか俺には分からない…
《何を言っている? 『あの日』こそ私が誕生した日ではないか!憎悪という憎悪を糧として、お前に復讐という火を灯し続けた『私』を生み出した男が何を言っているのだ! 》
俺が…生み出した? 研究所で復讐をする為に……俺は、研究と称する虐待の中、奴等に笑われながら……そして奴等に復讐する為に…
《そうだ! 思い出したか? あの復讐の心がお前の能力を目覚めさせたのだよ! この『憤怒』と呼ばれるお前の能力をな! 》
男の狂ったような笑いが聞こえる中、俺の意識は覚醒しようとしていた。
しかし、俺はあの男の狂った笑みをきっと忘れる事は出来無いだろう…
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