俺の命は1000円だった。〜壊れた男は異世界で復讐を誓う。

infinitey009

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第2章 勇者大戦

休息の時間〜アヤハの過去とアヤハの気持ち

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 桂 圭介が意識を失い眠りに就いた頃、それを確認した青崎 涼子は顔を赤く染めながら、自分の暴走を思い出してあまりの恥ずかしさの為、身悶えしていた。

「うー。何であんな事言っちゃったんだろう? いくら圭介さん相手でもあんな事言うなんて……」

 アヤハはそんな奇妙な行動をとる涼子を横目で見ながら圭介に毛布を掛け、隣に座って圭介を眺める。

「私は何も出来なかった…ケイスケがこんな怪我をするまで、私は何一つこの旅の事が分かっていなかったんだ…」

 ぼんやりとする視界の中で、アヤハはケイスケと1番最初に出会う前の事を思い出す。



 母と主人がアヤハを巡って争い合うのを、その時のアヤハは他人事のように見ていた…






 首都から他の街へと乗り合い馬車で移動中に魔獣に襲われ、逃げ延びた人達は隠れるように近くの森へと逃げ込んだ。

 しかしそれはさらなる蹂躙を呼び起こし、気が付いた時にはアヤハ達3人しか周りに生きている人は誰1人居なくなってしまった。

 アヤハとその母親であるメニーシャは獣人の特性故に気配を読むことが出来た為、この森の危険な魔獣のテリトリーを掻い潜りながら自分の主人を守り生き抜いてきた。

 その主人の様子がおかしくなったのは2日後のことである。

 それまでは言葉こそは酷いものの暴力など振るわなかった主人がいきなりメニーシャを殴り、呆然とするアヤハの首を絞め出したのだ。

 赤く染まる目でアヤハの首を絞め続ける主人に、アヤハのはどうしようもない絶望と、これで楽になれるという安堵感で主人の行動を受け入れていた。

 あと少しでアヤハの意識が落ちようとした時、アヤハに覆い被さるような格好だった主人の体が横にブレるように吹き飛んでいく! 

「アヤハ、逃げなさい! 」

 メニーシャの叫ぶ声に我に帰るアヤハだが、母の姿を見て言葉を失う。

 首輪から伸びる呪縛紋が全身を包み、恐らく激痛が走っているだろう体の皮膚のあちこちが裂け、全身から血を流すメニーシャ。

 その手に持った血塗れの石を構え、赤い目に狂気を纏った主人相手に挑もうとしている。

 奴隷の原則である主人への攻撃はメニーシャの命を削る行為だ。

 しかし、彼女は襲い掛かってくる主人に毅然と立ち向かい、揉みくちゃになりながらもアヤハを守ろうとしている。



「どうして……」

 その言葉は主人に対する疑問か?それとも母親のアヤハを守ろうとする行動に対してなのか、アヤハ自身にも分からない言葉を呟き、その結果を見守る。

 両者共に血を流し、永遠に続くかと思われた組み合いだが突如として、主人の方が口から血を吐き倒れていく。

 この二日間まともに食べる事が出来ずに飢える手前の所だったが、どうやら男はこの辺りの物を口にしてしまったらしい。

 獣人族である彼女達にはこの場所にある物は全て危険だと分かるのだが、ただの人間でしかない男にはどうやらそれが分からなかったようだ。



「母さん ⁈  」

主人が倒れるとほぼ同時に、メニーシャも崩れ落ちるように倒れていく。

 全身に絡むように出ていた呪縛紋は消え失せたが、あまりにも長い間主人に反抗した所為か彼女の命は確実に削られてしまったようだ。

 震える手足を必死に動かし、母の元へと駆け寄るアヤハ。

 全身から血を流しながらもメニーシャの顔は安らかで娘の無事を喜んでいた。

「アヤハ…私の可愛いアヤハ。今回の件は残念でしたが貴女が無事なだけでも何よりです。残念ですが私の命はここまででしょう。私が死んだらご主人と共に葬って下さい」

「な、何で? この人は私達を殺そうとしたよ? 今までもいつも怒っていたよ?」

 母親の信じられない言葉に激昂するアヤハ。そんなアヤハを撫でながら、諭すように話し始めるメニーシャ。

「今の世界では亜人を人と同じように扱う事は、大変な事なのよ。この人は私達を気遣いながらも周りの人のやっかみを受けないようにしていたの。アヤハも怒られた事はあってもぶたれた事は無いでしょう?そういう人なのよ……1人でこんな所にしてあげるのも可哀想だし、私はこの人と共に貴女を見守るわ……さようならアヤハ。愛しているわ」

 笑顔のまま動かなくなった母親の元で、呆然とするアヤハ。






 しばらくして、主人の顔を見てみると穏やかな顔で亡くなっているのを知ってしまう……その顔は時折、アヤハとメニーシャを見ていた時の表情に似ている気がした。

 その後はケイスケに会い、母と主人の墓を作ってもらいその恩を返す為に一緒に行動してきた。

 小さな村を獣人から救ったかと思えば首都を滅ぼすなど、未だその考えている事は分からないが時折、前の主人のような表情で頭を撫でてくれる圭介は、いつの間にか今のアヤハには大事な人となっていた。



「だー! あー! 」

 セラの声で思い出から我に返ったアヤハは、静かに眠る圭介を見ながらあの2人の事を思う。

 あの2人は、ちゃんとあの世に行けたのだろうか?

 今のアヤハにそれを知る術は無かったが、記憶の中の2人はアヤハに微笑んでくれているように何故か感じた。
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