俺の命は1000円だった。〜壊れた男は異世界で復讐を誓う。

infinitey009

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第1章 鮮血の旅路

俺の道は復讐へと続き彼女の道は未来へと続く。

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 朝になり目を覚ます。色々あった所為か深く眠れた。枕元ではトバルの寝息が聞こえる。左手が重い…アヤハがしがみついているからか。まぁいいだろう。

「おや、起きたのかい?朝食ならゼラとターニャにシルムが作ってくれたよ。ゼラが2人に料理を教えていたから味には問題ない筈だよ。」

 …スライムが人間に料理を教えるのか。寝ぼけた頭でアヤハを脇に抱え、井戸まで行って顔を洗う。洗浄だけならクリーンでもいいが目覚ましには冷たい井戸の水が1番だ。

「冷たい。おはよう。」

 普段からあまり話す事ないアヤハだが寝起きはさらに悪い。しかし置いていくと機嫌が余計に悪くなるので連れてくるしかない。

「はい。おはようさん。飯を食ったら旅の再開だ。よく食っておけ。」

 アヤハは黙って頷き、顔を洗った後朝飯を食べる為家に戻る。俺は顔を洗う前に側に来ていたシルムに顔を見ず問い掛ける。

「何の用だ?飯なら食べに行くから先に食っておいてくれ。」

 気付かれているとは思わなかったのだろう。少し動揺するのが分かるがそれでも言いたいことがあるのかその場に留まっている。

「今日出て行かれるんですね。どうしてあの子は連れて行くんですか?」

 責めるような、それでいて聞きたくないような声で彼女は俺に問いかける。俺は顔を冷たい水で洗いながら出来るだけ分かりやすく答える。

「あの子は俺が選んだ旅の連れだ。お前達は俺が気紛れに助けた人間に過ぎない。」

 傷付くと分かっていながらこう言う言い方しか出来ない。それでも彼女は更に聞いてくる。

「私じゃいけないんですか?何でもしますよ?彼女じゃ出来ないような事でも何でも!」

 地球でこの子に会っていたら別の未来が待っていたのかも知れない。しかし俺は今ここに居てこの様な姿になっている。

「お前は勘違いをしている様だな。今の俺は1番この世界の人間が嫌いなんだ、こんな体にしてくれたな。俺の身体は魔獣や何やらを詰め込まれそれを笑われながら生きてきたんだ。正直な所人間と相対するだけで殺したくなる。俺はそういう状態だ。分かったら早く帰るんだ。」

 彼女の目を見てはっきり言う。シルムは涙を流しそのまま背後を向く。「分かりました。すいませんでした。」そう言って村長の家に戻る。俺はもう一度冷たい水を乱暴に顔に掛け冷静になろうとする。こうなる事は分かっていたはずだ。人間もどきに好意を持たれても心も体も受け付けなくなっている。この俺の復讐をしようとする心が、全てを奪われ怒りの置き所のない無念に満ちた魔獣の身体があったかも知れない幸福な未来を全て復讐へと変えてくれる。





 少し後で朝食を食べに行くと責める様な目で見るターニャと獣人の子供達。困った顔で見ている村長夫婦。そしてそれを見て困惑する俺の仲間達。飯を食べ終えると女子供達を呼ぶ。嫌そうに他の部屋に篭っていたシルムも呼んで集める。魔法の袋から金貨を取り出し一枚ずつ渡していく。驚く皆んなを余所に村長達には20枚渡しておく。これで路銀も半分くらいになったが別にいいだろう。

「お前達は何も持っていないからな。それが最後の餞別だ。何に使ってもいいが自分が納得出来る使い方にしとけ。村長さんには迷惑を掛けたから慰謝料だ。散々悪かったな。済まないがこれからの此奴らを頼む。」

 そう言うと2人は黙って頷いてくれた。子供達は泣きそうな顔をして…もう泣いてた。頭や背中を撫でてやる。ターニャも苦しくそうな顔をしているので肩を叩いてやる。最後にこちらを向かずに黙って泣いているシルムに魔法の袋に入っていた女物の髪飾りをつけてやる。

「どうして…嫌いなのに優しくするんですか!嫌いならそのまま放ってくれた方が良かった!助けてくれない方が良かった!」

 彼女の言うことが正しいだろう。彼女の言うことが彼女にとっては楽だったのかも知れない。それでも俺には言わなければならないことがある。

「シルムはあの時生きる事を選んだろ。その子達に庇われてそれでもその子達を助けたいから生きたかったんだろ?だったら生きるべきだ。自分で選んだ道なんだから…少なくとも庇い合うお前達の姿は俺がお前達を助けるぐらいには羨ましい光景だったのだから。」

 言うこともやる事もなくなった今、ここにいるのも限界だ。俺は村長夫婦に頭を下げこの家を出て行く。アヤハも背後を振り返らずに前を向き俺の横に立つ。トバルはアヤハの頭の上に、ゼラはアヤハの肩に乗る。

 歩いて暫く経つとポツリとアヤハが聞いてくる。

「羨ましかったの?」

 俺は空を見上げ流れる雲を見ながら答える。

「そうだな。無くした大切なものを見ているようで羨ましい気持ちがあったのかもしれないな。」

 そう答えるとアヤハは黙って俺の左手を掴む。俺もアヤハの右手を握り返しアヤハに聞き返す。

「アヤハの方こそ良いのか?これから俺は復讐の為死ぬ可能性も高い。今ならまだ間に合うぞ?」

 アヤハは黙って俺の目を見る。本当に曲げない子だな。笑いながら頭を撫でてやると頭の上のトバルも気持ち良さそうに鳴く。ゼラは今回は何も俺に飛ばさずただアヤハの肩で揺れている。
 空には青空が広がり暖かな風が舞う。少しばかりの雲が青いキャンパスに映え、ここに来て1番の光景だと感じさせられる。この旅はいつまで続くのか分からないが今日のこの光景だけはいつまでも忘れないだろう。



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