俺の命は1000円だった。〜壊れた男は異世界で復讐を誓う。

infinitey009

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閑話

ある少女達のその後

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「ターニャ。洗い物は終わったから休憩にしましょう」

 洗濯物を洗い終えたシルムは汗を拭いながら奥で村長の奥さんと料理の仕込みをしていたターニャに声を掛ける。

「あいよ。ツダさん。一服だってさ。何か摘むものあったけ?」

「芋の干したのがお茶に合うでな。それを持っていくわ」

 仲良く話しながらお茶の用意をする2人は今では本当のおばあちゃんと孫のようである。山賊にさらわれた時にはまさかこんな事になるなんて夢にも思わなかった。

「シルムちゃん。悪いけどあの子達も呼んできてくれるかい?他の子供も一緒でいいから」

「分かりました。連れてきますね」

 ツダさんの言葉に返事をするとシルムは村の中央にある広場に子供達を迎えに行った。



「ナジル、ルゼル、グレーゼ。お茶の時間よ。帰るから早くきなさいな」

シルムの声に他の子供達も付いてくる。

「シルムねーちゃん、俺達もいい?」

 ちょっと恥ずかしげにシルムに話しかけてくるこの村のガキ大将。シルムは笑いながら皆んな来なさいといってあげる。

「シルムちゃんいつも悪いね。これみんなで食べてよ」

「シルムちゃん。これ裏の山で採れた果物、村長さんに持っていってあげて」

「シルム!今度一緒にあの丘まで行かないか?」

 色々な人が彼女達を優しく見守ってくれている。元の村ですらこんなに大切にされなかった彼女達は本当にこの村に来れた事を感謝している。

「ナジル。今度は鬼ごっこしようぜ!」

「いいけどみんなでしようね」

「グレーゼも頑張るもん」

「ナジルとルゼルはハンデつけろよ?すぐ終わっちまうから」

 仲良く人間と獣人の子供達が遊んでいる。こんな場所はどこを探しても無いのではないか?シルムは時々考える。これで「あの人」がいればどんなに楽しいのだろうかと。

「シルムねーちゃん大丈夫か?」

 ガキ大将の子がシルムを心配してくれる。ここに来た次の日から少しの間シルムは荒れていた。助けてくれた彼女達の勇者が旅立っていったからだ。自分を連れていって欲しいと彼女は言った。しかし彼は生きていく道が違うと突き放し首都へと行った。その後「紅い波」と呼ばれる事件が起き首都は滅んだ…それからもう半年も立つ。

「もう半年も立つのか…」

 シルムは口にして初めて彼の事をそれほど思い出さなくなった事を知る。

「そうだね僕達がここに来てからもう半年以上も経つんだね」

シルムの言葉にナジルも相槌を打つ。ルゼルとグレーゼはすでに走って家にいっている。この場にいるのはシルムとナジルだけだ。

「あの人は本当に首都を滅ぼしたのかな?」

 ナジルが恐る恐る口にする。この村ではもはや禁忌に近い話だ。

「…多分ね。あの人はこの世界を憎んでいたから」

 シルムはあの時の彼の目を思い出す。狂気にに染まり、それでもギリギリの状態で彼女達を助けてくれたあの目を。

「首都には関係ない人達も居たんだよね。あの人はそんな事するような人には見えなかったのに…」

 ナジルは泣きそうな顔でシルムを見る。ナジルにとっても彼は勇者だったのだろう。それが「紅い波」で今では国際手配されている。それを知った時の村の人達は信じられない思いだった。彼がこの村に残してくれたものは村にとって既にかけがえのないものとなっていたからだ。だから村長はその事を村以外では話さないよう取り決めを決めた。彼女達は村の重荷になりたくないので村を出ようとしたが、みんなに止められてここにいるのだった。

「あの人にとってどうしても許せない事が首都であったんだと思うよ」

 シルムは何故か確信を持ってそう言葉にする。ナジルも頷いてそれ以降その事を口にしなくなった。





 更に三年が経ち、ターニャとシルムは村の若者と結婚して子供を持つまでになった。ナジル、ルゼル、グレーゼも大きくなり三人は冒険者として村を旅立った。村長と妻のツダさんはとても悲しんだが周りの村の圧力などもあり三人は笑って村を出ていった。その日はお祭りといわんばかりのご馳走だった。

「早いものね。」

 ターニャは村の大工の息子と結婚した。彼女はとても幸せだった。あの勇者のことは今でも忘れてはいない。ただ自分の信じる道は今の幸せだったと思っている。

 獣人の三人組は今では中堅の実力らしい。今でも冒険の合間に良く村に寄ってくる。その日はいつも豪勢な食事だ。だけとあの時奴隷だった彼女達はスライムが作ってくれた料理をいつも作って欲しいと強請って来た。

「ターニャねーちゃん大変だ!」

 話をしたと思ったらルゼルが帰って来たようだ。その顔は汗にまみれている。

「どうしたの?そんなに早く帰って来たかったの?」

 彼女はからかうように話すがルゼルは真剣なままだ。

「あの人達が帰って来たんだ!」

 その言葉を聞いてターニャは走る。自分でも信じられないほど早く村の入り口に行きたかった。

 そばを見るとシルムも走っていた。生まれたばかりの子供を持ち、転ばぬようそれでも少しでも早く走っていた。

 いつのまにか村のみんなが走っていた。村の空に黒い鳥が飛んでいるのが分かる。村の入り口には懐かしい獣人の女の子が女性となってスライムといた。スライムは前と変わらず村の子供達と遊んでいた。そしてその中に黒いマントをつけ獣人の女性を支える様に立っている片腕の男性がいた。彼女のお腹は少し膨らんでいた。

「何よ!愛する事が出来たんじゃない!」

 シルムの笑いながら叫ぶ声が聞こえる。彼女も同意だ。だけどそれは幸せな結末を意味するのではないか?

 この村に再び勇者が訪れた。




 この話はエンディング後の話が含まれていると思ってください。2部も現在作成中です。時間がかかるとは思いますがお待ちください。読んでくれてありがとうございました。
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