SEVEN TRIGGER

匿名BB

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月下の鬼人(ワールドエネミー)下

maintenance(クロッシング・アンビション)6

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「手裏剣……!?」

 シャドーが使っていた五方手裏剣。
 指先に輝く黒星に、俺は目を見張る。
 一朝一夕とは思えない、恐ろしく慣れた手つきで放たれた手裏剣二つは、見事ロナを拘束していたテロリストの腕に突き刺さった。

「うあぁぁッ!!」

 血の吹き出した男の手から、ナイフがスルリと床に落ちた。
 その隙にロナが逃れようと、腕を振りほどいた瞬間────

「このガキャァッ!!」

「……きゃっ……!」

「……ッ!」

 テロリストが叫喚しながらロナを蹴り飛ばした。
 そのまま、正面に居たアキラと縺れるようにして倒れこむ。
 ────ゴロンッ……

「……!?」

 仰向けに倒れていたアキラが目を見張る。
 二人のすぐ横、テロリストがずっとロナの背に隠し持っていた、手榴弾が転がっていた。
 安全レバーは勿論ない。

「二人とも消し飛びやがれッ!!」

 テロリストはそう吐き捨てながら背を向けた。
 手榴弾は安全レバーが外れてから約五秒で爆発する。
 二人はもう、逃げることはできない。

「……ッ」

 アキラはそれでも、ロナと身体を入れ替え覆いかぶさる。
 最後まで仲間を見捨てず、身を挺して守ろうと……



 一部始終を見ていた俺は、無意識に右眼の力、悪魔の紅い瞳レッドデーモンアイを解放していた。
 身体が焼けるように熱くなり、全身に力が漲ってくる。
 魔眼に対してあれほど忌み嫌っていたはずなのに……今はそんなこと、毛ほども気にならなかった。
 コンマ何秒よりも早く二人の場所へ────!
 それは、決して自分のためではない。
 あの二人のために……俺は……!
 銃口を背に向けられていたことなんて、もう忘れていた。
 一歩お踏み出すごとに、三倍、五倍、十倍、二十倍と力は増していき、コンクリートの床に乱雑な凹みを作っていく。

「フォルテ!?」

「その眼は!?」

 部下の前に仁王立ちした姿に、二人は眼を丸くする。
 鮮紅色を灯した瞳。
 手にはいつも鞘にしまっていた太刀、村正を抜いていた。
 その刀身は鞘と比べて半分程しかなく、先端に至ってはボロボロだ。
 でも、そんなこと関係ない。
 腕一本で二人を救うにはこれしかない────!

 月影一刀流、七ノ型。

文月ふみづき!!」

 右腕一本、変則居合から放った切っ先が、屋内に風撃を生み出す。
 同時に起爆した手榴弾の爆炎を螺旋の渦に乗せ────逃げた敵へと追撃する。

「……!?ギャアァァァァァァ!!!!」

 爆炎に飲み込まれたテロリストの断末魔。
 身体に纏わりつく炎を払おうとしたが、熱さに耐え切れず、その場にくずおれた。
 ……何とか間に合ったな。
 紅い瞳のまま振り返る俺。

────良かった、二人とも無事────

「……グッ!?」

 締め付けるような激痛が神経を駆け巡り、堪らずその場に膝を着いてしまう。

「「フォルテッ!!」」

 駆け寄る二人の姿。
 俺はそれに応えるどころか、呼吸すら覚束ない。
 魔眼の副作用。
 数年ぶりに乱用したせいで力の加減を誤ったらしい。
 無意識に二十……いや、三十は超えていたかもしれない……
 激痛と息苦しさで霞む視界の中。
 ブラックアウト寸前で見たものは二人の無事な姿と、その顔に映る酷く取り乱した表情だけだった。
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