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初めての家庭料理 7
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「俺、それ観ました。『獅士たちの道程』ってやつですよね」
陽斗がこの前、電車の中で視聴した番組だ。
「観てくれたんだ」
高梨が顔をほころばせて喜ぶ。
「うん。すごく格好よかったです。感動して電車を乗りすごすくらいだった」
「そんなに?」
「うん」
「だとしたらそれは、君のおかげだよ」
「え」
「君が僕に教えてくれたんだ」
心からの笑みは輝くばかりで、陽斗はこの人だって十分太陽みたいに笑えるじゃないかと切なく微笑んだ。
自分のやったことが、高梨に影響を与えていた。それがいい結果を生んで、視聴した自分もまた感動した。知らぬ間にできていたループに不思議な縁を覚える。運命のつながりとは、もしかしてこういったもののことを言うのかもしれない。だとしたら、自分たちは、やはり本当の『運命の番』なのだろうか――。
「あの番組の一件で、僕の社での評判も変わった。対外的にも非常に好印象を与えたらしく、その後もメディアからの取材が続いた。ホテル業界も今は厳しいからね。君のおかげでいい風が吹いてきた」
穏やかに微笑む相手からは、冷徹な印象はもう受けなかった。
「引越し屋のバイトが、ホテル業界のCEOに影響を与えることがあるなんて」
信じられない気持ちで呟くと、高梨が頷く。
「それはきっと、僕らが本当の『運命の番』だからだろう」
自分が考えていたことと同じ内容を口にする。
高梨はワインのグラスを手に、濃厚な葡萄酒を揺らした。
一口飲んで、静かに笑みを消す。そして真面目な顔になって話を続けた。
「あれからずっと、僕は毎日、君のことを考えてすごしてきた。時間があるときは見守りにいったりもした。君のオメガ性についての詳しい報告がまだだったから、実際に話しかけることはできなかったけれど。でも、最初に会った夜、君は暴漢に襲われそうになっただろう。あれを助けにいこうとして、それで予定外に会話することになってしまった」
「そうだったんだ」
「あのとき、僕の態度はひどく不躾だったと思う。初対面なのに、君の個人的事情に踏みこみすぎて叱られた。……すまなかった」
「いえ。俺こそ、年上のあなたにあんな言葉遣いして、礼儀知らずでした」
「いいんだ。君は何も悪くない。僕が無礼だったんだ。君のことはずっと調べていたから、僕の中ではもうよく知る人物に育ってしまっていたんだよ。それに話をできた嬉しさもあって羽目を外してしまった。大人げないことだった」
高梨が反省するように目を伏せる。
「あの夜、君に拒否されて、家に帰ってからずっとどうやって関係を修復したらいいのかと悩んだ。嫌われたままでいるのは耐えられなくて、翌日すぐにプロポーズしにいった。頭の中からは君以外のすべてのことが抜け落ちてしまっていたよ。仕事のことも高梨家のことも。あんなことは初めてだった。だから、君こそが運命だと確信した」
高梨は自嘲するように笑った。
「これが、出会うまでの経緯だ。黙っていてすまない」
「……いいえ」
陽斗が首を振る。
話を聞けば、彼と初めて会ったときの態度にも納得がいった。そして最初からあんなに甘い眼差しだった訳も。
陽斗は目の前の人と不思議な縁で心が結ばれていくような気がして、手をとめたまま、美しいアルファに見入った。
陽斗がこの前、電車の中で視聴した番組だ。
「観てくれたんだ」
高梨が顔をほころばせて喜ぶ。
「うん。すごく格好よかったです。感動して電車を乗りすごすくらいだった」
「そんなに?」
「うん」
「だとしたらそれは、君のおかげだよ」
「え」
「君が僕に教えてくれたんだ」
心からの笑みは輝くばかりで、陽斗はこの人だって十分太陽みたいに笑えるじゃないかと切なく微笑んだ。
自分のやったことが、高梨に影響を与えていた。それがいい結果を生んで、視聴した自分もまた感動した。知らぬ間にできていたループに不思議な縁を覚える。運命のつながりとは、もしかしてこういったもののことを言うのかもしれない。だとしたら、自分たちは、やはり本当の『運命の番』なのだろうか――。
「あの番組の一件で、僕の社での評判も変わった。対外的にも非常に好印象を与えたらしく、その後もメディアからの取材が続いた。ホテル業界も今は厳しいからね。君のおかげでいい風が吹いてきた」
穏やかに微笑む相手からは、冷徹な印象はもう受けなかった。
「引越し屋のバイトが、ホテル業界のCEOに影響を与えることがあるなんて」
信じられない気持ちで呟くと、高梨が頷く。
「それはきっと、僕らが本当の『運命の番』だからだろう」
自分が考えていたことと同じ内容を口にする。
高梨はワインのグラスを手に、濃厚な葡萄酒を揺らした。
一口飲んで、静かに笑みを消す。そして真面目な顔になって話を続けた。
「あれからずっと、僕は毎日、君のことを考えてすごしてきた。時間があるときは見守りにいったりもした。君のオメガ性についての詳しい報告がまだだったから、実際に話しかけることはできなかったけれど。でも、最初に会った夜、君は暴漢に襲われそうになっただろう。あれを助けにいこうとして、それで予定外に会話することになってしまった」
「そうだったんだ」
「あのとき、僕の態度はひどく不躾だったと思う。初対面なのに、君の個人的事情に踏みこみすぎて叱られた。……すまなかった」
「いえ。俺こそ、年上のあなたにあんな言葉遣いして、礼儀知らずでした」
「いいんだ。君は何も悪くない。僕が無礼だったんだ。君のことはずっと調べていたから、僕の中ではもうよく知る人物に育ってしまっていたんだよ。それに話をできた嬉しさもあって羽目を外してしまった。大人げないことだった」
高梨が反省するように目を伏せる。
「あの夜、君に拒否されて、家に帰ってからずっとどうやって関係を修復したらいいのかと悩んだ。嫌われたままでいるのは耐えられなくて、翌日すぐにプロポーズしにいった。頭の中からは君以外のすべてのことが抜け落ちてしまっていたよ。仕事のことも高梨家のことも。あんなことは初めてだった。だから、君こそが運命だと確信した」
高梨は自嘲するように笑った。
「これが、出会うまでの経緯だ。黙っていてすまない」
「……いいえ」
陽斗が首を振る。
話を聞けば、彼と初めて会ったときの態度にも納得がいった。そして最初からあんなに甘い眼差しだった訳も。
陽斗は目の前の人と不思議な縁で心が結ばれていくような気がして、手をとめたまま、美しいアルファに見入った。
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