アルファ貴公子のあまく意地悪な求婚

伽野せり

文字の大きさ
39 / 78

甘い治療 1*

しおりを挟む
◇◇◇ 

 
 その夜は、九時すぎに高梨が陽斗の部屋にやってきた。
 シャワーをすませて準備をしていた陽斗は、少し緊張しながら彼を迎え入れた。

 高梨もシャワーを使ったのか、ゆったりとした部屋着になっている。コットンの白色Tシャツにジャージ素材の黒色ボトムは、まるでハリウッド俳優のプライベート服のようにさりげなく、かつお洒落だ。

 さっきの会話があったせいか、昨日よりずっと彼を身近に感じてしまう。そのため昨夜より羞恥心が大きく育っていた。
 どうしよう。また、あの椅子で甘い責め苦をされるのか。そう考えただけで、未成熟な性器がしっとりと重くなる。陽斗が頬を淡く染めて、困ったように治療用の椅子に視線を流すと、それに気づいた高梨が優しく陽斗の肩に手をおいた。

「今日はベッドにいこうか」
 耳元に顔をよせてささやく。陽斗はピクリと肩を跳ねさせ、それから小さく頷いた。
 ベッドなら昨夜のような淫らな体勢は取らずにすむ。
 しかしそれは陽斗の考え違いだった。

 高梨は昨夜と同じように、まずバスルームにいって手を洗った。戻ってくるとアルコール消毒をしつつ、低い声で命令する。

「じゃあ服を全部脱いで。シーツにうつ伏せて」
 艶めいた声音には、期待と昂揚が含まれていた。
「……ん、はい」

 陽斗は震え始めた手で服を脱いでいった。秋口の夜気は、服を着ているときはさほど冷たさを感じさせないが裸になるととたんに肌を刺してくる。緊張からか寒さからなのかわからない武者震いをひとつして、陽斗は裸になるとベッドに横たわった。

 シーツに頬をつけて高梨を待つと、男は小机からアタッシュケースを手に取り、ベッドに乗りあげ、陽斗のちょうど尻のあたりに腰をおろした。
                                                     
「膝をついて、可愛いお尻を持ちあげてね」
 ケースをあけながら優しく言う。陽斗は素直に従って、腰を高く掲げた。相手からは自分の尻が奥まで丸見えだろう。

「今日は縛らないから。その代わり最後まで腰はおろしちゃダメだよ。さあ、足をひらいて」
 言われるがままに、両足を広げる。

 やわらかな肉茎やふくろが、皮膚の支えを失ってフルフルと小刻みに揺れた。隠れていた後孔が、警戒して自然とすぼまる。その動きも全部、相手に見えているのだと考えれば、恥ずかしさに消え入りたくなる。けれど反対に、幹は興奮に硬くなった。

「今夜は後ろから前立腺を刺激して、同時に前からオメガ宮を押してみよう」
 そう言うと、ケースから不思議な形状のシリコン器具を取り出す。ゆるいカーブを描く器具はきっと前立腺用アナルプラグだ。

「じゃあまず、これから入れていこうね」
 高梨がゼリーのボトルをあけて、中身を尻の狭間にとろりとたらす。水っぽい感触に皮膚が粟立った。

 果てしない夜の始まりを予感して、茎の先端に雫がにじむ。何をされるのか考えただけでこんなにも反応してしまうなんて。
 きっと今夜はフェロモンが放出される。
 ジクジクとうずき始めた下半身を持てあましながら、陽斗は高梨が器具を挿入するのを目をとじて待った。

「入れるよ」
 ゆっくりと、冷たいプラスチックが身体の中に入ってくる。硬い道具は、陽斗の内側を強引に押しひらき、機械的に進んできた。

「……ん」
 それはまるで、性行為というよりは、医療行為のような気分を与えてくる。       
 自分は今、この人に治療されているのだ。悪い部分を直してもらい、もっといい身体に作りかえてもらっている。
 そう思うと身を任せる相手に対して無条件の服従を感じてしまい、陽斗は嗜虐に暗く興奮した。

「さあ、全部入った。次はこちらを向いて膝立ちになって」
「……はい」
 尻の奥に違和感を覚えながら体勢を変え、高梨の前に膝をついて立つ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

獣人王と番の寵妃

沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――

メビウスの輪を超えて 【カフェのマスター・アルファ×全てを失った少年・オメガ。 君の心を、私は温めてあげられるんだろうか】

大波小波
BL
 梅ヶ谷 早紀(うめがや さき)は、18歳のオメガ少年だ。  愛らしい抜群のルックスに加え、素直で朗らか。  大人に背伸びしたがる、ちょっぴり生意気な一面も持っている。  裕福な家庭に生まれ、なに不自由なく育った彼は、学園の人気者だった。    ある日、早紀は友人たちと気まぐれに入った『カフェ・メビウス』で、マスターの弓月 衛(ゆづき まもる)と出会う。  32歳と、早紀より一回り以上も年上の衛は、落ち着いた雰囲気を持つ大人のアルファ男性だ。  どこかミステリアスな彼をもっと知りたい早紀は、それから毎日のようにメビウスに通うようになった。    ところが早紀の父・紀明(のりあき)が、重役たちの背信により取締役の座から降ろされてしまう。  高額の借金まで背負わされた父は、借金取りの手から早紀を隠すため、彼を衛に託した。 『私は、早紀を信頼のおける人間に、預けたいのです。隠しておきたいのです』 『再びお会いした時には、早紀くんの淹れたコーヒーが出せるようにしておきます』  あの笑顔を、失くしたくない。  伸びやかなあの心を、壊したくない。  衛は、その一心で覚悟を決めたのだ。  ひとつ屋根の下に住むことになった、アルファの衛とオメガの早紀。  波乱含みの同棲生活が、有無を言わさず始まった……!

宵の月

古紫汐桜
BL
Ωとして生を受けた鵜森月夜は、村で代々伝わるしきたりにより、幼いうちに相楽家へ召し取られ、相楽家の次期当主であり、αの相楽恭弥と番になる事を決められていた。 愛の無い関係に絶望していた頃、兄弟校から交換学生の日浦太陽に出会う。 日浦太陽は、月夜に「自分が運命の番だ」と猛アタックして来て……。 2人の間で揺れる月夜が出す答えは一体……

知らないだけで。

どんころ
BL
名家育ちのαとΩが政略結婚した話。 最初は切ない展開が続きますが、ハッピーエンドです。 10話程で完結の短編です。

変異型Ωは鉄壁の貞操

田中 乃那加
BL
 変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。  男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。  もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。  奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。  だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。  ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。  それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。    当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。  抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?                

オメガの香り

みこと
BL
高校の同級生だったベータの樹里とアルファ慎一郎は友人として過ごしていた。 ところがある日、樹里の体に異変が起きて…。 オメガバースです。 ある事件がきっかけで離れ離れになってしまった二人がもう一度出会い、結ばれるまでの話です。 大きなハプニングはありません。 短編です。 視点は章によって樹里と慎一郎とで変わりますが、読めば分かると思いますで記載しません。

処理中です...