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発情してはいけない 6
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「待って、高梨さん」
陽斗は急いで彼に近よった。
「入ってこないで。外に出てっ」
「え?」
訝しむ彼が、動きをとめる。そしてふと眉をよせた。
「陽斗君?」
高梨は出ていくどころか、陽斗に近づいてきて腕を取った。
「君? フェロモンが出てる?」
「えっ」
「いい匂いだ。どうしたんだい、急に。もしかして発情が?」
陽斗の首筋に顔を埋めてくる。
陽斗は驚いて、そして匂いは自分のものじゃなく、光斗のものだと気がついた。
「ちっ、ちがっ、コレは俺のじゃない」
高梨は勘違いをしている。
「光斗が、発情したんだ。これは弟のフェロモンだよ。だから外に出て。お願いだから、ずっと遠くに、匂いが届かないところにいって」
「え?」
陽斗は身をよじって、高梨から離れようとした。しかしどうしてか、高梨は手をゆるめようとしなかった。
「本当に? ……ああ、たしかに、よく似ているけれど少し違うな。これは、……大輪のカサブランカのような香りだ……」
声がウットリしたものに変わる。陽斗はイヤな予感に背筋を震わせた。
「高梨さん、しっかりしてくれ」
力の限りに相手を押すも、レア・アルファは動かない。
「お願いだ、ここを出て、早く」
大柄な身体を揺さぶって声をあげる。すると高梨は我に返って呟いた。
「……ああ、そうか、君じゃないんだな。……わかった、そうしよう」
香りの誘惑をはねのけるように頭を振ると、踵を返そうとする。
しかし、その動きがひたりととまった。陽斗の肩越しに何かを発見して、表情を変える。
「高梨さん?」
どうしたのかと背後を振り返り、リビングの扉をあけて廊下をうかがう光斗の姿を発見した。
「……陽斗……。どうしよう、すごく、苦しい……。助けて……」
ドアに縋りながら光斗が訴える。
「光斗、中に入ってろ!」
「……ぁ」
光斗が高梨を見つけて、全身をわななかせた。
「出てきちゃダメだ」
そのとき、ぶわりと風が吹くように、隣の人から強い芳香が漂いだした。
「――え?」
横を見あげると、光斗を見て、呆然とたたずむ男の姿が目に入る。
「……高梨さん?」
高梨は光斗を凝視していた。まるで何か強い魔法にでもかけられたかのように、微動だにせず弟を穴があくほど見つめている。
「……ダメだ」
陽斗は高梨の胸を押さえた。
「ダメだ、高梨さん、お願い、外に出て」
高梨の耳には、陽斗の声は届いていないかのようだった。
「光斗を襲っちゃダメだ。光斗は、やめて」
陽斗は急いで彼に近よった。
「入ってこないで。外に出てっ」
「え?」
訝しむ彼が、動きをとめる。そしてふと眉をよせた。
「陽斗君?」
高梨は出ていくどころか、陽斗に近づいてきて腕を取った。
「君? フェロモンが出てる?」
「えっ」
「いい匂いだ。どうしたんだい、急に。もしかして発情が?」
陽斗の首筋に顔を埋めてくる。
陽斗は驚いて、そして匂いは自分のものじゃなく、光斗のものだと気がついた。
「ちっ、ちがっ、コレは俺のじゃない」
高梨は勘違いをしている。
「光斗が、発情したんだ。これは弟のフェロモンだよ。だから外に出て。お願いだから、ずっと遠くに、匂いが届かないところにいって」
「え?」
陽斗は身をよじって、高梨から離れようとした。しかしどうしてか、高梨は手をゆるめようとしなかった。
「本当に? ……ああ、たしかに、よく似ているけれど少し違うな。これは、……大輪のカサブランカのような香りだ……」
声がウットリしたものに変わる。陽斗はイヤな予感に背筋を震わせた。
「高梨さん、しっかりしてくれ」
力の限りに相手を押すも、レア・アルファは動かない。
「お願いだ、ここを出て、早く」
大柄な身体を揺さぶって声をあげる。すると高梨は我に返って呟いた。
「……ああ、そうか、君じゃないんだな。……わかった、そうしよう」
香りの誘惑をはねのけるように頭を振ると、踵を返そうとする。
しかし、その動きがひたりととまった。陽斗の肩越しに何かを発見して、表情を変える。
「高梨さん?」
どうしたのかと背後を振り返り、リビングの扉をあけて廊下をうかがう光斗の姿を発見した。
「……陽斗……。どうしよう、すごく、苦しい……。助けて……」
ドアに縋りながら光斗が訴える。
「光斗、中に入ってろ!」
「……ぁ」
光斗が高梨を見つけて、全身をわななかせた。
「出てきちゃダメだ」
そのとき、ぶわりと風が吹くように、隣の人から強い芳香が漂いだした。
「――え?」
横を見あげると、光斗を見て、呆然とたたずむ男の姿が目に入る。
「……高梨さん?」
高梨は光斗を凝視していた。まるで何か強い魔法にでもかけられたかのように、微動だにせず弟を穴があくほど見つめている。
「……ダメだ」
陽斗は高梨の胸を押さえた。
「ダメだ、高梨さん、お願い、外に出て」
高梨の耳には、陽斗の声は届いていないかのようだった。
「光斗を襲っちゃダメだ。光斗は、やめて」
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