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2 放課後
優しくて明るい性格の先生だけど、こういう事務的なことは抜けている時がある。おそらく、学生の頃からこんな感じの人だったのだろう。
授業ではバッチリ決めているくせに、こうした授業外のことはズボラになる印象がある。おそらく、興味があること以外となると、集中力が続かないのだろう。
その代わり、先生の得意な数学の分野ではとことん突き詰めているようだ。ヘラヘラしているようで、変なところでこの人は賢すぎる。
原口先生は未だポスターを覗き込んでいる。いつも軽薄そうな笑みを浮かべているくせに、今は妙に真剣な表情だ。
なんで俺が書いたポスターをそんなに真剣に見るんだろう……。
書きかけだし、絵が上手いわけじゃない。ポスターを描くことになったのだって、人に押し付けられたから渋々引き受けただけだ。好き好んでしていたわけじゃない。だから、褒められるようなことをしているわけではないのだ。
……あまりそんなに真剣に見ないでほしい。恥ずかしくなってきた俺はとうとう耐えきれなくなって、本棚の影から先生に声をかけた。
「ちょ、先生……いつまで見てるんですか。そんな暇あるなら、本の整理を手伝ってくださいよ」
「何を言う。俺はお前が、誤字をしていないかチェックしていただけで……あ、誤字みっけ」
「え!?」
手元の本を適当に机に置いて、カウンターに急いで向かう。
嘘だ、何度も見返したはずなのに。というか、もうペン書きしてるところもあるのに!
書き直しなんて絶対嫌だ。そんな焦りのあまり、俺は先生のニヤニヤした表情に気づけなかった。カウンターにつくなり台の上のポスターに手を伸ばそうとして、その瞬間、先生に手を絡み取られて体勢を崩す。
「うわっ」
「はーい、宮田くんゲット~」
ぐらりと視界が回って、温かいものに包まれた。
腕を引っ張られて、先生の胸に顔を埋める。ふわりと香る先生の匂い。
正面から抱きしめられているということを理解したのは、腰に回った先生の腕の力が強まったときだった。
な、なんで先生に抱きしめられて……?
「宮田はいつも頑張ってるなー。よしよし」
ぽん、と頭に置かれた手に、目を見開いた。どうして、なぜ、俺は原口先生に抱きしめられてるの?
先生とここまで距離が近くなることは今までになかったことだから、どうしたらいいかわからない。距離近いなとか、スキンシップ多いなって思うことはあったけど、ここまでじゃなかった。
原口先生は、教師の中でも比較的生徒に近しいイメージがある人だ。だけど、いつも教師としての一線をどこかに構えているということに俺は気づいている。大人としての然るべきあり方、という心構えを重んじていたように感じる。
そんな原口先生の一面を分析していたからこそ、俺は混乱で頭がいっぱいになっていた。
「せ、せんせい?」
「んー?……宮田っていっつも頑張ってるなあって思ったら、何か抱きしめたくなった。まあ、労られてるとでも思って大人しくしてろよ。あ、誤字の件は嘘だから。お前、もっと人を疑ったほうがいいぜ?」
最低だこの人…俺は本気で焦ったのに!
原口先生の胸を叩いて抗議する。教師が生徒にそんな嘘つくって思わないじゃん。
「先生!」
「ごーめん、ごめんって。そうだ、お詫びに先生が肩揉みしてやるよ」
「は?いいですって」
「いっつも頑張ってくれている生徒へのお礼だって。ほら、そこ座って」
急いで断わるものの、問答無用で近くの丸椅子に座らされる。背後から肩を掴まれて、思わず背筋が伸びた。
「どうしたんですか?いつもこんなことしないのに……」
「何かしてやりたくなったんだよ。いいから、人の親切は黙って受け取っておけ」
そういうものなのか…?
いつもより先生からの接触が多くて、肩に感じた先生の温度に胸がどきどきしてくる。ぐりぐりとツボを押されると、痛みの中に気持ちよさを感じて肩の力が抜けた。自分でも気づかないうちに、肩が凝っていたみたいだ。
「ん、結構硬いな。今日もお疲れさん」
「……、ありがとうございます」
心地いい低音の声が耳をくすぐって、うとうとしてくる。肩揉みは今まであまりされたことがなかったのだけど、思っていたよりも気持ちいい。
授業ではバッチリ決めているくせに、こうした授業外のことはズボラになる印象がある。おそらく、興味があること以外となると、集中力が続かないのだろう。
その代わり、先生の得意な数学の分野ではとことん突き詰めているようだ。ヘラヘラしているようで、変なところでこの人は賢すぎる。
原口先生は未だポスターを覗き込んでいる。いつも軽薄そうな笑みを浮かべているくせに、今は妙に真剣な表情だ。
なんで俺が書いたポスターをそんなに真剣に見るんだろう……。
書きかけだし、絵が上手いわけじゃない。ポスターを描くことになったのだって、人に押し付けられたから渋々引き受けただけだ。好き好んでしていたわけじゃない。だから、褒められるようなことをしているわけではないのだ。
……あまりそんなに真剣に見ないでほしい。恥ずかしくなってきた俺はとうとう耐えきれなくなって、本棚の影から先生に声をかけた。
「ちょ、先生……いつまで見てるんですか。そんな暇あるなら、本の整理を手伝ってくださいよ」
「何を言う。俺はお前が、誤字をしていないかチェックしていただけで……あ、誤字みっけ」
「え!?」
手元の本を適当に机に置いて、カウンターに急いで向かう。
嘘だ、何度も見返したはずなのに。というか、もうペン書きしてるところもあるのに!
書き直しなんて絶対嫌だ。そんな焦りのあまり、俺は先生のニヤニヤした表情に気づけなかった。カウンターにつくなり台の上のポスターに手を伸ばそうとして、その瞬間、先生に手を絡み取られて体勢を崩す。
「うわっ」
「はーい、宮田くんゲット~」
ぐらりと視界が回って、温かいものに包まれた。
腕を引っ張られて、先生の胸に顔を埋める。ふわりと香る先生の匂い。
正面から抱きしめられているということを理解したのは、腰に回った先生の腕の力が強まったときだった。
な、なんで先生に抱きしめられて……?
「宮田はいつも頑張ってるなー。よしよし」
ぽん、と頭に置かれた手に、目を見開いた。どうして、なぜ、俺は原口先生に抱きしめられてるの?
先生とここまで距離が近くなることは今までになかったことだから、どうしたらいいかわからない。距離近いなとか、スキンシップ多いなって思うことはあったけど、ここまでじゃなかった。
原口先生は、教師の中でも比較的生徒に近しいイメージがある人だ。だけど、いつも教師としての一線をどこかに構えているということに俺は気づいている。大人としての然るべきあり方、という心構えを重んじていたように感じる。
そんな原口先生の一面を分析していたからこそ、俺は混乱で頭がいっぱいになっていた。
「せ、せんせい?」
「んー?……宮田っていっつも頑張ってるなあって思ったら、何か抱きしめたくなった。まあ、労られてるとでも思って大人しくしてろよ。あ、誤字の件は嘘だから。お前、もっと人を疑ったほうがいいぜ?」
最低だこの人…俺は本気で焦ったのに!
原口先生の胸を叩いて抗議する。教師が生徒にそんな嘘つくって思わないじゃん。
「先生!」
「ごーめん、ごめんって。そうだ、お詫びに先生が肩揉みしてやるよ」
「は?いいですって」
「いっつも頑張ってくれている生徒へのお礼だって。ほら、そこ座って」
急いで断わるものの、問答無用で近くの丸椅子に座らされる。背後から肩を掴まれて、思わず背筋が伸びた。
「どうしたんですか?いつもこんなことしないのに……」
「何かしてやりたくなったんだよ。いいから、人の親切は黙って受け取っておけ」
そういうものなのか…?
いつもより先生からの接触が多くて、肩に感じた先生の温度に胸がどきどきしてくる。ぐりぐりとツボを押されると、痛みの中に気持ちよさを感じて肩の力が抜けた。自分でも気づかないうちに、肩が凝っていたみたいだ。
「ん、結構硬いな。今日もお疲れさん」
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