海ぼうずさんは俺を愛でたいらしい

キルキ

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続 その後の話

39 水族館の海月 小話

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裕也の知り合いだと名乗った女の子が、突然家に来た。裕也の父親に何があったのかと聞かれて、余りに必死に聞いてくるものだからつい答えてしまった。

全て聞いた女の子は、そうなの、と言って静かになった。私をじっと見据えて、口を結んでいる。私に向けられるその目に責めるような色が混じっていることを、その時初めて気づいた。

あなたは何をしているんですか、裕也はすごく傷ついているんですよ、と女の子が言う。その言葉に、どうしてその子が私にそんな目を向けているのかを悟った。

何って、逆に何をすればいいっていうのよ。私が下手に首を突っ込んだら、私があの人に殴られるかもしれないのに。裕也はもっと殴られるかもしれないのに。

そう早口で言うと、女の子は興味なさげに「へぇ」と言った。

「あなたって母親っぽくないですよね」

きっぱりとした声が頭に響く。音がぐわんぐわんと骨に響いて、息を呑む。それだけの衝撃を放つ言葉だった。

「そ、そうなのかしら」
「ええ」

明瞭に断言されてしまえば、何も言えなくなる。黙り込む私に、女の子はさっさと背を向けて帰っていった。







「子供のことで苦労してきてないんだろうなって思うのよ。昔からあなたのこと見てきたけど、いつまで経っても子供っぽいのよねぇ。子供って可愛いかもしれないけどね、親は子に甘え過ぎたらいけないのよ。子供が困っているときに助けてあげるのが、親ってものでしょう」
「……」
「母親じゃなくて、友達としての距離感よね。あなた達二人って」

昔から彼女を見てきた職場の友人は、呆れた顔をしている。手に持った酒を煽り、そしてまたこちらに目を向ける。

「親子に拘らなくてもいいじゃない。どうしてそこまで?」
「……もうわかんないわよ」

ため息をついて机に突っ伏す。自分と息子の間に残り続ける溝にたいへん悩んでいるらしい。

「でも、これっていい傾向ね」
「……?」
「以前のあんたって、こうやって子供のことで悩むこともなかったから。最近まで、あんたの家庭事情なんて知らなかったし。そもそも相談されることもなかったし」

そうだろうか、そうだったっけ。以前は誰にも知られたくなかったことだから、親しい人にも打ち明けていなかった。

「あの子は楽しかったって言ったんだろう?」
「ええ」
「ならもうそれでいいじゃないか」

面倒くさそうに友人は言う。それでも納得できないものがあるから、こうして悩んでいるのに。

「でも、けっきょく問題をあやふやにしただけに思うわ」
「ふわふわしてるのが嫌だって?わからんこともないけどねぇ」

どれだけ酒を飲んでも、あの女の子の声が脳に残っていた。



痛いことをされるのは嫌だ。嫌な目に会うのが嫌だ。どこまでも自分のために生きていたい。だからといって、あの子と完全に縁を切りたいわけじゃないのだ。
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