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5 電車
しおりを挟む夢うつつの中でとろりと顔を緩ませていると、前方から声が聞こえた。
「おら、顔上げろっ」
ピアスの男が痺れを切らしたように、俺の腕を掴んで顔から引き剥がした。顎を捉えられて強制的に上を向かされる。
されるがままの俺を見て、勝ち気な瞳が愉悦に歪んだ。
「ははっ物欲しそうなの顔しやがって。ほんとに淫乱だな」
ニヤついた男の顔を見上げながら肩で息をしていると、唇を指でつつかれる。親指が下唇をなぞって、口端に溢れた俺の唾液をつーっと伸ばした。
何も考えずにそれを舌先で舐める。ちろちろと舌を出していると指で掴まれた。そのまま親指が口腔に侵入してきて、口を閉じることができなくなる。
「ふ、ふぁ、う、ぁ、ぅあ、あ、あっ」
艶の孕んだ声がとめどなく漏れ出した。
こっちに集中しろと言わんばかりに腸内が指でくるくる掻き回される。先程イかせて貰えなかった躰は貪欲に快感を求めてそれに絡み付く。
お腹がキュンキュンして、男の指に肉が縋りついているのがわかる。
「あ、あっ、はっ、あうっ」
前方から口腔をなぞられているおかげで、喘ぎが口から途切れない。唾液が口の中に溜まって、顎まで垂れてくる。「うわぁ、えっろ」と悩まし気な溜息と共にそんな声が後ろから聞こえる。
「挿れたいなぁ」
ひゅっと喉が鳴った。
穏やかな声色とは裏腹の、欲情の言葉。心臓がどくんと高鳴る。
先程見たぎらぎらした双眸を思い出す。欲を孕んだ瞳は俺を捕らえて離すまいとしていた。今も、あの熱い瞳で俺のことを見つめているのだろうか。
直接的な肉欲の願望を囁かれて躰を固める。するとピアスの男が戒めるように俺の後ろへ呼びかけた。
「おい」
「わかってるって。ここでセックスしたら、俺絶対自制できなくなるからね」
残念そうに男がため息をつき、ピアスの男が肩を竦めた。
「んならいいんだけどよ」
「あー、早くセックスしたい」
「っ、うあ、しぇ、せっくす、」
今まで友人との会話に出たことすらない単語を、たどたどしく繰り返す。口に出すだけで腸がキュッと締まる。
一番奥をがんがん突かれて嬌声を上げる自分の姿が脳裏に浮かんだ。
自分の指では届かなかったところに、じゅぽじゅぽ男の剛直が入り込んでいく。
何度も達しているというのに、中を容赦なく攻められて、またイッて───
生々しい妄想が、ぐるぐる回る。
ずっと、気づかないふりをしていたはずの被虐心が、無視できないほどに大きくなっていた。
「お、想像したのか?えっちだなー」
"やっぱりめっちゃかわいーな"と言われて、ピアスの男に頬を撫でられる。
ずっと満たされなかった欲望が叶うかもしれない。欲しい、欲しいと、頭の中にあるのはそればかりで、くらくらした。
朧気な意識の中で。
「突いて欲しい…」
甘くて淫らなおねだりが、こぼれ落ちた。
前後の二人の愛撫する手が止まる。ピアスの男が目を見開いていた。
「っ、は……」
「一番奥の、いっぱいむずむずするところ、突いて欲しい……っ」
「………っ」
「ねえ、ダメ?」
気が付けば、肩越しに後ろの男にむかってそう懇願していた。
息を呑む音が、あちこちで聞こえた。
ピアスの男のシャツから手を離す。返事を待てなくて、腰に回った男の腕に触れる。指先でスーツを引っ掻いた。
煽るように腰を揺らす。中に埋め込まれた男の指に後肛を押し付けて、まるでいつものアナニーのように腸壁に擦らせた。
俺が一番大好きなしこりに、こりこりさせる。びくびくする躰で一生懸命男を誘った。
「あっ……んぁっ」
男を誘ったことなんて無いから、これでいいのかわからない。だけどほかにどうしようもなくて、俺のねっとりした躰を精一杯差し出す。
涙目になって反応を待っていると、勢いよく指が引き抜かれる。息をする間もなく、ふわっと後ろから包み込まれた。
後ろから、抱きしめらている。
背中越しの体温が、俺にまで伝わった。恋人を愛でるような抱擁に、さっきまでと違う心臓の高鳴りがした。
胸がどくどくして落ち着かない。
うなじにちゅっと湿った唇が吸いつく。余裕なさ気な荒い息が首筋にかかってくすぐったい。
俺は少し戸惑ったが、体の力を抜いて男の腕の中に収まった。
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