明日死ぬ君と最後の夜を

遙くるみ

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ヴィクトル

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「…?ぁ、きゃ!ヴィクトん─!」

 エウリーカの身体を押し倒し、床に縫い付ける。一心不乱にエウリーカの唇を貪り、乳房を揉みこむ。

 エウリーカ……ああ、愛しのエウリーカ!

 カサついた僕の手で触れたらエウリーカの美しい柔肌を傷つけてしまうかもしれない。何より汚れきった僕の手で触れたら、まっさらなエウリーカまで汚してしまうかもしれない。それが怖くてずっとずっと我慢していたというのに。
 全部飛んでった。
 僕の頭の中に残ったのは配慮も遠慮も自制もない。エウリーカに触れたい、エウリーカを抱きたい。美しいエウリーカを僕の手で汚していまいたいという、浅ましい欲望だけだ。

「ふ、ぅん……はぁ、あ、あっ」

 途切れ途切れ息を溢し、身体を捩らせるエウリーカ。
 頬を赤く染め、涙に濡れた瞳で、僕の強引な口づけに必死に応えるエウリーカ。
 しっとりと吸い付く肌の感触。乳房の形、弾力、尖りの色。汗ばんだ項から発する香り。湿った陰毛。湧き出る愛液。

 僕の知らなかったエウリーカがこんなにたくさん。でも、まだある。もっと知りたい。
 本能の赴くまま、その先探る。
 エウリーカの中。熱くて狭い。

「っつ、た」

 硬くそそり勃った自身を押し付けると、エウリーカが顔をしかめた。でもすぐに、「だいじょーぶ、だから」と、にっと歯を見せて笑った。

 後になって考えてみると、エウリーカの身体も、表情も、完全に僕のそれを拒否していた。なのに僕はエウリーカの言葉だけを鵜呑みにして、大丈夫だと思ってしまった。エウリーカが僕に気を使って我慢しているだなんて、少しも思わなかった。

 きつく閉ざされたそこを無理やりこじ開けるように腰を進める。
 知識なんてなくても、そうすべきだと身体が知っていた。

 ぐっ、ぐっと一番奥を目指す。長い時間をかけ、ようやくの思いで互いの下半身がピタリとくっついた時、僕たちは顔を見合わせ、同時に噴き出した。

「汗かきすぎ」

「エウリーカだって」

「なんか必死すぎて、変な顔してるし」

「それは必死なんだから仕方ないよ。そういうエウリーカは」

「やだ、見ないで」

 顔を背けるエウリーカを追いかけ、軽く唇を触れ合わす。

「何とも、言えない」

「……何それ」

 怪訝そうな顔をするエウリーカを見て、ふっと笑みが零れた。

 そう。僕の知っている言葉では、とても表現できない。
 大雑把に言えば、とても綺麗だ。でもただ綺麗なだけじゃなくて、色っぽくて、無邪気で、可愛くて、艶があって、凛としていて、それでいて……ああ、だめだ。僕なんかの語彙力じゃあ、やっぱり言い表せない。
 ただ、綺麗だ。とても、綺麗だ。

 笑った僕につられたのか、エウリーカもふわっと笑った。

 エウリーカの表情一つ一つがいちいち綺麗で。僕の心臓を鷲掴みにして離さなくて。落ち着いたと思った衝動は簡単に引き戻される。

「……動いていい?」

「動かないと終わらないでしょ」

 冗談っぽく言われた『終わり』という言葉に胸が締め付けられる。
 ああ、そうか。終わってしまうのか。夢のようなエウリーカとの時間が。
 終わって、そして思い出になるのだ。

 僕がエウリーカの・・・・・・・・思い出になってしまう。

「……泣いてんの?」

「泣いてないよ」

「でも今」

「じゃあ、動くね」

「待って、あっん!ん、んんー」

 ゆっくりと腰を引き、打ち付ける。
 ばつん、と肌のぶつかる一際大きな音が部屋に響いた。
 エウリーカの中はもう僕の形を覚えたのか、さっきのような拒絶はない。それをいいことに、遠慮なく腰を打ち付ける。何度も、何度も。

「あっ!あっん!んっ!は、あっ」

 僕の動きに合わせてエウリーカが声を溢し、身体を揺らす。
 縋るように背中に爪を立て、ねだる様に足を絡ませる。
 荒い呼吸。悲鳴にも似た喘ぎ声、合間に呼ばれる僕の名前。

 その全てを脳裏に焼きつける。身体に刻み込む。そうしなければと思うのに実際はそんな余裕微塵もなくて。身体を駆け巡る快楽と衝動に身を任せ、いや支配され、僕はただただ必死になって腰を振っていた。

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