【R18】溺れる身体~そこに愛はない

遙くるみ

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神成

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 私の部屋に着き、玄関を閉めた瞬間、私は安田にのしかかる様にその場に押し倒した。そして、有無を言わさず唇で唇を塞ぐ。キッチンが併設された狭い廊下に仰向けに横たわる安田に馬乗りになって、無我夢中で唇を合わせた。息継ぎすらするのが惜しいほど、がむしゃらに安田を求める。それでも全然満たされなくてさらに舌を突き出すと、安田の手が私の肩を押し唇を離された。

「っふは、っはあ」

「がっつき過ぎ」

 抑制していた欲望が、自分の部屋ということで一気に解放され、自分でも制御できない。安田の言葉も理解できない位頭の中が沸いていて、そんな私を落ち着かせるようにか、安田が小さく笑った。

 いつもの仮面のようなつくり笑いじゃない、つい出てしまったというような素面の笑顔。
 その笑顔に胸が苦しい位締め付けられて、涙のようなものがこみ上げてきて、どうしようもなくなって。
 感情の行き場がなくなった私は、助けを求めるようにまた安田の唇に噛みついた。

「ふあっ、ああん!!」

 安田の手がそっと胸に触れただけなのに、ものすごい衝撃が全身を突き抜けた。もう我慢しなくていいと思ったら、とても駄目だった。自分の身体なのに、自分の言うことを全く聞いてくれない。安田が胸にその手を当てて、優しくなぞる。そんな些細な刺激だけで、今すぐにでもイってしまいそうだった。

「あっ、あっ、ふああ!」

「俺、送りに来ただけなんだけど」

 安田が何か言っているけど、全く頭に入ってこない。快感が安田の手から私の全身に駆け巡って、お腹の奥を熱く満たす。見下ろす安田の顔は、いつものように意地悪く目を細めているのに、どこか甘く、困っているようにも見えた。きゅんと、小さく胸が締まり、それすら気持ちよくって、くらくらする。心を愛撫されたような、そんな気持ちよさだった。

 自分の服を脱ぐのが先か、安田の服を脱がすのが先か、唇を合わせるのが先か。
 どれもしたくて気が焦って、結局何もできずに、私はひたすら安田の手がもたらす快感に喘いだ。安田が胸の尖りを優しく擦ると、腰が激しく疼く。無意識のうちにお尻を安田にこすりつけると、安田の舌打ちが聞こえた。

「ったく、聞いちゃいねーな。そんなに、欲しい?」

「ああっ!や、あっ!」

 安田が少し腰を浮かせると、花蕾が押されて全身が痺れた。気持ちよくって、死にそうになる。もっと、もっと、気持ちよくなりたくて、私は安田のジーンズに手をかけた。指先に力が入らなくて上手くボタンが外せないでいると、安田がその手をとり下へと誘導する。

「これが欲しいのかって、聞いてるんだけど」

 触れさせられたそこは、ジーンズ越しにも分かるほど熱く、硬く、張り詰めていた。
 ずっとずっと、求めていたいたものが私の手の中にあって、その存在を主張している。思わず、ゴクリと喉が鳴った。

「ほし、欲しいっ!」

 叫ぶようにそう答えると、安田は一回大きなため息をついてから、私の身体を下から引き寄せた。そして、深くねっとりと、口づけを交わす。さっきの様な動物的なものではなく、じっくりと味わって快楽を引き出すように、何度も何度も。
 頭の中がぼんやりと霞み、やがて、何も見えなくなる位真っ白になった。こうなってしまうともう、難しいことは何も考えられない。
 今、私の胸の中を埋め尽くしている感情は、歓喜だった。

 しばらく口づけを堪能していると、ふいに唇が離され、強引に立たされた。そのまま一直線にベッドに連れていかれ、今度は私がそこに押し倒される。これからここでされる行為に、期待で胸が震えた。

「本当はもっと焦らしてやろうと思ってたんだけどな。とりあえず今日はもういいや。俺も限界」

 安田が手際よく私の服を脱がせながら、ぼそぼそと何かを言っている。それでも、安田の顔は楽しそうだったから、その内容はさして気にならなかった。さっき向けられた、無関心な眼差しじゃなければ、怒っていようと嫌われていようと、何でもよかった。

 覆いかぶさる安田のジーンズを無理やり下げて、私も自分のジーンズを脱ぐ。その間に安田は自分の服も脱いでいて、あっという間に二人とも下着だけの姿になった。もうそれ以上待つことは出来ず、私は安田の身体に両腕を回し、その引き締まった腰に足を絡めた。安田の身体に恥部をこすりつけると、濡れてびしょびしょの下着が気持ち悪い。だけど、そんな些細なことに構ってる余裕はなかった。

「神成、ちょっと落ち着けって」

 息荒く安田の首元を必死に舐めて身体をこすりつける私を、あやす様にポンポンと安田が背中を叩いた。

「ううー、ふー、っふは、あ、お願い」

「わかった。ちゃんと入れてやるから」

「うあ、ああっ」

「一回イかせるか」

 舌打ちと同時に、びしょびしょに濡れそぼった蜜壺に指を指し込まれ、ぐちゅりぐちゅりとかき混ぜられた。安田はさっきのように焦らすことはなく、ピンポイントで私の良い所を突く。

「あ、ああっ、あああ!」

 あっという間に高みに押し上げられ、頭の中がはじけ飛んだ。目の前が真っ白になって真っ黒になって、星がいくつも流れている。

 それは経験したことのない、苦痛に感じるほどの激しい絶頂だった。

 はあはあと全力疾走した後のように荒い呼吸を整えることなく、安田に唇を寄せる。そうしないと、溺れて息が出来なくて、死んでしまいそうだった。安田は拒むことなく私を迎え入れてくれ、絡み合う舌が私の荒ぶった心を落ち着かせた。
 絶頂の余韻と、ようやく達することができた安堵感が私を満たす。堕ちた先にあった楽園の海に、優しく溺れる。

 あの時、安田と身体を繋げてからずっと、焦らされ燻ぶり高められ、どんどんと積み重ねてきたものが、ようやく今発散できた。でも、まだ足りない。秘めていたものが更に込み上げてきて、もっともっとと、貪欲に安田を求めている。
 ねっとりと唇を重ねながら薄目を開けると、安田はじっと私を見つめていた。安田の瞳の中にある『何か』に見つめられ、息が止まる。そして、居ても立っても居られなくなった私は、こみ上げる衝動に逆らうことなく、思いきり安田に抱きついた。

「ううっ!や、安田っ!」

「おい、大丈夫か?」

 そのまま身体を反転させ、安田に覆いかぶさる。
 安田!安田!安田!
 自分でも何がしたいのかわからないまま、心の中で何回も名前を呼んだ。
 本能の赴くままに。今の私のI.Qは原始生物と同レベルまで落ちていた。

 途端、頭がグラングラン揺れて、頭痛と共に急激に胃の中のものがせり上がってきた。冷汗がどっと噴き出し、寒気に襲われる。咄嗟に両手で口元をきつく抑えるも、それを止めることは叶わず。

「うっ、ぷ」

「ちょっ!おい!待て待て待て!」

 見下ろす安田が慌てて身体を起こし、私に手を伸ばす。そんな安田が珍しくって面白くって、気が弛んでしまったのがいけなかった。

 込み上げてくるものを、止めることが出来ず、私はそれを解放した。



 
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