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神成
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ムードもへったくれもない位性急にズボンを脱がし合い、お互い全裸になった状態でもつれ込むようにベッドへと倒れた。その勢いのままに唇を塞ぎ、どちらとともなく舌を絡める。息を吐いて息を呑みこむ。唇を食んで噛みつかれる。無我夢中になって繰り返したそれは、キスというより、生きるために必要な『呼吸』であり『食事』だった。
ある程度満たされてキスと呼べるくらい穏やかなものになると、安田が私の上に乗ろうと体勢を起こしたので、それを抑え込んで反対に安田の上に跨った。
「私がするっつってんの。言うことが聞けない駄犬は捨てるわよ」
真上から見下ろし、ぴしゃりと言い放つ。安田と私の間には、荒い呼吸に合わせて大きく上下する私の胸が見える。その先端は普段と形を変え、硬く尖り、妖しく安田を誘惑していた。
ごくり、とどちらとも分からない喉が鳴る音がした。
「はっ、きびしーな。動物愛護団体が黙ってねーぞ。ちゃんと最後まで面倒を見るのが飼い主の責任だろが。簡単に捨てんなよ」
安田の頭の横に囲うように手をついて、目を逸らさずに上からちゅっと唇を重ねた。一瞬離して、「簡単になんて捨てる訳ないじゃない」と吐き捨て、また唇を降らせる。ちゅっちゅっと触れるだけのキスをしながら薄く目を開けると、目の前にある安田の瞳が本当に捨てられた子犬のように震えているようで、それが面白くってまた唇を重ねた。
次第にキスが深く激しくなり、無意識のうちに硬く反り返った安田の剛直に下半身をすり合わせていた。膨れた花蕾をぐりぐり押しつけると、堪らなく気持ちがいい。まるで安田を使って自慰をしているような気にさえなる。すでに濡れそぼってびしょびしょのそこは、滑りが良すぎて、そのままするりと入ってしまいそうだった。
「……はあ、入れてー」
安田が気だるげなため息をつき、両手を交差させて目元を覆った。為すすべもなくベッドに横たわるその姿は、すっかり余裕がなくなってるようにも見える。ちょっとした悪戯心がむくむくと芽生え、私はこすりつけていた腰をすっと浮かせた。
「あ、忘れてた。そう言えば今日生理だったの」
「はあっ!!!?」
そう言った瞬間、覆っていた手を退けてガバッと安田が身体を起こした。見下ろしていた安田の顔がすごい勢いで目の前に迫り、私は反射で背をのけぞらせる。至近距離で穴が開くほどじっと見つめられること数秒。その間安田は、泣いてるような怒ってるような呆れてるような、とにかくとんでもなく間抜けな面をしていた。予想以上の安田のリアクションに、胸の内がスカッと晴れる。
「嘘。引っかかってバッカみたい」
普通に考えればすぐに嘘だと気づくことだ。生理中なのに誘うわけがないし、下着を脱ぐなんてもってのほかだ。
べっと小さく舌を出し、不敵に笑って見せれば、間抜け面で固まっていた安田の顔が、さらに間抜け面になる。英語で表現するなら最上級、間抜けストだ。
そして、やられたと言う様にフッと笑った。
「てめえ、言う様になったじゃねえかよ」
「誰かさんのお陰でね。ねえ、入れたい?」
「まあ、そりゃ」
「じゃあ、ちゃんと言って。言葉にしてお願いしなさい」
脱力して後ろ手で身体を支える安田に跨り、触れるか触れないかギリギリのところまで腰を落とす。安田の顎に人差し指を当て、くいっと上げると、安田がもどかしげに瞳を揺らした。
「ええー、まじ復讐じゃん、これ。女王様勘弁して」
「やられたらやり返す主義なの、私。百倍返しよ」
「ったく。どこの銀行員だよ、しかも最終回。なあ、頼むから入れさせて」
「却下。ちゃんとお願いしなきゃ、ダメ。もう一度」
人には言葉を強要したくせに、自分はそれから逃げるだなんて許さない。
そう視線に込めて見つめると、安田は困ったように目を細めた。その奥にある瞳は情欲と歯がゆさでゆらゆらと揺れている。そんな瞳に私がさせているのだと思うと、興奮でゾクゾクと身体が震えた。そして、お腹の奥が疼いてぎゅうっと引き締まる。蜜壺からはいやらしい蜜が後から後から溢れ出ていて、すでに太腿まで濡らしている。
その蜜を塗りたくるように安田の剛直に当て、ゆっくりと誘惑する様に、前後に腰を動かした。その度にぬちゃぬちゃと卑猥な水音が奏でられ、さらに蜜がこぼれる。
安田が一際大きく息を吐き、安田のお腹に手を当てていた私の腕をそっと取った。目線を上げると、泣き出しそうな何かに必死に耐えている安田と目が合い、観念したように熱い息を溢した。
「……入れたい。頼むから……怜奈」
「……あんた、ほんとズルい。最低」
ふっと目を逸らし、唇を噛む。
一回も呼んだことないくせに、よりにもよって今名前を呼ぶとか。本当、最低。
腰を浮かし、反り返ったものに手を添えて、狙いを定めるかのように上へと向けた。初めて触った安田のそれは、思った以上に大きくて、太くて、硬くて。私の蜜でびしょびしょに濡れながらも、とても熱かった。
とてつもなく卑猥で、妖艶で、逞しく男らしいそれに、私は思わず喉をごくりと鳴らし、舌なめずりした。
先端を蜜口に当て、躊躇なく腰を落とす。
「くっ、きつ。ちょ、神成。まだほぐしてねえし、ゴムも」
安田がなんか言ってるけど全部無視して更に腰を落とす。圧迫感がものすごいが、十分すぎるほど濡れているせいか痛みはなかった。一番太い先端部分をぐっと呑み込むと、その先はすんなり入った。それでもきつい。ふっと小さく息を吐き、ちらりと安田を見ると、耐えるようにぐっと眉を寄せ、口元を横にきつく引き結んでいた。
なにそれ、かーわい。
安田なのに全然安田らしくない、余裕の欠片もない必死過ぎる顔を見たら、無性に愛しさが込み上げてきた。
重力に逆らわず一気に腰を落とすと、安田のものがするんと全部埋まる。お腹の奥まで深く突き刺さり、苦しくって声が漏れた。
「ん、んんっ!!……はあ、入った。あっ」
「っく」
身体の位置を少しずらしただけで、中壁をぐりっと擦られ、全身がビリビリ痺れる。無意識にぎゅっと力を込めれば、安田が苦しそうに呻き、息を荒くした。
「ちょっ、まじヤバいから。くっ、中出しして困んのは、神成だろ」
お腹の上に両手を当てて安田の上に跨る私の手首を、安田がぎゅっと掴んだ。一回軽く腰を浮かせ、そして深く降ろす。再び奥を突かれ、私は大きな声を上げて背を反らせた。
やばい、気持ちいい。気持ちよすぎて、死にそう。
「ヤリチンのくせに、細かいこと気にするのね」
「くっ、は。だからこそ、だろが。本気じゃない相手にそんなリスクを負うヤリチンはいねーよ」
「ふふっ、なーるほど」
「はあっ。……一回、抜かせて。なあ」
そんなことは知っていたはずなのに、本気じゃない相手だと暗に言われているようで、つきんと胸が痛んだ。その胸の痛みを振り払うかのように、私は自分が気持ちよくなることだけに集中して、少しずつ抽送を激しくさせた。私が腰を振る度に、ぐちゅぐちゅと蜜が泡立つ音が聞こえる。男の上で自ら腰を振ってよがっている今の状況に興奮し、私はさらにその行為に夢中になった。
「おい、くっ。聞いてんのか?まじで、溜まってるから、余裕ねーんだって」
掴まれていた手に更に力が籠められ、そこで私はようやく薄目を開けた。安田は頭だけ起こして、咎めるような、懇願するような目で私を見ていた。それどころか私に許しを請い、救いを求めて縋っているかのようにも見える。
とにかく、安田が全力で何かを私に訴えかけている。その事実に満たされ、胸が震えた。
でも、まだだ。まだまだ許してあげない。もっと安田から余裕をなくして、何も考えられなくしてやりたい。
私の身体に、溺れて、死ね。
こちらを見る安田に見せつけるようにゆっくりと腰を引き上げ、抜けるぎりぎりの所でそれを止める。私の蜜口に安田の赤黒くぬらぬらと光った剛直が、キスをしているようだ。
いや逆か?安田のそれを私の蜜口が美味しそうにぱくりと含んで、キスをしている。
眩暈がしそうなほど妖艶で甘美なその光景に、こぽりとまた蜜が垂れたのが分かった。ぬちゃりぬちゃりとわざと音を出す様にゆっくりと腰を揺らし、安田を煽る。全部は挿れず、先端部分だけを含み、安田をじっくり追い詰める。安田はぎっと歯を食いしばり、恨みがましい視線を私に向けていた。
そんな安田を見て、私は一人ほくそ笑み悦に入った。
ああ、最高に楽しい。最高に気持ちいい。
私の腕を掴んでいた安田の手を引き、身体を起こさせる。そして安田の首に両手を回し囲い込むと、おでことおでこをこつんと合わせ、ニコリと社交的な笑みを浮かべた。
「いーの。子供ができたら責任もって結婚してもらうから」
安田の周りにいるようなあざとい女の真似をして、甘えた声でコテンと首を傾げて見せる。
「そしたら名実ともに正真正銘、あんたは私のモノよ。で、一生、絶対、離婚してやらないんだから」
そして、思いきり歯を見せて、ニカっと笑う。安田の目がみるみる大きくなり、これ以上ないってところで固まった。
まさに、目が点。
「ざまーみろ」と最大限の侮蔑と凌辱と親愛を込めてそう吐き捨てると、安田の瞳が大きく揺れた。遅れて、わなわなと肩が震え、しまいには全身が大きく揺れ、安田に乗る私の身体までも一緒になって揺れた。
震度でいうと、軽く五はいった。
「……く、くく、はははっ!やっぱ、最高だな。お前」
そして、思いきり抱き締められ、腰を激しく突き動かされる。もはや観測不能。
「あ、ああっ!」
完全に主導権を握っていたはずなのにあっという間に奪われ、ガンガンと下から腰を突き上げられる。急に激しくなった抽送に、私は呆気なく絶頂し、ぎゅうぎゅうと安田のものを締め付けた。それがまた気持ちよくって、またすぐに絶頂の波にさらわれる。そんな私の現状を知ってか知らずか、安田の抽送は止まることなく、これ以上はもう無理ってところまでガツガツ突いてくる。
内臓を押し上げられ、苦しくって涙が出る。でも苦しいのと同じくらい気持ちよくって、私は馬鹿みたいにただ喘いだ。安田が私のお尻をきつく引き絞り、ラストスパートとばかりに更に突き上げを激しくさせた。
「くっ、出る!」
「あ、ああああっ!や、ああっ!」
全身が激しく痙攣し、頭が真っ白になった。安田もどうやらイッたようで、私の肩におでこをつけて、はあはあと荒い息を整えている。激しい絶頂の余韻で身体に力が入らず、私も安田にもたれかかると、安田は私の背中に手をまわし支えてくれた。自然と繋がったまま抱き合う形となる。
なんだこれ、愛し合う二人みたい。本当は全然違うのに。
悲しいような嬉しいような気持ちが込み上げてきて、私はそれをごまかす様に安田の茶色い頭を撫でた。
しばらく無言でそうしていると、安田はふっと顔を上げ、多分無意識で、蕩けたように目を下げ笑った。
多分安田自身も知らないようなありのままの、素の安田を見せられ、痛い位胸が締め付けられる。
安田の顔なんて好きじゃなかった。
最近の女子がいかにも好きそうな、ただ顔の造作が整っているだけのイケメン。笑うと下がる目尻に、甘いマスク。
でも、それは取り繕った上っ面の仮面であって、こういう素面の何でもないような表情は、ものすごく好きかもしんない。ていうか、好きだ。
それを思い知らされて、照れ隠しに安田の頭をわしゃわしゃと撫でた。ていうか、ムカつく。
「ほんとにできたら責任取ってくれんの?」
安田が私の胸に頭をもたげて、私のお腹をするりと撫でた。
ぶっちゃけ子供ができてる可能性はゼロに近い。ないとも言い切れないが、つい二日前に生理は終わったばかりなので、多分できていないだろう。
でも、それを言って安心させてやるつもりはもちろんない。大いに悩んで、悔やめばいい。
本日二度目となるざまーみろを、心の中で吐き捨てた。
「何言ってんのよ。責任取るのは男のあんたでしょ?」
「一般的には、ね。なあ、ほんとに俺のこと貰ってくれんの?」
自信過剰ともいえるいつも安田とは程遠い、不安げでか細いその言い方に違和感を覚える。なんか、本当に捨てられて路頭に迷う子犬の様だ。
私は大きく息を吐いてから、私の胸にうずまる安田の顔をぎゅっと両手で包んで、こっちを向かせた。
「だから、あんたはもう私のモノだって言ってるじゃない。何回も同じこと言わせないで。馬鹿なの?」
しっかりと顔を固定して、安田の瞳を真っすぐに見据え、はっきりとそう口にする。
「……くっ、ふふ。そうだった」
どこか緊張して強張っていた顔がふっと和らぎ、安田はいつものようにくつくつと笑った。そのことに、私もほっと胸を撫で下ろした。
「なあ、もう一回していい?今度はちゃんと気持ちよくさせるから」
「もう疲れたから嫌。やるなら勝手にやって」
「つまり、自動翻訳すると騎乗位じゃなければいいってこと?」
「とんでもないポンコツの翻訳アプリね。もうやらないって言ってんのよ」
睨みながら安田のほっぺをぐいっと摘まむと、安田がへらっと笑った。
「おっけー、じゃあご希望通り疲れない様に、ゆっくりじっくり、気持ちよくさせるわ」
「全然違う!って、あっああん!」
背中に回っていた手がいつの間にか前に移動し、私の胸の尖りをきゅっと摘まんだ。さっきは全然触れられなかったそこは、ずっとお預けをくらっていたかのように敏感になっていて、全身に電気が走ったかのような快感が突き抜けた。
「ほら、怜奈は何もしなくていいから。気持ちいいことだけ、考えてれば」
「あっ、やあ、もう」
「ん、ここ?言えよ、どこがいいか。ふにゃふにゃのとろとろの、でろっでろにしてやるから。ほら、怜奈」
なんだ、でろっでろって。とぼやけた頭で一人ツッコむ。
くりくりと乳首を摘ままれ、耳元で甘く名前を呼ばれてしまえば、もう碌な抵抗もできそうになかった。
くそ、卑怯者。そう言ってやりたいのに、私の口は全然違う言葉を紡ぐ。
「あっ、ああっ。きもちー。そこ、もっと」
「はいはい、りょーかい」
身体をしならせて、甘えるようにそう言えば、安田がピンポイントで気持ちいい所を刺激する。
溺れさせようとしていたつもりが、やっぱり私が溺れている。
安田によって、この甘く、淫らで、穏やかな世界に。
まあ、それも悪くはない。
「ミイラ取りがミイラってやつ、ね」
涙で霞む視界の中、安田がフッと、諦めたように笑った。
【神成視点、完】
ある程度満たされてキスと呼べるくらい穏やかなものになると、安田が私の上に乗ろうと体勢を起こしたので、それを抑え込んで反対に安田の上に跨った。
「私がするっつってんの。言うことが聞けない駄犬は捨てるわよ」
真上から見下ろし、ぴしゃりと言い放つ。安田と私の間には、荒い呼吸に合わせて大きく上下する私の胸が見える。その先端は普段と形を変え、硬く尖り、妖しく安田を誘惑していた。
ごくり、とどちらとも分からない喉が鳴る音がした。
「はっ、きびしーな。動物愛護団体が黙ってねーぞ。ちゃんと最後まで面倒を見るのが飼い主の責任だろが。簡単に捨てんなよ」
安田の頭の横に囲うように手をついて、目を逸らさずに上からちゅっと唇を重ねた。一瞬離して、「簡単になんて捨てる訳ないじゃない」と吐き捨て、また唇を降らせる。ちゅっちゅっと触れるだけのキスをしながら薄く目を開けると、目の前にある安田の瞳が本当に捨てられた子犬のように震えているようで、それが面白くってまた唇を重ねた。
次第にキスが深く激しくなり、無意識のうちに硬く反り返った安田の剛直に下半身をすり合わせていた。膨れた花蕾をぐりぐり押しつけると、堪らなく気持ちがいい。まるで安田を使って自慰をしているような気にさえなる。すでに濡れそぼってびしょびしょのそこは、滑りが良すぎて、そのままするりと入ってしまいそうだった。
「……はあ、入れてー」
安田が気だるげなため息をつき、両手を交差させて目元を覆った。為すすべもなくベッドに横たわるその姿は、すっかり余裕がなくなってるようにも見える。ちょっとした悪戯心がむくむくと芽生え、私はこすりつけていた腰をすっと浮かせた。
「あ、忘れてた。そう言えば今日生理だったの」
「はあっ!!!?」
そう言った瞬間、覆っていた手を退けてガバッと安田が身体を起こした。見下ろしていた安田の顔がすごい勢いで目の前に迫り、私は反射で背をのけぞらせる。至近距離で穴が開くほどじっと見つめられること数秒。その間安田は、泣いてるような怒ってるような呆れてるような、とにかくとんでもなく間抜けな面をしていた。予想以上の安田のリアクションに、胸の内がスカッと晴れる。
「嘘。引っかかってバッカみたい」
普通に考えればすぐに嘘だと気づくことだ。生理中なのに誘うわけがないし、下着を脱ぐなんてもってのほかだ。
べっと小さく舌を出し、不敵に笑って見せれば、間抜け面で固まっていた安田の顔が、さらに間抜け面になる。英語で表現するなら最上級、間抜けストだ。
そして、やられたと言う様にフッと笑った。
「てめえ、言う様になったじゃねえかよ」
「誰かさんのお陰でね。ねえ、入れたい?」
「まあ、そりゃ」
「じゃあ、ちゃんと言って。言葉にしてお願いしなさい」
脱力して後ろ手で身体を支える安田に跨り、触れるか触れないかギリギリのところまで腰を落とす。安田の顎に人差し指を当て、くいっと上げると、安田がもどかしげに瞳を揺らした。
「ええー、まじ復讐じゃん、これ。女王様勘弁して」
「やられたらやり返す主義なの、私。百倍返しよ」
「ったく。どこの銀行員だよ、しかも最終回。なあ、頼むから入れさせて」
「却下。ちゃんとお願いしなきゃ、ダメ。もう一度」
人には言葉を強要したくせに、自分はそれから逃げるだなんて許さない。
そう視線に込めて見つめると、安田は困ったように目を細めた。その奥にある瞳は情欲と歯がゆさでゆらゆらと揺れている。そんな瞳に私がさせているのだと思うと、興奮でゾクゾクと身体が震えた。そして、お腹の奥が疼いてぎゅうっと引き締まる。蜜壺からはいやらしい蜜が後から後から溢れ出ていて、すでに太腿まで濡らしている。
その蜜を塗りたくるように安田の剛直に当て、ゆっくりと誘惑する様に、前後に腰を動かした。その度にぬちゃぬちゃと卑猥な水音が奏でられ、さらに蜜がこぼれる。
安田が一際大きく息を吐き、安田のお腹に手を当てていた私の腕をそっと取った。目線を上げると、泣き出しそうな何かに必死に耐えている安田と目が合い、観念したように熱い息を溢した。
「……入れたい。頼むから……怜奈」
「……あんた、ほんとズルい。最低」
ふっと目を逸らし、唇を噛む。
一回も呼んだことないくせに、よりにもよって今名前を呼ぶとか。本当、最低。
腰を浮かし、反り返ったものに手を添えて、狙いを定めるかのように上へと向けた。初めて触った安田のそれは、思った以上に大きくて、太くて、硬くて。私の蜜でびしょびしょに濡れながらも、とても熱かった。
とてつもなく卑猥で、妖艶で、逞しく男らしいそれに、私は思わず喉をごくりと鳴らし、舌なめずりした。
先端を蜜口に当て、躊躇なく腰を落とす。
「くっ、きつ。ちょ、神成。まだほぐしてねえし、ゴムも」
安田がなんか言ってるけど全部無視して更に腰を落とす。圧迫感がものすごいが、十分すぎるほど濡れているせいか痛みはなかった。一番太い先端部分をぐっと呑み込むと、その先はすんなり入った。それでもきつい。ふっと小さく息を吐き、ちらりと安田を見ると、耐えるようにぐっと眉を寄せ、口元を横にきつく引き結んでいた。
なにそれ、かーわい。
安田なのに全然安田らしくない、余裕の欠片もない必死過ぎる顔を見たら、無性に愛しさが込み上げてきた。
重力に逆らわず一気に腰を落とすと、安田のものがするんと全部埋まる。お腹の奥まで深く突き刺さり、苦しくって声が漏れた。
「ん、んんっ!!……はあ、入った。あっ」
「っく」
身体の位置を少しずらしただけで、中壁をぐりっと擦られ、全身がビリビリ痺れる。無意識にぎゅっと力を込めれば、安田が苦しそうに呻き、息を荒くした。
「ちょっ、まじヤバいから。くっ、中出しして困んのは、神成だろ」
お腹の上に両手を当てて安田の上に跨る私の手首を、安田がぎゅっと掴んだ。一回軽く腰を浮かせ、そして深く降ろす。再び奥を突かれ、私は大きな声を上げて背を反らせた。
やばい、気持ちいい。気持ちよすぎて、死にそう。
「ヤリチンのくせに、細かいこと気にするのね」
「くっ、は。だからこそ、だろが。本気じゃない相手にそんなリスクを負うヤリチンはいねーよ」
「ふふっ、なーるほど」
「はあっ。……一回、抜かせて。なあ」
そんなことは知っていたはずなのに、本気じゃない相手だと暗に言われているようで、つきんと胸が痛んだ。その胸の痛みを振り払うかのように、私は自分が気持ちよくなることだけに集中して、少しずつ抽送を激しくさせた。私が腰を振る度に、ぐちゅぐちゅと蜜が泡立つ音が聞こえる。男の上で自ら腰を振ってよがっている今の状況に興奮し、私はさらにその行為に夢中になった。
「おい、くっ。聞いてんのか?まじで、溜まってるから、余裕ねーんだって」
掴まれていた手に更に力が籠められ、そこで私はようやく薄目を開けた。安田は頭だけ起こして、咎めるような、懇願するような目で私を見ていた。それどころか私に許しを請い、救いを求めて縋っているかのようにも見える。
とにかく、安田が全力で何かを私に訴えかけている。その事実に満たされ、胸が震えた。
でも、まだだ。まだまだ許してあげない。もっと安田から余裕をなくして、何も考えられなくしてやりたい。
私の身体に、溺れて、死ね。
こちらを見る安田に見せつけるようにゆっくりと腰を引き上げ、抜けるぎりぎりの所でそれを止める。私の蜜口に安田の赤黒くぬらぬらと光った剛直が、キスをしているようだ。
いや逆か?安田のそれを私の蜜口が美味しそうにぱくりと含んで、キスをしている。
眩暈がしそうなほど妖艶で甘美なその光景に、こぽりとまた蜜が垂れたのが分かった。ぬちゃりぬちゃりとわざと音を出す様にゆっくりと腰を揺らし、安田を煽る。全部は挿れず、先端部分だけを含み、安田をじっくり追い詰める。安田はぎっと歯を食いしばり、恨みがましい視線を私に向けていた。
そんな安田を見て、私は一人ほくそ笑み悦に入った。
ああ、最高に楽しい。最高に気持ちいい。
私の腕を掴んでいた安田の手を引き、身体を起こさせる。そして安田の首に両手を回し囲い込むと、おでことおでこをこつんと合わせ、ニコリと社交的な笑みを浮かべた。
「いーの。子供ができたら責任もって結婚してもらうから」
安田の周りにいるようなあざとい女の真似をして、甘えた声でコテンと首を傾げて見せる。
「そしたら名実ともに正真正銘、あんたは私のモノよ。で、一生、絶対、離婚してやらないんだから」
そして、思いきり歯を見せて、ニカっと笑う。安田の目がみるみる大きくなり、これ以上ないってところで固まった。
まさに、目が点。
「ざまーみろ」と最大限の侮蔑と凌辱と親愛を込めてそう吐き捨てると、安田の瞳が大きく揺れた。遅れて、わなわなと肩が震え、しまいには全身が大きく揺れ、安田に乗る私の身体までも一緒になって揺れた。
震度でいうと、軽く五はいった。
「……く、くく、はははっ!やっぱ、最高だな。お前」
そして、思いきり抱き締められ、腰を激しく突き動かされる。もはや観測不能。
「あ、ああっ!」
完全に主導権を握っていたはずなのにあっという間に奪われ、ガンガンと下から腰を突き上げられる。急に激しくなった抽送に、私は呆気なく絶頂し、ぎゅうぎゅうと安田のものを締め付けた。それがまた気持ちよくって、またすぐに絶頂の波にさらわれる。そんな私の現状を知ってか知らずか、安田の抽送は止まることなく、これ以上はもう無理ってところまでガツガツ突いてくる。
内臓を押し上げられ、苦しくって涙が出る。でも苦しいのと同じくらい気持ちよくって、私は馬鹿みたいにただ喘いだ。安田が私のお尻をきつく引き絞り、ラストスパートとばかりに更に突き上げを激しくさせた。
「くっ、出る!」
「あ、ああああっ!や、ああっ!」
全身が激しく痙攣し、頭が真っ白になった。安田もどうやらイッたようで、私の肩におでこをつけて、はあはあと荒い息を整えている。激しい絶頂の余韻で身体に力が入らず、私も安田にもたれかかると、安田は私の背中に手をまわし支えてくれた。自然と繋がったまま抱き合う形となる。
なんだこれ、愛し合う二人みたい。本当は全然違うのに。
悲しいような嬉しいような気持ちが込み上げてきて、私はそれをごまかす様に安田の茶色い頭を撫でた。
しばらく無言でそうしていると、安田はふっと顔を上げ、多分無意識で、蕩けたように目を下げ笑った。
多分安田自身も知らないようなありのままの、素の安田を見せられ、痛い位胸が締め付けられる。
安田の顔なんて好きじゃなかった。
最近の女子がいかにも好きそうな、ただ顔の造作が整っているだけのイケメン。笑うと下がる目尻に、甘いマスク。
でも、それは取り繕った上っ面の仮面であって、こういう素面の何でもないような表情は、ものすごく好きかもしんない。ていうか、好きだ。
それを思い知らされて、照れ隠しに安田の頭をわしゃわしゃと撫でた。ていうか、ムカつく。
「ほんとにできたら責任取ってくれんの?」
安田が私の胸に頭をもたげて、私のお腹をするりと撫でた。
ぶっちゃけ子供ができてる可能性はゼロに近い。ないとも言い切れないが、つい二日前に生理は終わったばかりなので、多分できていないだろう。
でも、それを言って安心させてやるつもりはもちろんない。大いに悩んで、悔やめばいい。
本日二度目となるざまーみろを、心の中で吐き捨てた。
「何言ってんのよ。責任取るのは男のあんたでしょ?」
「一般的には、ね。なあ、ほんとに俺のこと貰ってくれんの?」
自信過剰ともいえるいつも安田とは程遠い、不安げでか細いその言い方に違和感を覚える。なんか、本当に捨てられて路頭に迷う子犬の様だ。
私は大きく息を吐いてから、私の胸にうずまる安田の顔をぎゅっと両手で包んで、こっちを向かせた。
「だから、あんたはもう私のモノだって言ってるじゃない。何回も同じこと言わせないで。馬鹿なの?」
しっかりと顔を固定して、安田の瞳を真っすぐに見据え、はっきりとそう口にする。
「……くっ、ふふ。そうだった」
どこか緊張して強張っていた顔がふっと和らぎ、安田はいつものようにくつくつと笑った。そのことに、私もほっと胸を撫で下ろした。
「なあ、もう一回していい?今度はちゃんと気持ちよくさせるから」
「もう疲れたから嫌。やるなら勝手にやって」
「つまり、自動翻訳すると騎乗位じゃなければいいってこと?」
「とんでもないポンコツの翻訳アプリね。もうやらないって言ってんのよ」
睨みながら安田のほっぺをぐいっと摘まむと、安田がへらっと笑った。
「おっけー、じゃあご希望通り疲れない様に、ゆっくりじっくり、気持ちよくさせるわ」
「全然違う!って、あっああん!」
背中に回っていた手がいつの間にか前に移動し、私の胸の尖りをきゅっと摘まんだ。さっきは全然触れられなかったそこは、ずっとお預けをくらっていたかのように敏感になっていて、全身に電気が走ったかのような快感が突き抜けた。
「ほら、怜奈は何もしなくていいから。気持ちいいことだけ、考えてれば」
「あっ、やあ、もう」
「ん、ここ?言えよ、どこがいいか。ふにゃふにゃのとろとろの、でろっでろにしてやるから。ほら、怜奈」
なんだ、でろっでろって。とぼやけた頭で一人ツッコむ。
くりくりと乳首を摘ままれ、耳元で甘く名前を呼ばれてしまえば、もう碌な抵抗もできそうになかった。
くそ、卑怯者。そう言ってやりたいのに、私の口は全然違う言葉を紡ぐ。
「あっ、ああっ。きもちー。そこ、もっと」
「はいはい、りょーかい」
身体をしならせて、甘えるようにそう言えば、安田がピンポイントで気持ちいい所を刺激する。
溺れさせようとしていたつもりが、やっぱり私が溺れている。
安田によって、この甘く、淫らで、穏やかな世界に。
まあ、それも悪くはない。
「ミイラ取りがミイラってやつ、ね」
涙で霞む視界の中、安田がフッと、諦めたように笑った。
【神成視点、完】
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