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悠馬
※episode ー 1
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「あ、それ俺も好き」
「え、本当?この人達あんまりメジャーじゃないのによく知ってるね」
「この前車のCMに曲使われてたじゃん?あれ聞いていいなーって思ってアルバム借りてハマった」
「ああ、それ!いい曲だよねー。私も好き」
「アルバムのジャケットもさ、なんつーか独特で。ああいうカオスっぽいんだけど虚無って感じの、俺好き」
「ぷぷ、何それ。でもなんか分かるかも。そうなんだよねー、彼らは曲だけじゃなくてそういう所も格好良くて、全部ひっくるめた世界観が、もう好き」
「歌詞もいい」
「うん。声もいい」
「わかる。腹に響くよな」
「ちなみに音楽に対する考え方とか生き方も好き」
「ちょっとぶっ飛んでる感じのな」
「そうそう。あっすいませーん!次、何頼む?」
「俺ウーロンハイ、濃いめで」
「おっけ。じゃあ、生中とウーロンハイの濃いめ、お願いします」
「あ、あとお茶漬けの鮭、一つ」
「もう〆頼むの?」
「〆じゃない。俺腹減ってんだよ。すきっ腹にあんま飲むと悪酔いするし」
「弱かったっけ?」
「弱くないけど、お前とだといつもより飲みすぎる傾向にあるから」
「何それ、私のせい?」
「そう。ただし、悪い意味ではなく」
「つまり?」
「あー、楽しい?」
「……楽しいんだ」
「……何だよ。お前は楽しくねーのかよ」
「すいません、私も楽しいです」
「ふっ、なんで謝んだよ。それにしても、音楽の好みまで一緒だとはな。お前、俺の好きなやつ、大抵好きだな」
「そうだね。不思議なことに」
「服のブランドとかさ、コーディネートとか、配色とか」
「シンプルかつスタイリッシュかつモノトーンな感じね」
「読んでる漫画も」
「歴史系、特に戦国時代の各武将の知略部分が大好物でございます」
「ピンポイントに合致してんだよな。映画だと、邦画の緩い感じのやつ」
「山も谷もオチもない、何を言いたいのかも伝わってこないやつ。大好き」
「くくっ、そうそれ。でも、なんでか頭から離れなくなるやつな。ラーメンだったら」
「豚骨醤油」
「おにぎりの具は」
「明太子」
「犬より」
「猫派。でも」
「「コーギーは尊い」」
「……ぷ、ふふ。あはは」
「もうここまできたらさ、俺が好きなやつイコールかすみの好きなやつで間違いないだろ」
「断言はできないけど、その可能性は高いよね。本当に不思議なことに」
「こんなに趣味とか合うやつなんていなかったから、そりゃ喋ってたら楽しいの当たり前じゃん?」
「なるほど。納得です」
「つーことは、好きなやつも多分一緒だと思うんだよな」
「……芸能人?」
「もだけど」
「歴史上の?」
「それもだけど」
「じゃあ、創造上の?」
「わざとか?」
「あははっ、ごめん。ちょっと調子に乗った」
「で?」
「へ?」
「お前は?」
「私?」
「好きなやつ。いるだろ?」
「……うん、いるよ。いっぱいいる」
「いっぱいね。じゃあ、そんな中で現実に存在して、かつ恋愛感情抱いてるやつは?」
「……いるね。一人」
「俺もいるんだよ。一人」
「でもさ、さすがに一緒じゃないと思うよ?」
「一緒だろ。目の前にいるっていうとこが」
「……」
「違った?」
「……違わない」
「ほら、やっぱりな。じゃあ、そう言うことで」
「どういうことで?」
「言わせる気かよ」
「言わせるでしょ、そりゃ」
「わかってるくせに」
「わかってるけど、こういう大事なことは、ちゃんと言葉にして言って欲しい」
「……」
「……だめ?」
「だからさ、えーと。あれだよ、うん。わかるだろ?つまり、俺と付き合って欲しい、ってことだよ……かすみのことが、好きだから」
「……ぷっ、ふふ、あはっ。はははっ!」
「おい、なんで笑うんだよ」
「ごめ、変な意味じゃなくて。ふふ、嬉しくて、笑いが止まらない」
「なんだそれ。で?」
「へ?」
「かすみは?同じなわけ?」
「……私も、同じかな」
「じゃあ、言葉にして言ってみ?」
「うわ、反撃だ。やられたらやり返す主義」
「そうそう、よくわかってんじゃん。やられっぱなしは性に合わないんだ。でも、そーいうんじゃなくて、普通に聞きたい。かすみの言葉で。だめか?」
「……ずるいなぁ」
「ずるいか?」
「ずるいよ。急に直球でこられたら、誤魔化せないじゃん。つまりね、私も……悠馬が好き。私と付き合ってください」
「ほら、一緒だった」
「仰る通りで」
「じゃあ、そういうことで」
「そういうことで?」
「この後、俺んち来る?」
「そういうことで、お邪魔しようかな」
※ ※ ※
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