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悠馬
無自覚と自覚
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クライアントからの急な変更も突発的なハプニングもなく、無事に案件を納品することができた。月・火曜に残業をすればいいという当初の目論見は外れ、結局木曜まで毎日終電で帰る日々が続いたから、無事とは言えないかもしれないが。
金曜の仕事終わり。プロジェクトチーム全体の打ち上げと称した飲み会が開かれた。皆んな憑き物が落ちたような、生き生きとした顔をしている。次の案件が始まるまでのしばしの休息なのだから、それも当たり前だろう。目の前にある枝豆と漬物をつまみながら、生ビールを呷る。あまり美味しいと感じないのが不思議だった。
「お疲れさん」とプロジェクトリーダーである上司にビールを注がれ、あれが大変だった、俺の機転が良かった、などのほぼ自慢話に適当に相槌を打つ。しばらくしたところで、ちょっとトイレに、と機会を見計らって席を立ち、一息つくため店の外で煙草を取り出した。
火をつけ、深く吸い込み、細く長く吐く。左手首にはめた時計のディスプレイを確認し、もう一度息を吐いた。ちょっと早いが終わってもいい頃合いだ。だと言うのに、饒舌に喋り続ける上司の様子から、一向に御開きになる気配はない。
そわそわに似たイライラが、沸々と湧き上がる。
「私も一緒にいい?」
声のする方を振り向くと、同僚の一人である狭山がいた。煙草の箱を俺に見せるようにカラカラ振り、俺の隣でそれを取り出す。
「なんか嫌なこと言われたの?」
「は?」
「顔。眉間に鉛筆挟めそう」
狭山が俺を指差し、煙草を咥えたまま、にししと歯を見せる。それを空中で振り払い、そっぽを向く。
「別に。何も言われてねーよ」
「ふーん。じゃあなんでそんな不機嫌な訳?」
「……この後用事あんだよ。だから、早く解散になって欲しいだけ」
イライラを含ませ、ボソリと吐き捨てる。聞こえなくてもいいくらいの声で言ったが、狭山にはちゃんと聞こえていたらしい。「へえ!あんたが!珍しい!」とやたらでかい声を弾ませた。
楽しげな笑みを浮かべる狭山を丸無視し、わざとらしく舌打ちして二本目の煙草を取り出す。
「彼女できた?」の質問に「違う」と速攻で否定をし、「じゃあ何の用事?」とさらに問い詰められ、「別に関係ねーだろ」と答えた。
「あーやーしーい。彼女じゃなくても、やっぱ女だ」
何を言ったって好き勝手に解釈するのだ。もう何も言うまいと、口を閉じる。
「ビンゴかー。おめでとう!……って、言いたいとこだけど、柏木ちゃんが可哀想だしなぁ。うーん、素直に祝えない。……あれ、え?まさか相手は柏木ちゃんってこと、ないよね?」
「……誰だよ、その柏木ちゃんって」
狭山の口から心当たりのない名前が発され、ついつい反応してしまう。狭山は一人百面相をしてから、最終的に残念そうな顔で俺を見た。
「つまり、柏木ちゃんじゃないってことね。いやいや、それより!あんた柏木ちゃん覚えてないの?前々回一緒のチームにいたでしょが!小ちゃくて可愛い感じのTHE・女子が」
ヒントを頼りに、記憶を巡らせてみる。そう言われてみると、柏木ちゃんらしき人物が一人思い浮かぶ。が、全然確証は持てない。つーか、どうでもいい。
「はあ、なんかもう。柏木ちゃんが可哀想過ぎて、私が泣きそう。だからこんなポンコツ男はやめておけって言ったのに」
誰がポンコツだ、と反論したくなるがそれを呑み込む。余計なことを言ってこれ以上面倒臭いことになるのは勘弁だ。
また時計を見る。さっきから五分程しか進んでない。意図せず、深い溜息が漏れた。
何でもいいしどうでもいいから、さっさと帰りたい。待たせているだろう相手の顔を思い浮かべると、見えないストレスが胸の中にどんどん溜まっていき、全身にじんわりと重く広がっていくようだ。
「なんか、本当に帰りたそうだねぇ」
隣で狭山が苦笑する。それに対して、本当に帰りたいんだよ、と心の中で同意する。
「もう抜けちゃえば?私が適当に言っといてあげるから」
「……いいのか?」
狭山の言葉に思わず食いつくと、びっくりした顔をされた。
「……はぁ。いーよいーよ!いっそこのままドロンしちゃって!」
狭山が呆れたように息を吐き、手で俺を払う。沈んだ気持ちがじわじわと高揚していく。
「そんなさー、不機嫌そうな顔から一転嬉しそうな顔されちゃったらさー、もうダメなんて言えないでしょ。これ、貸しだから。今度ちゃんと返してね。ついでに、その相手も誰かちゃんと教えてね。ほら、面倒な人に見つかる前にさっさと行きなって」
肩をバシンと叩かれ、その勢いで足を前に出す。一歩踏み出したらもう、自然と身体が動いていた。
「……狭山、さんきゅー。後は頼む」
足を止め、振り返る。狭山は呆れたような笑みを浮かべ、軽く挙げた右手を払った。
※ ※
停車した電車の扉が開ききるのを待たずに飛び出す。二段飛ばしで階段をのぼり、二段飛ばしで階段を下りる。降りた乗客の中で一番に改札を抜けると、すぐにその姿が目に入った。
「……かすみ!」
かすみがハッと頭を上げ、俺を視界に捉えると同時にふわりと笑った。
「……っ。ごめん、遅くなった」
「いや、ちょっと早い位だよ。ぷぷ、そんなに焦って走ってこなくてもいーのに。私が怒ってると思った?」
揶揄い半分でそう言われ、「いや」と首を振る。かすみが怒ってるかもなんて微塵も思ってなかった。ただ、いつもよりも遅い時間にかすみを駅で待たせたくなかっただけで。いつもはもっと賑わう改札前に一人ポツンと壁側に佇むかすみを見て、気がついたら走ってた。らしい。完全に無意識だった。
いつも夕飯を買いに寄るコンビニを素通りし、赤信号にヤキモキしつつ、最短距離で家路につく。玄関の扉を閉めたと同時に、後ろからかすみを抱きしめた。
「!?……え、え?悠馬?ちょ」
両手でかすみをすっぽりと囲い、身を屈めてうなじに顔を埋める。首筋を隠す柔らかな毛束を鼻で押し退け、ゆっくりと呼吸を繰り返す。すぅーっと鼻先から奥、頭の天辺に突き抜け、そして浸透圧のように全身にじわりと広がっていく。
「……どーしたの?」
かすみは暫くじたばたもがいていたか、観念したのか動きが止まった。回した手に、そっとかすみのそれが重ねられる。
かすみを見た時から、いや。帰りの電車内、飲み会の最中からずっと。今日仕事が終わってすぐ、朝目覚めた時から、昨日から、先週かすみと別れた直後から。
こうしたかった。多分ずっと、こうしたくてたまらなくて、早く家に帰りたかった。かすみに、会いたかった。
「ゆーま?」
何も言わない俺を不思議に思ったかすみが、首を捻る。閉じていた瞼を開け、俺を伺うかすみと目を合わせる。かすみの瞳が、僅かに揺れている。薄く開いた口元から、熱い吐息が漏れる。少しでも身動ぎすれば、俺の鼻先がかすみの頬に触れる距離。何かを探る様に視線を交え、何もせずに身体を離した。
張り詰めていた空気が、ふっと和らぐ。
「シャワー、入るか」
「……あ、う、うん。そーだね。入ろっか。あ、じゃあ私先に」
「一緒に」
「へ?」
「時間遅いし、面倒だから一緒に入ろ」
※ ※
「からだ洗うだけ、って言った」
「うん、だから洗ってる」
「全然手があらっうひゃっ、ちょ、やだ」
かすみの声が狭い浴室に反響する。
掌いっぱいに乗せた泡を、かすみの身体全体に滑らせていく。首筋、肩、背中、腰、お腹、脇。後ろから両胸を包み込み、指でかりかりと乳首をひっかく。
「ん、ふう、嘘つきっ。おっきいの、当たってる」
「うん、それは仕方ない」
悪びれることなくわざと尻の窪みに押し当てると、大した力を入れなくてもぬぽりとそこに招き入れられた。泡で滑りやすくなったそこを数度擦る。
「っん、はぁっやあ、それ、んふぅ」
かすみが気持ちよさそうに腰をくねらせ、壁にもたれかかる。自然尻が突き出た形になり、それを良いことにさらに腰を前後させる。
中程の締め付けはないが、これはこれですごく気持ちいい。いつまでもこうして揺らしていたくなる。でも、すぐそこで期待に涎を垂らしているだろう卑猥な口に突っ込んでしまいそうで、流石にそれはマズイ自覚はある。マズイと思ってるのに、腰が止まらない。むしろ、このまま事故を装って入れるのも……なんて危険思考が頭をよぎり始めた。
「あっ、わぷっ」
すんでの所で理性が勝り、蛇口をひねる。いきなり上から降り注ぐシャワーに驚いたかすみが、大きな声と共に飛び跳ねた。その大袈裟すぎるリアクションに、思わず噴き出す。
「ビビりすぎ。洗った後は流すのが当たり前だろ?」
くつくつと笑いながらシャワーヘッドを持って、かすみの身体にかけてやる。泡が水と共に下へ下へと流れていき、艶かしい裸体だけが目の前に残る。かすみは何か言いたそうにジト目で俺を睨み、可愛く唇を尖らせた。
「誰のせいだと」
「かすみのせいだろ?」
「な!なんで私!?ゆ、ゆーまが変な風に触ってくるから……も、もう知らない!」
顔を赤く染めあげて、かすみが俺を甘く咎める。手を伸ばし、その身体を腕の中に囲い入れた。そのまま、回した腕に力を込める。
そんなもの、かすみのせいに決まってる。ただ洗うだけで終わらせてくれない、かすみがいけない。
「早く、部屋いこ」
抗議らしきものをしていたかすみの身体がピタリと止まる。そして、俺の胸の中で、小さく「うん」と頷いた。
金曜の仕事終わり。プロジェクトチーム全体の打ち上げと称した飲み会が開かれた。皆んな憑き物が落ちたような、生き生きとした顔をしている。次の案件が始まるまでのしばしの休息なのだから、それも当たり前だろう。目の前にある枝豆と漬物をつまみながら、生ビールを呷る。あまり美味しいと感じないのが不思議だった。
「お疲れさん」とプロジェクトリーダーである上司にビールを注がれ、あれが大変だった、俺の機転が良かった、などのほぼ自慢話に適当に相槌を打つ。しばらくしたところで、ちょっとトイレに、と機会を見計らって席を立ち、一息つくため店の外で煙草を取り出した。
火をつけ、深く吸い込み、細く長く吐く。左手首にはめた時計のディスプレイを確認し、もう一度息を吐いた。ちょっと早いが終わってもいい頃合いだ。だと言うのに、饒舌に喋り続ける上司の様子から、一向に御開きになる気配はない。
そわそわに似たイライラが、沸々と湧き上がる。
「私も一緒にいい?」
声のする方を振り向くと、同僚の一人である狭山がいた。煙草の箱を俺に見せるようにカラカラ振り、俺の隣でそれを取り出す。
「なんか嫌なこと言われたの?」
「は?」
「顔。眉間に鉛筆挟めそう」
狭山が俺を指差し、煙草を咥えたまま、にししと歯を見せる。それを空中で振り払い、そっぽを向く。
「別に。何も言われてねーよ」
「ふーん。じゃあなんでそんな不機嫌な訳?」
「……この後用事あんだよ。だから、早く解散になって欲しいだけ」
イライラを含ませ、ボソリと吐き捨てる。聞こえなくてもいいくらいの声で言ったが、狭山にはちゃんと聞こえていたらしい。「へえ!あんたが!珍しい!」とやたらでかい声を弾ませた。
楽しげな笑みを浮かべる狭山を丸無視し、わざとらしく舌打ちして二本目の煙草を取り出す。
「彼女できた?」の質問に「違う」と速攻で否定をし、「じゃあ何の用事?」とさらに問い詰められ、「別に関係ねーだろ」と答えた。
「あーやーしーい。彼女じゃなくても、やっぱ女だ」
何を言ったって好き勝手に解釈するのだ。もう何も言うまいと、口を閉じる。
「ビンゴかー。おめでとう!……って、言いたいとこだけど、柏木ちゃんが可哀想だしなぁ。うーん、素直に祝えない。……あれ、え?まさか相手は柏木ちゃんってこと、ないよね?」
「……誰だよ、その柏木ちゃんって」
狭山の口から心当たりのない名前が発され、ついつい反応してしまう。狭山は一人百面相をしてから、最終的に残念そうな顔で俺を見た。
「つまり、柏木ちゃんじゃないってことね。いやいや、それより!あんた柏木ちゃん覚えてないの?前々回一緒のチームにいたでしょが!小ちゃくて可愛い感じのTHE・女子が」
ヒントを頼りに、記憶を巡らせてみる。そう言われてみると、柏木ちゃんらしき人物が一人思い浮かぶ。が、全然確証は持てない。つーか、どうでもいい。
「はあ、なんかもう。柏木ちゃんが可哀想過ぎて、私が泣きそう。だからこんなポンコツ男はやめておけって言ったのに」
誰がポンコツだ、と反論したくなるがそれを呑み込む。余計なことを言ってこれ以上面倒臭いことになるのは勘弁だ。
また時計を見る。さっきから五分程しか進んでない。意図せず、深い溜息が漏れた。
何でもいいしどうでもいいから、さっさと帰りたい。待たせているだろう相手の顔を思い浮かべると、見えないストレスが胸の中にどんどん溜まっていき、全身にじんわりと重く広がっていくようだ。
「なんか、本当に帰りたそうだねぇ」
隣で狭山が苦笑する。それに対して、本当に帰りたいんだよ、と心の中で同意する。
「もう抜けちゃえば?私が適当に言っといてあげるから」
「……いいのか?」
狭山の言葉に思わず食いつくと、びっくりした顔をされた。
「……はぁ。いーよいーよ!いっそこのままドロンしちゃって!」
狭山が呆れたように息を吐き、手で俺を払う。沈んだ気持ちがじわじわと高揚していく。
「そんなさー、不機嫌そうな顔から一転嬉しそうな顔されちゃったらさー、もうダメなんて言えないでしょ。これ、貸しだから。今度ちゃんと返してね。ついでに、その相手も誰かちゃんと教えてね。ほら、面倒な人に見つかる前にさっさと行きなって」
肩をバシンと叩かれ、その勢いで足を前に出す。一歩踏み出したらもう、自然と身体が動いていた。
「……狭山、さんきゅー。後は頼む」
足を止め、振り返る。狭山は呆れたような笑みを浮かべ、軽く挙げた右手を払った。
※ ※
停車した電車の扉が開ききるのを待たずに飛び出す。二段飛ばしで階段をのぼり、二段飛ばしで階段を下りる。降りた乗客の中で一番に改札を抜けると、すぐにその姿が目に入った。
「……かすみ!」
かすみがハッと頭を上げ、俺を視界に捉えると同時にふわりと笑った。
「……っ。ごめん、遅くなった」
「いや、ちょっと早い位だよ。ぷぷ、そんなに焦って走ってこなくてもいーのに。私が怒ってると思った?」
揶揄い半分でそう言われ、「いや」と首を振る。かすみが怒ってるかもなんて微塵も思ってなかった。ただ、いつもよりも遅い時間にかすみを駅で待たせたくなかっただけで。いつもはもっと賑わう改札前に一人ポツンと壁側に佇むかすみを見て、気がついたら走ってた。らしい。完全に無意識だった。
いつも夕飯を買いに寄るコンビニを素通りし、赤信号にヤキモキしつつ、最短距離で家路につく。玄関の扉を閉めたと同時に、後ろからかすみを抱きしめた。
「!?……え、え?悠馬?ちょ」
両手でかすみをすっぽりと囲い、身を屈めてうなじに顔を埋める。首筋を隠す柔らかな毛束を鼻で押し退け、ゆっくりと呼吸を繰り返す。すぅーっと鼻先から奥、頭の天辺に突き抜け、そして浸透圧のように全身にじわりと広がっていく。
「……どーしたの?」
かすみは暫くじたばたもがいていたか、観念したのか動きが止まった。回した手に、そっとかすみのそれが重ねられる。
かすみを見た時から、いや。帰りの電車内、飲み会の最中からずっと。今日仕事が終わってすぐ、朝目覚めた時から、昨日から、先週かすみと別れた直後から。
こうしたかった。多分ずっと、こうしたくてたまらなくて、早く家に帰りたかった。かすみに、会いたかった。
「ゆーま?」
何も言わない俺を不思議に思ったかすみが、首を捻る。閉じていた瞼を開け、俺を伺うかすみと目を合わせる。かすみの瞳が、僅かに揺れている。薄く開いた口元から、熱い吐息が漏れる。少しでも身動ぎすれば、俺の鼻先がかすみの頬に触れる距離。何かを探る様に視線を交え、何もせずに身体を離した。
張り詰めていた空気が、ふっと和らぐ。
「シャワー、入るか」
「……あ、う、うん。そーだね。入ろっか。あ、じゃあ私先に」
「一緒に」
「へ?」
「時間遅いし、面倒だから一緒に入ろ」
※ ※
「からだ洗うだけ、って言った」
「うん、だから洗ってる」
「全然手があらっうひゃっ、ちょ、やだ」
かすみの声が狭い浴室に反響する。
掌いっぱいに乗せた泡を、かすみの身体全体に滑らせていく。首筋、肩、背中、腰、お腹、脇。後ろから両胸を包み込み、指でかりかりと乳首をひっかく。
「ん、ふう、嘘つきっ。おっきいの、当たってる」
「うん、それは仕方ない」
悪びれることなくわざと尻の窪みに押し当てると、大した力を入れなくてもぬぽりとそこに招き入れられた。泡で滑りやすくなったそこを数度擦る。
「っん、はぁっやあ、それ、んふぅ」
かすみが気持ちよさそうに腰をくねらせ、壁にもたれかかる。自然尻が突き出た形になり、それを良いことにさらに腰を前後させる。
中程の締め付けはないが、これはこれですごく気持ちいい。いつまでもこうして揺らしていたくなる。でも、すぐそこで期待に涎を垂らしているだろう卑猥な口に突っ込んでしまいそうで、流石にそれはマズイ自覚はある。マズイと思ってるのに、腰が止まらない。むしろ、このまま事故を装って入れるのも……なんて危険思考が頭をよぎり始めた。
「あっ、わぷっ」
すんでの所で理性が勝り、蛇口をひねる。いきなり上から降り注ぐシャワーに驚いたかすみが、大きな声と共に飛び跳ねた。その大袈裟すぎるリアクションに、思わず噴き出す。
「ビビりすぎ。洗った後は流すのが当たり前だろ?」
くつくつと笑いながらシャワーヘッドを持って、かすみの身体にかけてやる。泡が水と共に下へ下へと流れていき、艶かしい裸体だけが目の前に残る。かすみは何か言いたそうにジト目で俺を睨み、可愛く唇を尖らせた。
「誰のせいだと」
「かすみのせいだろ?」
「な!なんで私!?ゆ、ゆーまが変な風に触ってくるから……も、もう知らない!」
顔を赤く染めあげて、かすみが俺を甘く咎める。手を伸ばし、その身体を腕の中に囲い入れた。そのまま、回した腕に力を込める。
そんなもの、かすみのせいに決まってる。ただ洗うだけで終わらせてくれない、かすみがいけない。
「早く、部屋いこ」
抗議らしきものをしていたかすみの身体がピタリと止まる。そして、俺の胸の中で、小さく「うん」と頷いた。
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