12 / 35
悠馬
※episodeー4
しおりを挟む※ ※
「美味かった?」
「うん、すっごく美味しかった!人気なの納得。ここ、予約取るのとか大変だったでしょ?」
「早めに電話したのに結局当日は取れなくて平日になっちゃったけどな」
「ううん、そんなの全然いい。悠馬がそうしようとしてくれた気持ちだけで嬉しい。本当にありがとう」
「そか、なら良かった。いつも安いとこしか連れてけないからな」
「悠馬と行くいつものラーメン屋も定食屋も大好きだよ。安くて美味しいの、最高じゃん!あー、思い出したら食べたくなってきた。こってり濃厚な豚骨醤油ラーメン。次はそこ行こう!あ、やっぱり悠馬のつくった麻婆豆腐が食べたい。ニンニクと生姜たっぷりの、くっさいやつ」
「ふっ、褒められてんのか貶されてんのか、わかんねーよ」
「すっごい美味しいって、褒めてるに決まってるでしょ。回鍋肉でも青椒肉絲でもいーな。悠馬のつくる中華は何でも美味しいから。ね、明日食べたい。つくってよ」
「はいはい。じゃあ、かすみ好みのニンニク増し増しの臭いやつな。それより、サングリア気に入ったならもう一回頼めば?」
「え、いいの?うーん、でも流石に飲みすぎたし、やめておこうかな。お腹いっぱいだよ」
「そう?遠慮しないで頼めよ。誕生日なんだしさ、っと。そーだ、忘れるとこだった。はい、これ」
「これ……プレゼント?開けてもいいの?」
「もちろん」
「……お財布だ。可愛い」
「ネイビーとブラックで悩んだんだけど、俺だったらブラックかなーと思って。当たってる?」
「え?う、うん。そうだね、私もブラックかな」
「ん、良かった。かすみが好きそうなのってほぼ俺の好きなもんだから、選ぶ時楽で助かるよ」
「お財布選んだのは?」
「前財布欲しいって言ってたじゃん。だから。あれ、違った?」
「ううん、違くないよ。ありがとう、大事にするね」
「うん、まあ。それなりに使ってくれると嬉しいかな。っと、そろそろ行くか?何かデザートとか食べる?」
「あ、うん。もう何も頼んでないんだよね?じゃあ、出る?」
「そだな。出るか」
「悠馬、ご馳走様でした。素敵なディナーをありがとう」
「どーいたしまして。はあー、来週から社会人とか、憂鬱だなー」
「もう、やめてよー。今すっごく気持ちよく余韻に浸ってたのに、一気に現実に引き戻されちゃった。はあ、本当だよね。上手くやってけるか、不安しかないよ」
「かすみは大丈夫だろ。人当たりいいし、皆に可愛がられるタイプじゃん」
「そんなことないよ。仮にそうだとしても、そう思われるように振る舞ってるだけで、本当は人見知りだもん。悠馬ほどじゃないけど」
「確かに。俺は人見知りっていうより、人付き合いが苦手っていう方が近いけど。今まではさ、関わりたくないやつは無視してればよかったのに、社会人はそうもいかないもんなー。めんどくせ」
「おおー、悠馬がそんなこと言うなんて!てっきり会社に入っても同じスタンスでいくものだと」
「俺だってそん位の分別はついてるわ。ま、あんまりにもダメそうなら転職してもいーし。最初位は俺らしくなく頑張ってみようかと」
「やる気の悠馬なんて、珍しい」
「うっせ」
「そうだよね。頑張るしかないよね。うん」
「だから、かすみはそんなん心配しなくても普通にしてりゃ大丈夫だって。なにがそんなに不安なんだ?」
「不安だよ。仕事もだけど、悠馬と会えなくなっちゃったりとか。悠馬のとこ、可愛い女の子多そうだし」
「……は?そんなこと?」
「そんなこと、って。悠馬は不安じゃないの?」
「全然」
「ふーん。じゃあさ、私の周りに同僚のイケメンがいて、教育係にイケメンの先輩がついて、取引先の相手がイケメンだとしても、不安にならない?」
「ならないよ」
「なら、そのイケメンが皆私を口説いてきたとしても?」
「なんだそりゃ。つーかそもそも、かすみイケメン好きじゃないじゃん」
「そういうことを言ってるんじゃないの。悠馬はどう思うかって聞いてるの」
「別に気にならないけど。かすみは俺と付き合ってんのに他の男になびく様なこと、ないだろ?」
「……それは、まあ、そうだけど」
「俺も」
「え?」
「周りの人間がどうであれ、俺が付き合ってんのはかすみだし、好きなのもかすみなんだから。仮にすっごい可愛い子が同僚で、万が一俺に好意を寄せてきたとしても、どうこうなることなんてない。つまり、不安になることなんてないってこと。俺の言ってる事、信じられない?」
「悠馬のこと、信じられないとかじゃないよ。ただ、やっぱ不安なの」
「不安になったら、すぐに会いに来るから。とりあえず、最初の週末は俺んちでゆっくりだらだらして過ごそうぜ。仕事の愚痴をつまみに飲んだくれてもいーし。な?」
「うん……そうだね。ありがとう、悠馬。はあ、いつもこんなことばっか言ってごめん。いい加減面倒臭いよね、呆れるよね」
「呆れねーよ。不安なことは溜め込まずに言えっていつも言ってんじゃん。ほら、帰ろーぜ。帰って早くエッチしよ」
「……ばか。外でそういうこと大っぴらに言わないで」
「うん、ごめん。でもしたい。だめ?」
「……いーよ。でも、今日はいっぱいキスしたり、ぎゅってしながらゆっくりしたい。だめ?」
「ふっ、もちろん。いーよ」
※ ※ ※
10
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する
花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家
結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。
愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる