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大好きな幼馴染が勇者になったので
アン(5)
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村を出てから2年が過ぎた。
時間が経つのは早いもので15歳だった私は17歳になっていた。
あの後、二人で王都に向かい一緒に旅をする3人と合流し、私達の魔王を倒す旅は始まった。
私は皆の荷物を持ち、薪を集め火を起こし、炊事洗濯、テントの設営、町につけば宿を取り、魔物に出会えば必死に隠れ、好きな時にヒューゴに抱かれ、紆余曲折あったけど最終的には魔王を見事倒すことができ(もちろん私は隠れていただけで何もしていないんだけど)、そして今に至る。
ここは王城で、今大広間では祝賀パーティーが開かれている最中だ。
主役はもちろん、ヒューゴ達4人。
ヒューゴ専属の性欲処理係であるただの村娘は、もちろん参加することはできない。
そして私は今、ヒューゴのための控え室で自分の荷物をまとめていた。
このままこっそり城を抜け出し、村へ帰るつもりだ。
ーー世界はとても広かった。
見たことのない風景、初めて出会う人、食べ物、建築物、全く違う文化。
私は村の外を知らない、井の中の蛙だった。
初めて体験することばかりの日々は、とても新鮮で、刺激的で、とても楽しかった。村と違って、外の世界はキラキラと眩しいくらいに光輝いていて、自分の世界がいかに狭く浅はかだったのか、嫌というほど思い知らされた。
それでも、ヒューゴ以上に格好いい人はいなかった。
ヒューゴと初めて結ばれたときは、嬉しくて涙が溢れて止まらなかった。
私の都合なんて一切お構いなしに、ヒューゴのやりたい時やりたいように抱かれる日々はまるで夢のようだった。
大好きなヒューゴの性欲をぶつけられ、私で解消してもらえるなんて光栄すぎる。そのことに何の不満もなかった。
ーーけれど。
今頃祝賀パーティーではヒューゴとこの国の第二王女の婚約が発表されているんだろう。
魔王を倒し世界を救った勇者と美しいお姫さま。何て素敵な響きだろう。それこそ、誰もが憧れる御伽噺のようだ。
ついに私の役目も終わってしまったということ。
結婚してしまうのなら、もうヒューゴと一緒にいることはできない。性欲処理係なんて必要ない。
ううん、それはヒューゴにとっての話で、私にとって重要なのはそこじゃない。
仲睦まじいお似合いの二人を目にしたら、多分私の心はバラバラになってしまうだろう。それはもう、跡形も無く、木っ端微塵に。
旅に出る前もヒューゴのことはもちろん大好きだった。
でも、今はその時とは比べられない位、もっともっと好きになっていた。好きになりすぎて苦しい程に、愛してしまっていた。
見返りなんて何も求めていなかったのに、今の私はヒューゴのことを独占したいと思ってる。私のことを見てほしいと、私以外の人と身体を重ねてほしくないと思っている。
自分の中の本当の想いに気付いたとき、私は愕然とした。
もう、ただの性欲処理係ではいられない。そう、はっきりと思ってしまった。
それでも旅の間、ヒューゴは私以外の人とはそういうことをしなかったし、相変わらず私に対して意地悪で口も悪かったけど、根っこの部分は優しかった。私に酷いことはしなかったし、私の身体を気にしてくれていた。
でも、それも今日で終わり。
これ以上ヒューゴの側にはいられない。
ずっとずっと覚悟していたつもりだったけど、いざその時が訪れると、悲しくて悲しくて目の前が真っ暗になった。
時間が経つのは早いもので15歳だった私は17歳になっていた。
あの後、二人で王都に向かい一緒に旅をする3人と合流し、私達の魔王を倒す旅は始まった。
私は皆の荷物を持ち、薪を集め火を起こし、炊事洗濯、テントの設営、町につけば宿を取り、魔物に出会えば必死に隠れ、好きな時にヒューゴに抱かれ、紆余曲折あったけど最終的には魔王を見事倒すことができ(もちろん私は隠れていただけで何もしていないんだけど)、そして今に至る。
ここは王城で、今大広間では祝賀パーティーが開かれている最中だ。
主役はもちろん、ヒューゴ達4人。
ヒューゴ専属の性欲処理係であるただの村娘は、もちろん参加することはできない。
そして私は今、ヒューゴのための控え室で自分の荷物をまとめていた。
このままこっそり城を抜け出し、村へ帰るつもりだ。
ーー世界はとても広かった。
見たことのない風景、初めて出会う人、食べ物、建築物、全く違う文化。
私は村の外を知らない、井の中の蛙だった。
初めて体験することばかりの日々は、とても新鮮で、刺激的で、とても楽しかった。村と違って、外の世界はキラキラと眩しいくらいに光輝いていて、自分の世界がいかに狭く浅はかだったのか、嫌というほど思い知らされた。
それでも、ヒューゴ以上に格好いい人はいなかった。
ヒューゴと初めて結ばれたときは、嬉しくて涙が溢れて止まらなかった。
私の都合なんて一切お構いなしに、ヒューゴのやりたい時やりたいように抱かれる日々はまるで夢のようだった。
大好きなヒューゴの性欲をぶつけられ、私で解消してもらえるなんて光栄すぎる。そのことに何の不満もなかった。
ーーけれど。
今頃祝賀パーティーではヒューゴとこの国の第二王女の婚約が発表されているんだろう。
魔王を倒し世界を救った勇者と美しいお姫さま。何て素敵な響きだろう。それこそ、誰もが憧れる御伽噺のようだ。
ついに私の役目も終わってしまったということ。
結婚してしまうのなら、もうヒューゴと一緒にいることはできない。性欲処理係なんて必要ない。
ううん、それはヒューゴにとっての話で、私にとって重要なのはそこじゃない。
仲睦まじいお似合いの二人を目にしたら、多分私の心はバラバラになってしまうだろう。それはもう、跡形も無く、木っ端微塵に。
旅に出る前もヒューゴのことはもちろん大好きだった。
でも、今はその時とは比べられない位、もっともっと好きになっていた。好きになりすぎて苦しい程に、愛してしまっていた。
見返りなんて何も求めていなかったのに、今の私はヒューゴのことを独占したいと思ってる。私のことを見てほしいと、私以外の人と身体を重ねてほしくないと思っている。
自分の中の本当の想いに気付いたとき、私は愕然とした。
もう、ただの性欲処理係ではいられない。そう、はっきりと思ってしまった。
それでも旅の間、ヒューゴは私以外の人とはそういうことをしなかったし、相変わらず私に対して意地悪で口も悪かったけど、根っこの部分は優しかった。私に酷いことはしなかったし、私の身体を気にしてくれていた。
でも、それも今日で終わり。
これ以上ヒューゴの側にはいられない。
ずっとずっと覚悟していたつもりだったけど、いざその時が訪れると、悲しくて悲しくて目の前が真っ暗になった。
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