9 / 31
第1章 冒険者になってシロをもふもふに戻したい!
9 ▶︎にげる→にげられなかった!!
しおりを挟む家は二階建てで弱小パーティーと呼ばれる割にはかなり良い家を借りている様だ。
マリアが扉を開けて引き入れられる。俺は入った瞬間にとんでも無い光景が目に飛び込んで来るとはつゆにも思っても見なかった。
「っ!?」
そこにはロープで縛られたパンツ一枚で傷だらけのアクスが転がっていた。
目隠しと猿轡を噛まされ一瞬変態プレイかと思ってしまった。え?だって亀甲縛りってやつだぞ?変態プレイだろ。俺の声に反応してもがもが何か言って暴れ出した。好きでやっているのか分からないが聞き取れないので、猿轡を外してみる。
「兄貴なんでこんな格好を?」
アクスは荒く息をしながら呼吸を整えた。息がしづらいのに叫んだ所為だろうけど、身体が赤らんでいて益々そういうプレイに見えて仕方ない。ある一定層の女子がめちゃくちゃ喜びそうだ。アクスなら薄い本大量生産されそうだけど、その女子達の妄想の中でアクスの相手が俺で無ければ全く問題ない。俺はノーマルだ。いくら美少女の様に可愛い男だろうが優しい匂いのする女性が良い。だからといってミラみたいなあからさまに性格ヤバい奴は女でも男でも遠慮するが。まぁ元の世界でも付き合った事無いんだけどな。
おっと、思考が脱線してしまった。
「セイ!!俺が余計な事言ったばかりにっっっ!!!!すまねぇっっっ!!!あの時は俺達のパーティーに誘ったが、抜けてお前を誘って2人で新しいパーティー作ろうと思ってたんだ・・・そしたらミラの野郎がリーダーとユリアナにチクりやがったんだ・・・。この状態にしたのはユリアナとミラだ、アイツらが帰ってくる前に逃げないと!!こんな事なら勝手に抜けて逃げりゃ良かった・・・くそっっ!!!」
アクスが俺と2人でパーティーを組もうと思ってくれていた事が嬉しかったが、目隠し先に外せば良かったな・・・と、マリアが横に居るとは思っていないアクスは話を続ける。俺は今、とてつも無く胃がキリキリしている。切実に鳥のマークの胃薬を元の世界から持ってきて欲しい。
因みにマリアはしゃがんで両手で頬杖をついて聞いている。アクスの勝手に抜けて逃げればという発言に特に怒っている様子が無いのがまた怖い。
「セイ、2人で逃げるぞ!!それが無理そうならお前だけでも早く逃げろっっ!!!そう言えば良くここに俺が居るって知ってたな?誰かから聞いたの・・・か・・・ま、まさか・・・セイ・・・お前1人だよな・・・?」
赤らんでいた身体は既に血の気が引いていて、ホラー映画の様な成り行きになってきた。俺が事実を言うのを躊躇っていると次の瞬間マリアが目隠しに手を伸ばした。ホラー映画ならアクスこの後、絶叫して死ぬんだろうな・・・。なんか本当ごめん。
「じゃーんっ実は僕がいました!あーくん驚いた?」
マリアは一気に目隠しを外した。アクスが大きく口を開け声にならない声を出した後、白目になると泡を吹いて意識を失った。意識失うほどこの子ヤバいの!?俺付いてきちまったよ!!子供の頃、親や教師が口が酸っぱくなる程注意してた知らない人について来てしまったよ・・・。これが厳ついおっさんだったら絶対付いて行かなかったのに!!
「みんなひどいよねっ!!あーくんにこんなケガさせるなんてー!僕怒ったよー!!」
マリアはあざとい女子の様に頬を膨らませ怒っている。普通なら何やってんのコイツって冷めた俺は思っちゃうんだけど、マリアはめちゃくちゃ似合うんだなーこれが。急いでいる感は一切ないけど可愛いから許そう。すまん!!兄貴!!!ーー手当て遅れるわ。
「取り敢えず傷を治療しないとな、マリア・・・いやリーダーか。リーダー回復薬みたいなのは無いのか?」
「マリアでいいよー。うーん、そういえばよく効く回復薬があったと思うんだー。持ってくるね!!」
2階から跳ねる様に降りてきたマリアの手には豪華な作りの瓶があった。あと少しという所で何も無いところでずっこけた。
嘘だろ・・・。今時こんなコテコテヒロインみたいな少女漫画でもいないだろ・・・。絶滅危惧種だよ。
マリアの手から離れ飛んだ瓶は反射的な行動なのだろう、元が犬のシロは口を大きく開きキャッチした。
「良かった~・・・シロ今のを出してくれ」
ーーガタガタガタガタ・・・
ーーガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ!!!
亀の疾走であっという間にどこかに逃げていった。取られると思ったのか?いやまぁ取るけど・・・。参ったなぁ・・・あぁいう時のシロは中々離さないんだよなぁ。シロは後で捜すとしてまたマリアに持って来てもらうか。シロの逃げる姿可愛かったなぁ・・・。宝箱になっても可愛いとか犯罪級だな。早く捕まえて抱きしめてスリスリしたい・・・。
「どうしよう・・・あれ最後の回復薬だったのに。あーくんしんじゃうっっ」
マジかい!!本当昭和の少女漫画かってくらいベタベタな子だな。ついに泣き出したよ・・・。ーー泣きたいのは俺だよ!!どうすっかなー・・・傷は深くは無いけど傷口から血が滲んでんだよなぁ。よし、消毒液くらいはあるだろうから手当てするか。
「ほらっ、マリア大丈夫だ。傷口は浅いから消毒液と包帯でも治るよ。そういう道具あったら持ってきてくれないか?そしたらあーくん元気になるから」
「わかったっ!!あーくんの為に探してくるーっ」
マリアは走って2階に上がって行った。確かに徐々にではあるがマリアがヤバそうな事は感じ始めている。このままバックれる事は出来ないだろうか・・・?あっでもシロを捜さないといけないから今は無理か。それにアクスをこのままには出来んしな。逃げる時はアクスも連れて行こう。
マリアが転けずに戻ってきた。箱を受け取るとかなりある傷口に消毒液を塗り、ガーゼを当て貼り付けたり包帯で巻いたりしながら治療を終えた。
「あーくんの部屋に連れて行きたいんだけど、部屋教えてくれるかな?」
「うんっ!いいよっ。あーくんのお部屋はね、2階の1番奥だよーセイさん運べる?だいじょうぶ?」
「んーぶっちゃけしんどいわー。でもここに置いておく訳にもいかないだろ?」
「あっ!ちょっと待って!!」
回復薬や傷薬を持ってくる為に椅子に、マリアが置いていた黒猫のぬいぐるみを持ってきた。
「カルト、セイさんと一緒にあーくんをあーくんのお部屋まで運んで?」
マリアが黒猫のぬいぐるみを持ち上げお願いすると、生きているかの様にぬいぐるみが動き始めた。そしてが肩を抱えている俺とは逆でアクスの足元に行く。ぬいぐるみはアクスの脚を軽々と持ち上げた。
「(え?この子、剣士なんだよね??ぬいぐるみ操るって呪術使いか黒魔術師のイメージあるけど、剣士って他のも兼任出来るのか?)」
余計マリアがよく分からなくなったが、アクスの安静の為に部屋へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。
彩世幻夜
ファンタジー
※ 2019年ファンタジー小説大賞 148 位! 読者の皆様、ありがとうございました!
裕福な商家の生まれながら身分は平民の悪役令嬢に転生したアンリが、ユニークスキル「クリエイト」を駆使してシナリオ改変に挑む、恋と冒険から始まる成り上がりの物語。
※2019年10月23日 完結
新作
【あやかしたちのとまり木の日常】
連載開始しました
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる