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第1章 冒険者になってシロをもふもふに戻したい!

8 ネジが飛んで狂った弱小パーティーらしい。

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山分けした報酬で宿屋に泊まる事が出来た。まだこの町にいる予定なので取り敢えず10日の連泊にした。その方が安いしね。レベル的にはユースホステル位かな?少年自然の家とかそんな感じ。簡素なテーブルと椅子簡素なベッドがあるだけな。まぁユースホステルは国や町によって全然違うからな。この町の宿は清潔で良かった。昨日食べ過ぎたので寝る前に筋トレをしまくったので、今日筋肉痛になっていて全身痛い。ネット環境無いから時間有り余って、シロと戯れた後筋トレするぐらいしか時間の潰しようが無かったからだ。
起床後シロが起きているか確認して寝ていたので自分の支度をさっさと済ませる。支度の途中で何故か親指の所に赤いインクが付いている事に気が付いた。寝ている間に何か触ってしまったのだろうか?まだ寝ていたシロを抱えアクス達のパーティー『無慈悲なる運命さだめ』(笑)の残りのメンバーである剣士と魔法使いについての調査を開始する。


 「(リーダーの剣士がマリアで、魔法使いのユリアナだったな。取り敢えずどっかの食堂で聴き込み始めてみるか)」


宿屋の近くにある食堂に朝ご飯を食べに行く事にした。
木造造りの温かみのある食堂だ。ここは美味い筈だと第六感が訴えかけて来る。席に着くと恰幅の良いおばちゃんがメニュー表を持って来てくれた。読めないままなのでオススメを頼んだ。

朝食を食べに来たお客さんで段々混み始めて来た。相席をお願いされ青年が向かいの席に座った。絶好の聴き込みチャンスが巡って来た。

 「相席、ありがとうよ」
 「この町に来たばかりなので、1人寂しく朝食を食べる所だったので良かったです!!」

青年は俺の返事に好感を持ってくれた様だ。色んな仕事やって来たからな上っ面取り繕うことなんか造作もないわ!!ふははははっっっ!!親には良い顔された事はないがお陰で色んな仕事の裏事情は知ってるぜ。


 「そうなのか、この町はどうだ?」
 「良い所ですよね~なんと言っても料理が美味しい!!」

そう言い切った所でおばちゃんが料理を持って来てくれた。

 「嬉しい事言ってくれるねぇ~うちの料理もよそに負けないくらい美味しいからね!!」

おばちゃんはウィンクして去っていった。歳とった時こういう奥さんだと楽しいだろうなと思う。おばちゃんには笑顔でお礼を伝えた。

 「結構量多いな・・・あの、少し食べられたりします?」
 「お?いいのか?給料前で量少ないやつ頼んだからありがたく貰うよ」
 「次回は気をつけないとな。助かります」

一口食べて思わず「うまっっ!」と大きい声で言ってしまい近くのお客さん達に笑われてしまった。ギルドの食堂よりも美味いかも知れない。混んでなければ昼もここに来ようかな?

 「あんたは冒険者・・・の様には見えないが何でこの町に?」

向こうから話題振りチャンスを振ってくれた。

 「これから冒険者になろうと思っているんです。あの・・・マリアって剣士とユリアナって魔法使い知っていますか?」

名前を出した瞬間ガヤガヤと五月蠅かった食堂が時が止まったかのう様に静かになった。相席の青年も咀嚼していた口が動いていない。もしかして俺魔法使えたの?あ、違うわ。時計の針の音してるし。

 「あの?どうしたんですか?」
 「えっ?あ、あんたアイツらの知り合いなの・・・か?」
 「いえ、アクスとミラの知り合いで、ダンジョンに迷い込んだのを助けあって脱出した程度の知り合いです。アクスに自分達のパーティーに入らないかと誘われてどうするか決めかねているんです」
 「そっそっかー・・・アクスは良いやつだからな・・・。・・・・・・。あんたもまともだから忠告しといてやるよ。ーーーーーーーーーー絶対に入るな」
 「・・・そうだね、うちの料理を美味しそうに食べてくれたあんたを地獄に送り込みたくは無いからね」

青年の料理を持ってきたおばちゃんが心痛な面持ちで俺に話しかけてきた。そんなに残りの2人ヤバいの?

 「ご忠告ありがとうございます。俺、ちゃんとことわーーー」
 「みんな聞いてくれっっっ!!!大事件が起きたぞっっっっっっ!!!『無慈悲なる運命さだめ』に新しいパーティーメンバー入ったらしいぞっっ!!!!いやぁーあの頭のネジが飛んで狂った弱小パーティーに入るなんかよっぽど、そいつもおかしいんだろうなぁ・・・セイって奴らしいからみんな気をつけろよ!!」

自分で無いと思い込もうとしていたーーー最後を聞くまでは。俺の周囲にいた人達が「もしかしてあんたセイ?」という目で問いかける。恐らく顔色の悪くなっているであろう俺の顔を見て察した様で憐れんだ目に変わった。そんな目で見られたらもう決定じゃんっっっ!!!セイ違いだよ!!きっと他にセイって奴がいるんだよ~っっっっ!!!!

 「・・・あ、あの・・・勝手にパーティーメンバーって・・・組めたりするんですか・・・?」

俺マジ涙目だわ。

 「え?ーーもしかしてお前がセイなの?」

みんなに広めた男が頬を引き攣らせ聞いてきたので諦めて頷いた。

 「い、いや。勝手に組んだりは出来なかった筈だよな?安心しろっ!!確か書類に署名と拇印が必要だからお前が押していなけりゃ、パーティーメンバーに入れる事は出来ないからな!!なっ?」

今朝方自分の親指に付いた赤いインクの事を思い出し、思わずその親指を見つめた。

 「も、もしかしてーーーーやられたっっ!!!!」

代金をテーブルに叩きつける様に置くと急いで食堂を出た。

誠が去った後の食堂はなんとも言い辛い澱んだ空気が流れていた。




ギルドに駆け込み俺がまだパーティー登録していない確認を急いだ。
受付けの鱗のある美人なお姉さんに詰め寄った。


 「あら、昨日の坊やね?確かセイだったわね」
 「お姉さんっっっ!!!!俺っ、俺、どこのパーティーにもまだ所属していませんよね!?」
 「えっ?どうしたの?」
 「俺まだ冒険者登録もしてないんですけど、冒険者でない人間をパーティーに入れる事なんて出来ませんよね!?ねっっ!?」

 「冒険者登録していなければ当たり前だけれど無理よ?パーティーに入っているかどうかなんてステータスウインドウ開けば確認出来るじゃない?確かめる為ならわざわざここまで来る必要なかったのに」

お姉さんは笑って話すが俺にとっては命運を左右する一大事だ。急いでステータスウインドウを開いた。


      【無慈悲なる運命さだめ
      【セイ】シロの飼い主
        体力 75  魔力 50  力 20
      【一般市民】レベル5
      【術】ー
      【スキル】
       ・シロへの意思伝達
       ・シロの躾   


オワタ。


打ちひしがれていると、ギルド長が声を掛けてくれ応接室に移動した。
応接室に移動すると青褪めたギルド長がもの凄い勢いで土下座してきた。ショックで頭が真っ白の俺は「この世界も土下座あるんだー」とぼんやり思いながら土下座を見ていた。


ギルド長は頭を床に擦り付けたまま謝罪を始めた。

 「セイ、許してくれっっっ!!!まさかこんな事になるとは思っても見なかったんだっっ!!あの2人が居ないから安心していたが、ミラから聞きつけたのか深夜に2人が乗り込んできてキミの冒険者登録とパーティー登録をさせられたんだ・・・アクスがいれば止められたんだが・・・」

 「え・・・もしかしてこの不正な登録はギルド長の所為ですか・・・?」

怒りが沸々と湧いてきた。ギルド長は慌てて再び床に頭を付け謝罪を始める。

 「すまないっっっ!!!私にはリーダーのマリアがキミを絶対に入れると言い出したのを止める術は持ってないんだ・・・国王ですら無理だ・・・頼むキミという生け贄でこの国が救われるんだ・・・許してくれ・・・キミには後日国王より内密に褒美が贈られるだろう。それとある程度の事は融通して貰える様に伝えておくので・・・頼みますっっっ!!!!」

 「キミがセイさん?」

いきなり横から声をかけられ見ると、上の方サーモンピンクで下の方が茶色のプリンの様な色合いになったボブ位の髪型の小柄な美少女が黒いネコのぬいぐるみ抱えてこちらを見上げていた。めちゃくちゃ可愛い何この子!!肌も白くて目は少し垂れ目の紅茶色でまつ毛めちゃくちゃ長い!!目も大きいし!!!顔も小さいし華奢!!うっわーっっっこの世界で1番の美少女に会ったわ!!目は少し垂れているけどなんか子猫みたいで最高に可愛い。語彙力無くなるくらい可愛いしか浮かばない!!!

 「あ、あぁ。セイだけどキミは?」
 「僕はマリア!!よろしくね!」

首を傾げる姿もマジ天使!!!俺この子一生推せるわ。
この子の写真集だろうがなんでもグッズ買わせてくれっっっっ!!!

 「ーーーーあれっ?そう言えば・・・リーダーのマリアって男だって・・・」

思わず1箇所を見たが、防具で分からなかった。

 「うん、僕男の子だよっ」

あー・・・・・・そう。でも思っていたより普通だな。可愛さ以外は。魅了スキル持ちとかか?つか剣士って言ってなかったか?めちゃくちゃ腕細いんですけど・・・?急にムキムキは勘弁してよ?

 「セイ、どうだろうか?このままパーティーに入る事を了承してくれないだろうか?」

 「セイさん一緒に冒険しようよっ!!僕セイさんと一緒に冒険出来たら嬉しいなっ」

まぁ可愛い弟が出来たと思えば良いか。国王でも止められない1番ヤバそうなのがこの位ならユリアナはまだマシだろうし。

 「分かりました。このままパーティーに入ります。ギルド長さっき言ってたの忘れないで下さいね?」

 「任せてくれたまえ!!忘れずに伝えておく!!!ーーあぁぁ・・・神よ!!!この世界の全ての神とセイに感謝をっっっ!!!」

床に座ったまま祈りを捧げ始めた。ワードスさんまともだと思ったのになぁ・・・。もしかしてこの世界、まともじゃ無さそうな外見の奴がまともで、逆はまともじゃ無いのか?その理論でいくとこの子相当ヤバい気もするんだが・・・。ちらりとマリアに目を向けると、小首を傾げにこりと微笑まれた。ーーーまぁこれだけ美少女・・・美少年なんだから目の保養の為に騙されても良いかなと思い始めた自分がいる。きっともう俺は詐欺に引っかかっているね・・・。でももう良いんだ・・・。

 「セイさんっ一緒に僕たちのおうちに行こ?その宝箱さんの事もたくさんお話し聞かせて欲しいんだっ」

俺の手を掴みぐいぐい引っ張って行く。ぶっちゃけ片手でシロ抱えるのしんどいんだけど、マリアが楽しそうなのを水刺すのも気が引けてパーティーで借りているという拠点いえまでなんとか耐えた。








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