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8年前②
しおりを挟む「そうですか・・・わかりました。」
ギルドの受付からの知らせを受けたアルフェンは深いため息を吐いた。
「兄さんまたかよ?」
ここ数日、薬を卸している店や業者からキャンセルが相次いでいた。薬だけではなく、薬草や素材などの採取の仕事も回ってこないと言う事態に陥っていた。
「さすがに連日キャンセルが続くのっておかしくないか?」
「確かに・・・受付の人が言っていたんだけど、他の業者さんたち怯えていたって言っていたんだ。」
「怯えてたって……まさか………」
「そのまさかだよ……」
「……ったく、あの野郎……」
苛立ちから頭をガシガシとかくヴァルトの横でアルフェンはさっきよりも深い溜息を吐いた。
それは1ヶ月前、領主の異母弟がギルド長に対し一方的に怒鳴りあげた事件から3日後のことだった。
「…………」
「どうしたの兄さん?さっきから後ろばっかり気にして。」
その日ギルド長から頼まれ、町の雑貨店や薬屋にポーションを卸しにいった帰り道、チラチラと何度も後ろを振り返るアルフェンに不思議そうな顔をしたヴァルトがたずねた。
「いや……何かさっきから見られている感じがするんだよ。」
「見られてる?」
「見られているっていうか……視線を感じるんだよね。」
今朝から感じる視線は、刺すような、けれどどこかねっとりと纏わり付いて気持ち悪い。しかし、アルフェンがいくら辺りを見回しても、視線を送っている人物は見つけられなかった。
「確かに。何か……気持ち悪いよな。」
話を聞いていたヴァルトはゲェッと苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべる。
「最初は気のせいかなと思ったんだけど……何か気味悪くてさっ…て
……うわっ!?」
突然、ドンッと思い切り肩がぶつかりバランスを崩したアルフェンは左手を冷たい地面についてそのまま倒れこんだ。
「っっ・・・・」
「兄さん!!大丈夫!?」
ヴァルトが駆けよってきたが、幸い手をついていたので多少の擦り傷はあるがたいした怪我ではなかった。
「だっ、大丈夫だよ、・・ちょっと「・・・め・・・」えっ・・・?」
顔を上げると、3日前にギルドでギルド長と揉めていた男ーザルツマンが美しい顔を歪め、憎々しげにアルフェンを見つめていた。
「忌々しい悪魔の化身め!!お高く止まっているようだが俺にはわかっている!!天に変わってこの俺が必ずお前を罰してやる!!」
そう高々と宣言した後、ザルツマンはズンズンと大股でその場を去っていった。
「「・・・・・・はあっ??」」
ザルツマンが去ったあと、唖然としていたアルフェンとヴァルトは目を丸くしポカンと口を開けたまま顔を見合わせた。
「・・・なんだアレ?」
「さあ?・・・てか、悪魔の化身て何?」
「いや、俺に聞かれても・・・つーか、お高く止まっているって何?自分はわかっているって言ってたけど、ほぼ初対面の相手に対して何言ってんの!!馬鹿じゃん。」
「ヴァルト…………………まあ、あまり関わらないほうがいいのかもしれないね。」
「う~ん・・・でもああいう性格の人間は大した用もないのに自分からちょっかいっていうか、絡みにくるから気をつけたほうがいいかもよ。」
ヴァルトの言葉通り、その日からザルツマンからの嫌がらせが始まった。
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