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ヴァルデリア
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「では、輸送の手段をかけあってみてはいかがかしら。幸いここにはエドワード殿下がいらっしゃるから……」
「輸送の手段?」
「ええ。先ほどお話しいただいた構想……こちらでご紹介してもよろしいかしら?」
エミリアがにっこりと微笑んで目配せをすると、エドワードは思い当たったように目線を上げる。
「エドワード様は近いうちに、都市を繋ぐ道を整備する事業に着手されると仰っていたわ。それだけでも輸送の効率は随分上がると思いますし、交易も盛んになるでしょう」
「確かに……整備に時間はかかるが、販路拡大の可能性としては考えられるってわけだな」
エドワードの同意に、メアリーはぱっと目を輝かせる。
「葡萄の量産が安定して収穫できるようになるまでは、まだ、何年もかかります。でも、希望があるなら続けたいです」
メアリーが振り仰ぐと、夫は弱った笑顔を見せた。
不確定な話に、乗り気ではないらしい。
「はい。それと……ここからは少し、差し出がましいお話になるのですけど、世間話の延長だと思って、聞いてくださる?」
「改まって何だろう。もちろん、続けて」
「道を整備するには多くの人出が必要で、物資も運ばねばならないでしょう? いっそのこと線路を引いてはいかがかと思いましたの」
「……線路、か」
エドワードはぴたりと声を切った。
直ぐに反論が出てこなかったのは、エドワードの中に検討の余地が存在していたからだろう。
エミリアを真剣な目で見つめる。
「私の祖国では鉱物を運ぶのに、トロッコを利用しています。狭い坑道で、重量のある鉱物を運ぶのに適しているからです。ただ、それをヴォルティアに応用するためには、動力が問題になるのですが……」
「なるほど、確かに……だが、とんでもなく話の規模が広がるな。ここで検討できる話じゃない」
エドワードは考え込むように、眉間を人差し指で叩いた。
夫妻は何事か、というようにぽかんとした表情で見守っている。
「協議してくださるだけでも嬉しいわ。私は強く主張できる立場ではありませんもの」
「いや、異論があるわけじゃないんだ。ただ、びっくりして。まさか貴女が、急にそんな提案をすると思わなくて」
「ごめんなさい、つい、余計な話を。悪い癖ね。でも、放っておくのも勿体ない気がして」
エドワードは、じっとエミリアを見つめた。
今まではひたすら甘く、見つめられるだけだった瞳に驚きの色が混じる。
何か物珍しい発見をした時に、対象を観察するかのような……
(他所の国の行政に口を挟むなんて、失礼な話よね。私は王妃でも何でもないのだから、気を付けないと……)
「ありがとう。貴重な意見だ。しかと承った。ギュント夫妻、まだ未確定な話ばかりだけど、良策が浮かぶよう私のほうでも考えてみるよ」
エドワードは丁寧に言葉を掛ける。
母親から受けた教育という慣習が体に染み付いていて、話し掛ける人間を気遣うのが当然だと刻み込まれているせいだろうか。
「輸送の手段?」
「ええ。先ほどお話しいただいた構想……こちらでご紹介してもよろしいかしら?」
エミリアがにっこりと微笑んで目配せをすると、エドワードは思い当たったように目線を上げる。
「エドワード様は近いうちに、都市を繋ぐ道を整備する事業に着手されると仰っていたわ。それだけでも輸送の効率は随分上がると思いますし、交易も盛んになるでしょう」
「確かに……整備に時間はかかるが、販路拡大の可能性としては考えられるってわけだな」
エドワードの同意に、メアリーはぱっと目を輝かせる。
「葡萄の量産が安定して収穫できるようになるまでは、まだ、何年もかかります。でも、希望があるなら続けたいです」
メアリーが振り仰ぐと、夫は弱った笑顔を見せた。
不確定な話に、乗り気ではないらしい。
「はい。それと……ここからは少し、差し出がましいお話になるのですけど、世間話の延長だと思って、聞いてくださる?」
「改まって何だろう。もちろん、続けて」
「道を整備するには多くの人出が必要で、物資も運ばねばならないでしょう? いっそのこと線路を引いてはいかがかと思いましたの」
「……線路、か」
エドワードはぴたりと声を切った。
直ぐに反論が出てこなかったのは、エドワードの中に検討の余地が存在していたからだろう。
エミリアを真剣な目で見つめる。
「私の祖国では鉱物を運ぶのに、トロッコを利用しています。狭い坑道で、重量のある鉱物を運ぶのに適しているからです。ただ、それをヴォルティアに応用するためには、動力が問題になるのですが……」
「なるほど、確かに……だが、とんでもなく話の規模が広がるな。ここで検討できる話じゃない」
エドワードは考え込むように、眉間を人差し指で叩いた。
夫妻は何事か、というようにぽかんとした表情で見守っている。
「協議してくださるだけでも嬉しいわ。私は強く主張できる立場ではありませんもの」
「いや、異論があるわけじゃないんだ。ただ、びっくりして。まさか貴女が、急にそんな提案をすると思わなくて」
「ごめんなさい、つい、余計な話を。悪い癖ね。でも、放っておくのも勿体ない気がして」
エドワードは、じっとエミリアを見つめた。
今まではひたすら甘く、見つめられるだけだった瞳に驚きの色が混じる。
何か物珍しい発見をした時に、対象を観察するかのような……
(他所の国の行政に口を挟むなんて、失礼な話よね。私は王妃でも何でもないのだから、気を付けないと……)
「ありがとう。貴重な意見だ。しかと承った。ギュント夫妻、まだ未確定な話ばかりだけど、良策が浮かぶよう私のほうでも考えてみるよ」
エドワードは丁寧に言葉を掛ける。
母親から受けた教育という慣習が体に染み付いていて、話し掛ける人間を気遣うのが当然だと刻み込まれているせいだろうか。
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