「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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クラウディオの決断

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「ーーえっ!?」

「来い、レオノール!」

 ガシッと握られた右手首を強く引かれて、レオノールはバランスを崩す。

 その刹那は、何が起きたかわからなかった。

 しかし”赤髪の獅子”と呼ばれたレオノールだ。

 傾いだ腰を攫われて、次の一歩で自重を支えた時には進行方向を修正していた。

 トッ、トッ

 更に2歩、3歩目で引かれるまま、オーグレイルから距離を取る。

 倒れそうなほど傾いた身体で後方を振り仰げば自らの左足と、かろうじて握っている愛剣の剣先が振り子のように揺れる様が見てとれた。

 その隙間からは腕組みをしたオーグレイルが。

 この時オーグレイルは訝しんだように片眉を跳ね上げながらも、まだ様子を窺っていた。

(クラウディオ様、何を……、まさか逃げるつもり!? 足で逃げられるわけがない。それにこんなことをしたら)

 誓約上、決闘の妨げは無効とされる。

 誓約のペナルティとして、何が降りかかるかわかったものじゃない。

 しかし、レオノールが不安を口にする前に、それは起こった。

『エアリアル・ランス!!』

 音よりも速い光の矢の雨が、無音で空から降り注いだ。

 ズドドドドドドッ!!!

「う……えぇええっ!?」

 光の矢は大地を抉り、吹き上がった砂埃がオーグレイルの姿をかき消す。

「何、なに? なんなのぉ!?」

 口からは混乱したように悲鳴を上げる。

 が、4歩、5歩目には完全に自らの意思でクラウディオの導きに従った。

 腕を掴まれたままでなく、こちらからも握り返して、手を取り合って走り出す。

 掌のぬくもりと、握る強さの逞しさ、思いがけないしたたかさに、口の端が浮いてしまう。

 意思の変化を感じ取ったクラウディオが、ちらりと視線をレオノールに向ける。

 サファイアのように澄んだ眼差しがレオノールを捉え、得意げに弧を描いた。

「どういうことだ!? これは明らかに妨害行為だろう」

 さしものオーグレイルも、光線が魔力による攻撃だと気付いたのだろう。珍しく大声で恫喝する。

『ディバイン・ブラスター!』

 声をかき消すように、光の次は炎を纏った無数の光弾が、砂塵の中に浮かび上がった。

「下がれ、レオノール!!」

 それにこの声。ここまで条件が揃えばレオノールにも疑いの余地はない。

 これはコールヴァンの攻撃魔法だ。本来は僧侶が身に付けられるものではない、爆裂系の魔法。

「クラウディオ様、飛んで!」

 轟音と共に火の塊が爆発四散する。

 爆風を背に受けて、レオノールはクラウディオを掴んで跳躍した。

 ドババババババッ

 間断なく爆発音が続き、辺りが灰白色の煙幕に包まれる。

 その中をレオノールたちは逃走する。
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