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クラウディオの決断
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目指すべき方角は、クラウディオが示してくれた。
「嬉しいんですけど、いったいどうなってるんですか?」
「説明したいが、話は後だ」
爆風を受けた勢いで転がり、砂埃の中から這い出して夢中で走っていると、新たな声が響く。
「その通りだ。レオはこっちへ。頼むぜ、セレス、ブルネン」
一陣の風が吹くと砂塵が割れて一本の道筋ができる。
そこに声の主が浮かび上がった。
勇者レオノールパーティの頼れる右腕、セレス・アルバレス。
静かなる剛腕、ブルネン・イアーノ。後方に控える男は悪知恵僧侶の、コールヴァン・アグイレだ。
「コールヴァンにブルネンまで! 来てくれたの!?」
堂々たる登場に、レオノールの心は沸き立った。
「任せておけ、レオノール」
「レオは先に回復を」
駆け寄るレオノールとクラウディオと反対に、こちらへ向かい疾走するセレス、ブルネンとすれ違う。
2人の目はかつての宿敵、オーグレイルを捉えていた。
どうやってここへ辿り着いたのか、何故、助っ人による妨害が可能なのか。
詳細は一つもわからないけれど、このメンバーが揃えばもう、何も怖くない。
「さあ、とっとと終わらせようぜ、レオ」
青白く発光する円陣の中央で、コールヴァンがレオノールを待ち受けていた。
クラウディオの手を離し、喜び勇んで円陣へ飛び込むと、コールヴァンの”リザレクション”が発動する。
途端にふわっと身体が軽くなり、疲労も痛みも吹き飛んでいく。
「はぁー、すごい! 効くぅ~~!!」
リザレクションは代表的な回復魔法で、レオノールのパーティではコールヴァンの他にセレス、フィオレンティーナも使える。
だが、その性質は個人に由来するのか、効果はほぼ変わらないけれど受ける時の感覚は微妙に違う。
セレスのリザレクションは暖かい湯船に浸かっているような、ポカポカと癒される感覚なのだが、コールヴァンのリザレクションは激しい。
まるで高エネルギーの激流にさらされるような、荒波に揉まれるような解放感がある。
「レオ、その声。旦那サマの目の前だぜ」
「あ」
確かにおっさんくさかったかと背後を仰げば、クラウディオはもうこちらを見てはいなかった。
「どうしたことだ? 私は確かに誓約を結んだ! 何故このようなネズミの介入が……!」
迷わずオーグレイルに突進していくセレスとブルネンの行手を阻むため、左右からオークの群れが出現する。
オーグレイルは全容を理解せんと、空高く飛翔した。
上空から戦力図を把握し、強く憤る。
その憤りはバチバチと音を立てる黒い稲妻となって、天空を染め上げた。
派生した細かな雷撃が地上へ無作為に降り注ぐ。
雷撃の隙間を縫うようにオークの群れに向かう疾走の最中、セレスは構えた剣をふわりとふるい半月を描く。
『グレイシャル・エッジ』
詠唱と共に剣から雫が迸り、霧状になって周囲に広がった。
その霧に触れた全てのものは瞬く間に凍りつく。
氷漬けになったオークの群れを、切先が撫でるように粉砕していく。
「嬉しいんですけど、いったいどうなってるんですか?」
「説明したいが、話は後だ」
爆風を受けた勢いで転がり、砂埃の中から這い出して夢中で走っていると、新たな声が響く。
「その通りだ。レオはこっちへ。頼むぜ、セレス、ブルネン」
一陣の風が吹くと砂塵が割れて一本の道筋ができる。
そこに声の主が浮かび上がった。
勇者レオノールパーティの頼れる右腕、セレス・アルバレス。
静かなる剛腕、ブルネン・イアーノ。後方に控える男は悪知恵僧侶の、コールヴァン・アグイレだ。
「コールヴァンにブルネンまで! 来てくれたの!?」
堂々たる登場に、レオノールの心は沸き立った。
「任せておけ、レオノール」
「レオは先に回復を」
駆け寄るレオノールとクラウディオと反対に、こちらへ向かい疾走するセレス、ブルネンとすれ違う。
2人の目はかつての宿敵、オーグレイルを捉えていた。
どうやってここへ辿り着いたのか、何故、助っ人による妨害が可能なのか。
詳細は一つもわからないけれど、このメンバーが揃えばもう、何も怖くない。
「さあ、とっとと終わらせようぜ、レオ」
青白く発光する円陣の中央で、コールヴァンがレオノールを待ち受けていた。
クラウディオの手を離し、喜び勇んで円陣へ飛び込むと、コールヴァンの”リザレクション”が発動する。
途端にふわっと身体が軽くなり、疲労も痛みも吹き飛んでいく。
「はぁー、すごい! 効くぅ~~!!」
リザレクションは代表的な回復魔法で、レオノールのパーティではコールヴァンの他にセレス、フィオレンティーナも使える。
だが、その性質は個人に由来するのか、効果はほぼ変わらないけれど受ける時の感覚は微妙に違う。
セレスのリザレクションは暖かい湯船に浸かっているような、ポカポカと癒される感覚なのだが、コールヴァンのリザレクションは激しい。
まるで高エネルギーの激流にさらされるような、荒波に揉まれるような解放感がある。
「レオ、その声。旦那サマの目の前だぜ」
「あ」
確かにおっさんくさかったかと背後を仰げば、クラウディオはもうこちらを見てはいなかった。
「どうしたことだ? 私は確かに誓約を結んだ! 何故このようなネズミの介入が……!」
迷わずオーグレイルに突進していくセレスとブルネンの行手を阻むため、左右からオークの群れが出現する。
オーグレイルは全容を理解せんと、空高く飛翔した。
上空から戦力図を把握し、強く憤る。
その憤りはバチバチと音を立てる黒い稲妻となって、天空を染め上げた。
派生した細かな雷撃が地上へ無作為に降り注ぐ。
雷撃の隙間を縫うようにオークの群れに向かう疾走の最中、セレスは構えた剣をふわりとふるい半月を描く。
『グレイシャル・エッジ』
詠唱と共に剣から雫が迸り、霧状になって周囲に広がった。
その霧に触れた全てのものは瞬く間に凍りつく。
氷漬けになったオークの群れを、切先が撫でるように粉砕していく。
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