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再会

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 兄、クリストファーだって、そんな野蛮な行為に及んだ姿を見たことがない。

「あの、シルバーモントはお前の兄だったか。まったく、「王国の金貨」はいったいいくらの金貨を国教会へ積んだんだろうな。いくら便宜を図ったところで、現場任せじゃ、娘の貞操は風前の灯火だ。その金があれば、もっと良い縁談もあっただろうに」

 オリヴィエは、ぎゅっと両手を握り締めた。

(縁談って)

 ルーカスから投げかけられた言葉の数々が突き刺さり、心が締め付けられるように苦しくなる。

 やはり、ルーカスにとって、今のオリヴィエはもう赤の他人なのか。

 たとえオリヴィエが聖女でなかったとしても、ルーカスは昔と変わらずオリヴィエを大切に想ってくれているのではないかと期待していた。

 伴侶になれなくても、大切な思い出として心の片隅にでも置いていてくれたなら。

 ……それだけで、満足して逝けたのに。

「……私は、聖騎士団に入っても、シルバーモント家の令嬢よ。純潔は死ぬまで守り抜きます」

「あんなに容易く俺を懐に入れておいてか?」

「それは、ルーカス様だから……」

 オリヴィエは、そこまで言ってはっと口を噤んだ。

(バカね。こんなこと、言ったところでなんの意味もないのに……)

「俺だから、なんだ?」

「……いいえ、ちょっと、油断しただけです」

 オリヴィエは、ルーカスの鋭い眼光に気圧され、すぐに誤魔化した。

「死ぬまでか……。ならば、せいぜい気を抜くな。自分以外は皆敵だと思え」

「そんな、敵だなんて」

 ルーカスはオリヴィエの顎を指で持ち上げると、顔を近寄せる。

「ルー……」

「――こういうことだ。やはり、荷ほどきはせず考え直せ。里帰りの理由はどうにでもしてやる」

 ぐっと腰を抱き寄せられ、鼻の先が触れるほど、ルーカスの顔が近づく。

 オリヴィエは身体を強ばらせた。

 しかし、ルーカスはそれ以上の行動へは移らなかった。

(あれ、キスは?)

 また何かされるのではと構えていたオリヴィエだったが、ルーカスはそのまま背を向けて部屋を出て行ってしまった。

「え……えぇ……?」

 拍子抜けして、オリヴィエは思わずその場にへたり込んだ。

(何だったの……?)

 ルーカスの変わり身が、理解しきれない。

 それでも、覚えていてくれたのは、嬉しい。

 けれど、暴言は許せない……。

 僅かな時間に立て続けて起きた出来事が、胸に嵐を起こす。

 無意識のうちに握りしめた紙片が、くしゃりと音を立てて、はっと、正気に戻った。

(荷ほどきをするなというのは、家に帰れと言いたいのよね。どうして? もう何とも想っていないにしても、騎士団にいるだけなら邪魔にもならないのに)

 オリヴィエは、そっと紙片を広げた。
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