王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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アルダシール

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「随分と汚れたな。……代わりの物を用意してやる」

 動揺を悟られないように、努めて冷静な声を装った。

 アシュレイは着替えを済ませ、茂みの陰から顔を出した。

「ありがとう。図々しい気もするけど、助かるわ。洗い替えが欲しかったの。ねえ……あと」

 アシュレイは言い淀んだ。

「何だ?」

「……下着は? 知らない?」

 あ、と零れそうになる声を、どうにか呑み込んだ。

 アミールがあの場に残したのは寝衣だけだ。

「俺は見ていない。この辺になければ、見つからないかもしれない」

 洋服だけなら、シャルでもアルダシールでも用立てられる。

 だが、下着となると……

「もー。嫌だけど、アミールを問い詰めるしかないわね。あの子は、小……別邸にいるの?」

 アルダシールは掌で頭を押さえた。

 アミールはもう、あの場には居るまい。

 もしいたとしても、出て行けと追い払わねば気が済まない。

「もういない。追い出した」

「えっ? アミールを? ……貴方が?」

 アシュレイはさも意外そうに、キョトンとアルダシールを見た。

「そんなに意外か? 服を隠すなど陰湿が過ぎる。当然だろう」

「うーん、まあ、相当なクズだとは思ったんだけど。アルダにベタ惚れだったし、それを傍に置いてるんだから、気に入ってるんだと思っていたわ」

(俺がアミールを気に入っていると?)

 アミールは確かに、アルダに異常なほどの執着を見せはしたが、好みのタイプではない。

 そもそもアルダシールは一国の王子で、自他ともに認める美丈夫だ。

 どんな女でもアルダシールを一目見れば、媚を含んだ視線を送り、甘い声で擦り寄ってくるのが常だった。

「気に入ってなどいない。俺があれを侍らせて喜んでいるとでも思っていたのか?」

 そんなつまらない男だと思われていたのか。

 ムッとして尋ねるとアシュレイは黙ってアルダシールを見上げた。

 何事かを言わんと口元を動かすが、結局音にはならず、口の端からふすっと笑いが零れる。

「思っていたな……!」

 他人の思惑など、普段はどうでも良い。だが、ここで誤解されるのは心外だ。

「あはは、ごめん。そう怒らないで。じゃあ、私のために怒ってくれたのね? ありがとう」

 アシュレイは誤魔化すように笑うと、茂みから出て泉の周囲の探索を始めた。

 考えるように草を掻き分けては、下着がないか確かめている。

 手伝うのも野暮な気がして、手持ち無沙汰に後姿を眺める。

「置いたのはこの辺だったと思うのよね。やっぱりないかぁ」

 不意にアシュレイが振り返って、アルダシールはやましさに慌てて外方を向いた。

 つい、目が布越しに、身体のラインを追っていた。
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