王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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開戦

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 それと同時に、許可を待たずして扉が勢いよく開いた。

「失礼します! 王妃殿下、キュロス殿下」

 部屋に入って来たのは、王宮の近衛騎士の制服を纏った大柄な男だった。

 キュロスとタヒルが思わずといった様子で立ち上がる。

「許しもなく入るとは、何と無礼な。今は取り込み中だ」

 キュロスが慌てて男の前に立ちはだかる。

「申し訳ありません。ですが、キュロス殿下に早急にお伝えせねばと……! 城下街に、アルダシール殿下の御名で宣布が掲げられました!!」

「はあ? 宣布だと? 何のつもりだ!」

 キュロスが素っ頓狂な声を上げた。

「確認できただけでも、主要な大通りに5か所。広場にも掲示されています」

「で、宣布の内容は?」

「明日、日の出より1時間後、総攻撃を開始する。戦闘には限定した区域を使用し、非戦闘者の立ち入りを禁ずると」

 続けて入室したもう1人が、剥がしとったとみられる宣布を、キュロスらの前に広げる。

「これが掲げられていたと? 警備兵たちは何をしていた!?」

「通常通り検問を実施し、定時の巡回もしていたのですが……どうやら宣布を細工した輩は、先んじて街に潜入していたようです。夜のうちに各所に設置したのではないかと」

「それでも誰一人気付かなかったと!? なんと間抜けな。それで、そのふざけた宣布は全て回収したのだろうな!?」

「それが、いずれも打ち壊し、回収しましたが、内容が内容なだけに、すでに多数のフルークブラット(瓦版)が出回っており……街中に張り巡らされた区域分けのロープと併せて、事実を伏せるのはもう不可能かと……」

「ふざけるな! 区域分けのロープだと? 街中に張り巡らされたのに、どうして気が付かないんだ!」

 キュロスは地団太を踏んで悔しがったが、それで何かが解決するわけでもない。

「カルフォードはどこ!? 呼んできて、今すぐに!」

 タヒルが叫ぶと、近衛騎士の2人は一礼して慌ただしく部屋を出て行く。

 キュロスは怒りにわなわなと震えたまま、机上の紙に目を落とす。

「総攻撃は明日だって? お前がべリングバリから戻ったのは3日前だっただろう? 探索方が報せに戻ってからも間もない。どんな魔法を使ったんだ」

 ザイードは首是しながら、「あ、そこはちゃんと理解してるのか」と、少しだけほっとしていた。

「しかも、戦闘を予告するなんて、どうかしている。自信があると見せつけたいのか!?」

「国民の反抗心を抑えるためでしょう。今回の戦はいわば内乱。死傷者が出れば怒りの矛先は国の統治者に向かいます」

 珍しく息を乱しながら、カルフォードが駆けつけた。

 カルフォードにとっても、アルダシールの行動と速さは予想外だったのだろう。

「カルフォード! どうなっているの。ここまで来て、このような事態に陥るなんて。アルダシールを捕らえる一歩手前まできていたのに」

「申し訳ありません、王妃殿下。私の力不足です」

 カルフォードはタヒルの前に跪き、頭を垂れた。

「言い訳はいらないから、どうにかなさい。まだ、手はあるでしょう?」

「はっ……」

 キュロスが期待を込めてカルフォードに向き直った。
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