王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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開戦

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「恐れ入りますが、どうか一度、国王陛下に謁見は叶いませんでしょうか。私個人の謁見が叶わずとも、一度家臣、国民の前に威厳を示し、王家の正統性を説いていただければ、士気が高まります」

(オイオイ、それを俺の前で聞くのかよ。国家機密レベルの話だろ……)

 額を床に擦り付ける勢いで平伏するカルフォードを、同じく顔を伏せたまま、そろりと伺う。

 国王陛下の様子が正常でないことくらい、ある程度の地位にあるものなら薄々は勘付いている。

 ある意味、公然の秘密だった。

 我が身の可愛い者は、誰も口にしない。

 その禁忌タブーに触れるくらいの危機に瀕していると、カルフォードは判断している。

 だが、タヒル王妃はその言葉を聞くなり、すぅっと表情を消した。

「何を戯言を。陛下は今、お体が優れないの。だから後宮で主治医と側妃たちが絶えず看病をしているのよ。とても人前に出られる状態ではないと、貴方もわかっているでしょう」

「ですが、このままでは」

「他に案がないなら、もう結構よ」

 タヒルは決して譲らない姿勢を示した。

「下がりなさい。兵を鼓舞するなら、キュロスがいるわ」

 ぎらり、と睨むような視線を送られて、キュロスがびくりと体を震わす。

「私が? 何をすれば良いのですか、母上」

「すぐに物見を出して、アルダシールたちの野営地を特定しなさい。明日を待たずに、こちらから仕掛けるのよ。勝敗などどうでもいい。どんな手を使ってでも、アルダシールを殺すのよ。彼奴さえいなくなれば、どうとでもなるわ」

「それは……でも、殺せるならとっくに殺してます」

「何も正面を切って戦う必要はない。彼奴は畏れ多くも国王の妻を奪い、今や陛下に刃を向けた叛逆の徒よ。和睦を申し出る振りでもして、アルダシールをおびき出して、不意をついて刺しなさい。それが無理なら、毒でもなんでも使えばいい」

「そ、そんなに上手くいくでしょうか……?」

 すっかり委縮したキュロスの手を、タヒルはぎゅっと上から握る。

「いくだろうか、ではなく、絶対に上手くいかせるのよ。貴方は王位を継ぐために生まれて来たのだから、できないはずがないの。それに不意を突くなら良い教師がいるわ。ねえ……」

 タヒルは目を細めて、ザイードを見やった。

 弧を描いているのに、ちっとも笑っていない、形だけの笑みだ。

「ザイード。キュロスが首尾よくやれるよう、貴方も同行なさい」

 ゲッ、と口から悲鳴が漏れそうになるが、どうにか堪えた。

 忠誠心など欠片もないが、ここで不興を買っても得るものはない。

 ザイードは伏せていた顔を上げると、タヒルに向かって瞼を下げる。

「ご命令、謹んでお受けします」

 俺が乗り込んだ船は、とんだ泥船だ。

 しかし、何が起ころうと、もう構わない。

 どうせ裸一貫、田舎から出て来た身の上だ。

 失敗すりゃあ屍になる危険は、いつだってすぐそばにあった。
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