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代償
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胸の奥で渦巻いた業火が、いよいよ燃え盛りアルダシールの心を呑み込む。
「ならばケダモノらしく、貴様らの喉元を食い破るとしよう」
アルダシールは大股で、ひと飛びにカルフォードの間合いに踏み込む。
「ぬぅ!!」
アルダシールの斬撃は、俊敏且つ重い。
カルフォードは剣筋を見極め、辛うじて受け止めた。
だが、二撃目もアルダシールが先行する。攻撃を受け止める度に、カルフォードは後退せざるを得なかった。
「何を手間取っているの!? そんな手負い相手に」
タヒルの喚き声に応える余裕などない。カルフォードはアルダシールに押され、防戦一方だった。
だが、それも一時で、どんどん防御が後手に回る。
懐が空く間が開き始めていた。
「くっ、そんな。ここまでとは。今まで、加減していたとでもっ……!」
ギン、ギンッと、剣と剣がぶつかり合う。
ガギッ
アルダシールの一撃を受け止めた瞬間、鈍い音と共にカルフォードの剣は根元から折れた。
ィィ……ン……と、余韻を残して先端が弧を描く。
「おおッ……!!」
この機を逃すまいと、アルダシールは深く斬り込む。
「お逃げ下さい! 王妃さ……!!」
振り返り叫んだカルフォードの声は、最後まで続かなかった。
「キャアアアア!」
タヒルが悲痛に叫ぶ。
アルダシールの刃は、カルフォードの首を半ばまで斬り裂いていた。
鮮血をまき散らしながら、ゆっくりと崩れるように倒れるカルフォードを見届けると、アルダシールは正面に向き直る。
額にかかった返り血を拭いながら、ふう、ふうと、肩を上下させる。
痛みこそないが、全身が強張り始めていた。
蟀谷に、玉のような汗が浮かぶ。
背筋を伝う正体は、汗か、流血か。
一変して、蒼白になったタヒルを見据え、アルダシールは刀身を振るって血を振り払う。
「来るな! ……私に、近づくな! この、卑怯者!!」
「卑怯? ククッ、クハハハ! アッハハハハ」
アルダシールは口元を歪めて、盛大に嗤った。
嗤わずにいられない。
目の前で蹲う女こそ、全ての元凶。
卑怯の限りを尽くして、アルダシールから全てを奪おうとした首謀者だ。
「何が可笑しいの! ……この、化け物!!」
タヒルはアルダシールを罵り続ける。
後ろ手で掴んだ金属片を投げつけた。
「笑わずにいられるか。お前の命はもう虫けら同然だ」
キュロスも、この女の命も、最早風前の灯火だ。
アルダシールの気持ち一つで、容易く奪える。
手を伸ばせば悲願に届く。
それなのに、達成感の一つもない。
アルダシールの中で燃え盛る火炎は、行く当てを失って、苦しいまでに渦巻いている。
「ならばケダモノらしく、貴様らの喉元を食い破るとしよう」
アルダシールは大股で、ひと飛びにカルフォードの間合いに踏み込む。
「ぬぅ!!」
アルダシールの斬撃は、俊敏且つ重い。
カルフォードは剣筋を見極め、辛うじて受け止めた。
だが、二撃目もアルダシールが先行する。攻撃を受け止める度に、カルフォードは後退せざるを得なかった。
「何を手間取っているの!? そんな手負い相手に」
タヒルの喚き声に応える余裕などない。カルフォードはアルダシールに押され、防戦一方だった。
だが、それも一時で、どんどん防御が後手に回る。
懐が空く間が開き始めていた。
「くっ、そんな。ここまでとは。今まで、加減していたとでもっ……!」
ギン、ギンッと、剣と剣がぶつかり合う。
ガギッ
アルダシールの一撃を受け止めた瞬間、鈍い音と共にカルフォードの剣は根元から折れた。
ィィ……ン……と、余韻を残して先端が弧を描く。
「おおッ……!!」
この機を逃すまいと、アルダシールは深く斬り込む。
「お逃げ下さい! 王妃さ……!!」
振り返り叫んだカルフォードの声は、最後まで続かなかった。
「キャアアアア!」
タヒルが悲痛に叫ぶ。
アルダシールの刃は、カルフォードの首を半ばまで斬り裂いていた。
鮮血をまき散らしながら、ゆっくりと崩れるように倒れるカルフォードを見届けると、アルダシールは正面に向き直る。
額にかかった返り血を拭いながら、ふう、ふうと、肩を上下させる。
痛みこそないが、全身が強張り始めていた。
蟀谷に、玉のような汗が浮かぶ。
背筋を伝う正体は、汗か、流血か。
一変して、蒼白になったタヒルを見据え、アルダシールは刀身を振るって血を振り払う。
「来るな! ……私に、近づくな! この、卑怯者!!」
「卑怯? ククッ、クハハハ! アッハハハハ」
アルダシールは口元を歪めて、盛大に嗤った。
嗤わずにいられない。
目の前で蹲う女こそ、全ての元凶。
卑怯の限りを尽くして、アルダシールから全てを奪おうとした首謀者だ。
「何が可笑しいの! ……この、化け物!!」
タヒルはアルダシールを罵り続ける。
後ろ手で掴んだ金属片を投げつけた。
「笑わずにいられるか。お前の命はもう虫けら同然だ」
キュロスも、この女の命も、最早風前の灯火だ。
アルダシールの気持ち一つで、容易く奪える。
手を伸ばせば悲願に届く。
それなのに、達成感の一つもない。
アルダシールの中で燃え盛る火炎は、行く当てを失って、苦しいまでに渦巻いている。
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