王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

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「……ですので、もう、母でも娘でもありません。この者を退出させよと命じたのです」

 キューベルルは荒くなる息を抑えきれず、自身の論理を口早に捲し立てた。

 概ね先ほどのやり取りと同様で、アシュレイは先王の側妃たる立場で王城に留まる資格をすでに失っている。

 更にリックの無礼を咎めたキューベルルに対する不敬な発言は立場を弁えぬ恥ずべき行いで、そのような女は最早自分とは何らかかわりない他人である、よってこの場から退出させたい、との主張であった。

 アルダシールは、一字一句を丁寧に拾い上げて頷く。

「……なるほど、良くわかりました。アシュレイとセレンティア王妃殿下はこの場を限りに他人であると仰るのですね」

「その通りでございます。流石はご聡明なアラウァリア国王陛下。どうか、早くその娘の退室をお命じくださいませ!」

 キューベルルはここぞとばかりに胸を反らした。

「……そうか。ならば、この不敬者を今すぐ引っ立てろ」

 アルダシールは最後まで聞き届けると、その顔から表情を消した。

 キューベルルの言葉に耳を傾けていた身体を伸ばすと、控えの兵に命じる。

「なっ、何……!?」

 驚愕の声を上げたのは、キューベルルだ。

 アルダシールが捕らえるように指示を出したのは、アシュレイではなく、キューベルルだったからだ。

「なっ、何を仰いますの!? 私は」

 キューベルルが悲鳴のような声を上げた。

 アシュレイも驚いて、アルダシールを振り仰ぐ。

「このアシュレイは、未来の妻であり、我が命と国家の恩人だ」

 アルダシールはアシュレイの肩を抱き寄せると、公然の秘密を今まさに、堂々と宣言した。

「それと揉めているのが性悪の継母ならば穏便に済ませようとも思ったが、赤の他人なら関係あるまい。目障りだ、連れて行け」

 アルダシールは目を細めて、再度命じた。

 国賓を相手に一度は怯んだ兵士らも、アルダシールの放つ怒気に弾かれて、2人が左右からキューベルルの腕を拘束した。

「は? どういうことですの? 放しなさい! アラウァリア国王、この仕打ちはいったい……! シュナイゼルっ! 何とか言ってちょうだい!」

 キューベルルは突然の出来事を理解できず、周囲の人間を見渡して助けを求める。

 招待客は固唾を飲んで、騒動の成り行きを見守っていた。

 しかし、シュナイゼルは眉一つ動かさない。

「母上、どうかお静かに。この事態は全て母上が自ら撒いた種です。アラウァリア国王、私たちの非は承知しております。お怒りはご尤もですがどうか、私に一度だけお許しを請う機会をお与えくださいませんか」

 シュナイゼルは捕らえられたキューベルルの前で、アルダシールの足元に跪く。

 アルダシールの沈黙を許諾と捉え、シュナイゼルは立ち上がった。

 シュナイゼルは父王と同じ赤銅色の髪と瞳の持ち主で、キューベルル譲りの端正な顔立ちをしている。

 だが、義弟の瞳にはついぞ感情が覘いた記憶がない。

 滅多に顔を合わせなかったので、単に頻度の問題かもしれないが。

 シュナイゼルは到底母に向けるものと思えない、冷たい眼差しで、キューベルルを見下ろした。
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