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王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
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「そうでございましたか。では、アシュレイ様の……」
キューベルルの身分に、ギルフォードは得心し、頷いた。
「ですが、伯爵様、詫びる必要はありません。これは、リックの非ではありません。リックはただ、私に場所を替えようと提案しただけです。それをキューベルル様が扇で打ったのですから、詫びるべきはキューベルル様です」
その言葉に早々に忍耐を切らしたはキューベルルだ。
「何を抜け抜けと。そもそも、貴女だって今や平民も同然の身分で祝宴に混じる権利もないのよ? それを、私の寛大さを良いことに、増長するなど、恥を知りなさい! 衛兵! どなたか、早くいらして! ここに分不相応な侵入者がいるから、摘まみ出してちょうだい」
キューベルルが呼ばわって、入り口の前に控えていた衛兵が駆け寄って来る。
衛兵を呼ばわったため、より多くの注目が壁際に集まった。
衛兵は素早く移動し、手前まで速度を保っていたが、その場にいたアシュレイに、キューベルル、加えてギルフォードの姿を認めて失速した。
「今、侵入者と聞こえましたが……」
「ええ、この小娘よ。早く外へ連れて行きなさい」
キューベルルは扇でアシュレイを指す。
だが、駆け付けた衛兵はアシュレイとキューベルルを見比べたまま動けない。
「こちらは、アシュレイ様……ですが」
「そうよ。それがどうしたの? 同盟国の王妃に無礼を働いて国益を損ねる女よ? 早く退室させて」
キューベルルは有無を言わせまいと、語尾を強めた。
しかし、それでも行動に移らない衛兵にしびれを切らす。
「小娘1人摘まみ出すのに、何を躊躇っているの!? ええい、話にならないわ。貴方たち、この娘を捕えて!」
キューベルルが声を荒げ、扉を警備していた衛兵達をも呼び寄せる。
他の招待客は、何事かと顔を見合わせて注目した。
「誰が、国益を損ねる女ですと?」
するとその時、深みのある声が響いて、会場が静まり返る。
「陛下……!」
衛兵が、一斉に声の方へ向き直る。
そこには、国王の正装に身を包んだアルダシールが立っていた。
アラウァリア新国王の登場に、然しものキューベルルも慌てて礼を執る。
(アルダ……それに、シュナイゼル)
広間の中央で囲まれていたアルダシールの耳にも、騒ぎが入ったのか。
直前まで話し込んでいたアシュレイの義弟、シュナイゼルを伴ってこちらへ歩み寄ってくる。
「これは、ギルフォード殿。本日はようこそお越し下さいました」
「……陛下、この度はご即位おめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます」
アルダシールは礼を執ったキューベルルを一瞥すると、何事もなかったかのようにギルフォードに声を掛けた。
ギルフォードは一瞬だけ戸惑いを見せたものの、形式通りの挨拶を交わす。
「ところで、セレンティア王妃殿下。先ほどの主張に関してですが」
更に2、3言の会話の後、アルダシールはようやくキューベルルに向き直って尋ねた。
相手は親交があるとはいえ、格上の大国だ。
キューベルルからは話に割って入れない。
ようやく声を掛けられて顔を上げ、声高に主張を唱えた。
キューベルルの身分に、ギルフォードは得心し、頷いた。
「ですが、伯爵様、詫びる必要はありません。これは、リックの非ではありません。リックはただ、私に場所を替えようと提案しただけです。それをキューベルル様が扇で打ったのですから、詫びるべきはキューベルル様です」
その言葉に早々に忍耐を切らしたはキューベルルだ。
「何を抜け抜けと。そもそも、貴女だって今や平民も同然の身分で祝宴に混じる権利もないのよ? それを、私の寛大さを良いことに、増長するなど、恥を知りなさい! 衛兵! どなたか、早くいらして! ここに分不相応な侵入者がいるから、摘まみ出してちょうだい」
キューベルルが呼ばわって、入り口の前に控えていた衛兵が駆け寄って来る。
衛兵を呼ばわったため、より多くの注目が壁際に集まった。
衛兵は素早く移動し、手前まで速度を保っていたが、その場にいたアシュレイに、キューベルル、加えてギルフォードの姿を認めて失速した。
「今、侵入者と聞こえましたが……」
「ええ、この小娘よ。早く外へ連れて行きなさい」
キューベルルは扇でアシュレイを指す。
だが、駆け付けた衛兵はアシュレイとキューベルルを見比べたまま動けない。
「こちらは、アシュレイ様……ですが」
「そうよ。それがどうしたの? 同盟国の王妃に無礼を働いて国益を損ねる女よ? 早く退室させて」
キューベルルは有無を言わせまいと、語尾を強めた。
しかし、それでも行動に移らない衛兵にしびれを切らす。
「小娘1人摘まみ出すのに、何を躊躇っているの!? ええい、話にならないわ。貴方たち、この娘を捕えて!」
キューベルルが声を荒げ、扉を警備していた衛兵達をも呼び寄せる。
他の招待客は、何事かと顔を見合わせて注目した。
「誰が、国益を損ねる女ですと?」
するとその時、深みのある声が響いて、会場が静まり返る。
「陛下……!」
衛兵が、一斉に声の方へ向き直る。
そこには、国王の正装に身を包んだアルダシールが立っていた。
アラウァリア新国王の登場に、然しものキューベルルも慌てて礼を執る。
(アルダ……それに、シュナイゼル)
広間の中央で囲まれていたアルダシールの耳にも、騒ぎが入ったのか。
直前まで話し込んでいたアシュレイの義弟、シュナイゼルを伴ってこちらへ歩み寄ってくる。
「これは、ギルフォード殿。本日はようこそお越し下さいました」
「……陛下、この度はご即位おめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます」
アルダシールは礼を執ったキューベルルを一瞥すると、何事もなかったかのようにギルフォードに声を掛けた。
ギルフォードは一瞬だけ戸惑いを見せたものの、形式通りの挨拶を交わす。
「ところで、セレンティア王妃殿下。先ほどの主張に関してですが」
更に2、3言の会話の後、アルダシールはようやくキューベルルに向き直って尋ねた。
相手は親交があるとはいえ、格上の大国だ。
キューベルルからは話に割って入れない。
ようやく声を掛けられて顔を上げ、声高に主張を唱えた。
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