王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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恋心 

反則 1

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 アルダシールは、指示された一点を目指しながらも巧みに道を逸れた。

 目指す場所は広場から、1回戦で走破した巨木を更に右に見た一角。

 そこには一際広大に枝を張ったレインツリーがあるらしい。

 詳細な講釈は聞いていない。エステルからはただ、そこを目指せとだけ言われた。

 主催者が競い合いの内容を事前に外部に漏らすことは当然禁じられている。

 だが、エステル本人は競い合いの内容を聞かされてはいない。

 エステルは”星読み”なる特殊な技能を授かっている。

 星読みは文字通り、幾百億の星の瞬きやその位置から求める知識を得られるらしい。

 だからアルダシールはエステルと取引をした。

 エステルの望みを叶える代わりに、アルダシールの欲する情報を提供してもらう。

 エステルの提示した条件は、ラークで行われる”競い合い”に参加し、勝利すること。

 この取引における難点は、秘密の保持だ。

 エステルは願いを叶える道順を星から得られる。けれど、同時に侵せない条件がある。

 望みに至る道筋と行き先は誰にも告げてはならない。

 秘術で知り得た情報が他者の耳に入れば、道筋に他人の意が介入する。

 必然である気もするが、何とも厄介だ。

 こと、今回においては。

 マクシムたちにはああ言い聞かせたが、本心は気が気でない。

 マクシムの主張通り、アシュレイは真っ直ぐな気性だ。

 一度、愛想を尽かせば、二度と戻ってくれまい。

「もうこの辺りでよかろう? お互いに回りくどい真似はやめて、決着をつけよう」

 似たような林道の続く森の途中で低木の一帯を見つけて足を止めた。

 1回戦のように全力疾走まではしておらず、呼吸は安定している。

「へっ、最後までカッコつけねえといられないのか、てめぇは」

 先にコモロを引き離し、脇道に逸れたにもかかわらず、シルランは後をつけてきた。

「案外と律儀な男だ。誘いに応じるとはな。コモロを追わなくていいのか」

「あんな奴は目じゃねえ。最後に勝つのは俺だが、お前だけはぶん殴らないと気が済まねえんだよ」

「殴るだと? その物騒なものはどこで手に入れた?」

 シルランは低木の一帯に姿を現した。

 小さく円状に切り抜かれたような低木地帯に、アルダシールとシルランの大きな身体が浮かび上がる。

 小振りではあるが、ちょっとした闘技場のように見晴らしが良い場所だ。

 殴ると宣言しておきながら、シルランは右腕に棍棒のような得物をぶら下げている。

「殴るってのは、何も素手だけじゃあねえだろ。コイツは防ぎようがないぜ。骨まで砕けちまうからな」

「一つだけ聞く。競い合いの最中に暴力沙汰を起こして、罪には問われないのか」

「そりゃあローネッドあたりに泣きつけばそうなるかもな。だが、オメェはここで再起不能だ。俺に敵わないと悟ったお前は、失意のうちに国に帰ったと伝えといてやる」

 シルランは得意気に棍棒を振り、鈍い音で空を打つ。
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