お飾りドールのあぶない日常 〜神の力と仲間は最強です〜

ケイソウ

文字の大きさ
1 / 38

プロローグ 【神のドール】

しおりを挟む

 真夜中――

 静まり返ったハイウェイを我が道と化し、縦横無尽に獲物を追うバウンティハンター。

「オイ! 奴はいたか?」
 
「見当たらねぇ、どこへ行きやがった!」

 所狭しと無造作に停められた車。一台がゆっくり走り出す。ヘッドライトが路肩を照らすと、古びた車を映し出した。そこには車体に寄り掛かり、眩しそうに手をかざす人物が立っていた。
 
 黒いシャツにタイトなズボン、大きめのブカっとしたグレーのブルゾンを羽織り、足元は黒いショートブーツといったスタイル。
 砂色のメッシュが印象的な、褐色の長い髪を胸元で束ね、時よりのぞかす銀のピアスが、端正な顔を引き立てている。
 そしてフッと口元に笑みを浮かべながら、黒いサングラスをゆっくり掛け、

「ハ~イお疲れ様。ではご機嫌よう」

 と、半ば揶揄うように言って車に乗り込むと、エンジンを掛け、アクセルを全開に踏んで勢いよく発進させた。

「クッソ! また逃げるぞ!」

 古びた車は軽快にスピードを上げて、追う者の車と車の間を擦り抜ける。
 ハンター達も一斉に走り出すが、仲間の車が邪魔をして身動きが取れず、仕方なく車を降りて交通整理から始めた――


――――――――
 

 遥か昔、神の時代――
 世界の秩序をそれぞれの役割と成す神々は、良くも悪くも絶えず世に恩恵をもたらす存在であがめられていた。
 全盛期だった神の時代は過ぎ去り、意味も知らないまつりの行事のみ、細々と伝わる時代が訪れる。
 
 天界にて――
 ある宴の晩、神々が酒に酔いしれ談義に花が咲く中、ひとりの男神が神殿に飾られた人形を手に取った。それは神の原初、大地の女神が密かに創り上げた泥人形。神々はその未知なるものに個々の力を与え、宇宙の無限界へと放った。
 その様子を観ていた天王が告げる――
 
「人を愛し、悩み苦しみ道を定めるまでは、関わる事これ罪とし罰とする。傍若無人ぼうじゃくむじんを尽くすことこれ必然。あとは己れの脚で決めさせれば良い」

 神々は天王の言葉に、一興いっきょうといった笑みを浮かべ、無言で承諾し従った。
 全ては生なる物に任せて――

 

*****



 私は一方的なカーチェイスをかわし、ハイウェイを抜けて何食わぬ顔で一般道を走る。
 
 気分転換を兼ねて、ファミレスへ寄った。
 駐車場に車を駐めて、店の自動ドアをくぐる。小さくBGMだけが聞こえる。

「いらっしゃいませ! お好きなお席へどうぞ!」
 
 元気ハツラツとパートらしきおばさん。真夜中とあって客の姿もまばら。
 私はいちばん奥のボックス席に座った。メニューを開いて珈琲と小腹を満たす物をチョイス。
 
「ピ~ンポ~ン」

 呼びボタンを押すと店員がすぐやって来た。

「ご注文はお決まりですか?」
 
「珈琲と、唐揚げ。以上」
 
「ご注文承りました。しばらくお待ち下さい」

 店員は慣れた笑顔で立ち去った。

「フゥ、やっと一息……逃げ切れたか?」
 
 メニューをスタンドに立て、テーブルに置かれた灰皿を見つける。どうやらこのエリアは喫煙が出来るらしい。ズボンのポケットからタバコを取り出し、珈琲がくるまで一服を決め込む。

 私はキーナ・エフケリア。
 性別は女、見た目は中間、振る舞いは男だ。まあ、誰もが私を女だとは思っていないし、仕事上知られると面倒なので男の振りをしている。言葉使いは完璧に男だけど。
 タバコも格好付けに始めたが、いつしか依存してしまった。百害あって一利なし、確かに。
 
 それはさておき、神々は私に曖昧な記憶を残した。言われた通り、盛大に暴れてやった。
 そして泥の殻を破り、人間へと変化し、様々な惑星を放浪した。
 
 傍若無尽ぼうじゃくむじんを尽くしていたその星々で、私は自称哲学者という男に出会った。キッカケはどうであれ、友と呼べるようになってから、生きるすべや、心の在り方をそれなりに学んだ。
 この名前も友が付けてくれた。キーナは好機、エフケリアは波、好機な波に乗れという意味だとか。

 私は友の生まれた惑星の話しを聴くのが好きで、よく耳を傾けていた。
 親愛なる友がちて果てるまで。

 私は友の語るその惑星に興味を持った。降り立って約半世紀あまり、少なからず、安住を得ることができた。
 第二の地球と呼ばれる青い惑星"レゾン・テール"に。私はいま、新都市ネオポリスのクレアティオ(創造)という街に根を下ろしている――
 

 私の仕事は"請負人アンダーテイカー"、主に闇組織からの依頼が多い。内容のほとんどは対立する敵側の抹消。だが私は両者を潰すのが目的、それを知らない悪党は今もこぞって私に依頼を頼む。
 この手の奴らは私を"壊滅請負人"と呼ぶ。こっちのほうが知名度が高いのは確かだ。
 
 私の日常に平穏はない、出逢いもなければ恋愛なんて夢のまた夢。そりゃあ、いちおう女だし、恋とかデートとかしてみたいと思うけど、恋愛感情なんて未知の領域、想像すらできない。いちおう努力はしてみますが。

 悪いがお飾りドールなんてこんなものさ――


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

処理中です...