お飾りドールのあぶない日常 〜神の力と仲間は最強です〜

ケイソウ

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23話 デュエルとリメンバー

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 直斗の言葉に、私と來斗に緊張が走った。

「爺ちゃんはかなりヤバい奴らと絡んでたみたいなんだ、しかもアゲハが裏で操ってやがる。その資料に爺ちゃんと関係のあった会社が載ってる、結構な一流企業だ、お前も知ってるんじゃないか?」
 
「ああ、羊の皮を被った狼どもだ」

 それよりも、西鎌と企業に対して過去形で話したことに私は疑問を持った。

「西鎌はもう絡んでないみたいな言い方だったけど、どういうこと? それと、なんでアゲハが絡んでるって分かったんだ?」

「まあ聞け。先ずジーンって名前が浮上した、アゲハのことだ、リーフが教えてくれたよ。そのジーンが爺ちゃんと取引きのあった会社と手を組んだ、そして嫌がらせやデマを流して爺ちゃんを失脚させた、今や爺ちゃんは地位も名誉も失った一般人だ」

 だから西鎌はこちら側に留まっているのか。だとすると桜ちゃんの財産、もしくはポリスの称号狙いだろう。桜ちゃんは知っているんだろうか。
 
 來斗は黙ったまま考え込んでいる。西鎌のことか、アゲハのことか、それとも父親のことか。私には分からないが今は見守るしかない。

 しばらく走って新居に着いた。作業が終わるまで桜ちゃんと西鎌には車で待機してもらった。
 リーフとルートは荷物に紛れて部屋の奥に隠れた、私達はせっせと荷物を運ぶ。
 
 そこへ物陰から私を呼ぶ声が聞こえた。あの声はデッドだ、出向いて来るとは珍しい。

「どうしたデッド、手伝いに来てくれたのか?」
 
「そのまま黙って聞け。西鎌の奴、相当追い込まれてる、街が騒しいから気を付けろよ」
 
「いよいよか。あ、部屋の内装ありがとな。まだ一階部分しか見てないけど、素敵な事務所だ」
 
「ヘッ、当然だ、結婚祝いだよ。じゃあな」

 なんで知ってんだよって今さら驚くことでもないか、きっとマスターも知ってるんだろうな。
 さて、街が騒がしいってことは私を襲いに来るんだろう、ここにいてはマズい。

 私は急いで西鎌の元へ行き、桜ちゃんを残して私の車に西鎌を乗せた。

「西鎌さん、ちょっと買い物に付き合ってよ」
 
「買い物? ドライブの間違いだろ?」
 
「ああ、その通り。依頼の最終段階だ」
 
「…………」

 多分、何かを察知したんだろう、沈黙した。
 私はなるべく人気ひとけのない、埠頭の倉庫街へ向かった。
 さあ、これから西側のドンとデュエルだ。

 赤い夕陽が水平線を染める頃、私と西鎌は埠頭の倉庫街に着いた。
 私は黙って車を降り、背伸びをして余裕を見せる。続いて西鎌が降りてきた。
 何やら携帯片手にニヤニヤと話をしている。

「随分と楽しそうだな。追加注文でもしたか?」
 
「いや~、キーナさんには参ったなぁ、詮索が過ぎると世の中渡って行けんよ」
 
「だろうな。でも仕事は貪欲に且つスピーディーにが基本だ。それが害虫なら尚更だ」
 
「ほう、それは儂のことか?」

 何から切り出すか、ここで時間を掛けても仕方がない、どうせ新たな害虫が押し寄せるんだろう。
 出だしはやっぱり夫婦の問題から――

「西鎌さん、何で桜ちゃんを裏切った?」
 
「裏切ったのではない、制裁だ。儂を西側なんぞに追いやった、だからよ」
 
「なるほど、ではさっそく本題に入ろう。ある男達が闇組織から逃げる際、仲間だったアゲハが姿を消した。アンタはその理由を知ってるな」

 西鎌は車に寄り掛かり話す――

「ポリスが追っていた暗殺軍団に儂らは乗り込んだ、そのときアゲハは幹部と思しき男に捕まっていた。だから保護したまでだ、当然の処置だろ」

 おそらく嘘はついていない――
 
「だがその後、アンタはアゲハを自分の子供に押し付けた、家族は苦難を強いられる、でもアンタは自分の事業に没頭して金儲け。桜ちゃんに限らず誰だって見切りをつけるわな」
 
戯言ざれごとを。お前に何が分かる」
 
「フッ、なら次だ。その助けたアゲハが敵に回った、取引先から見放され、地位も名誉も財産も失ってしまった。そこで來斗に見合いをさせた、來斗がトップに立てば自分の配下に置けると思った」
 
「……來斗は桜子よりまだまだ甘い。なのに勝手に結婚を決めおって……」

 ここから先はアゲハの単独犯だ、そろそろ終わりにするとしよう。

「桜ちゃんが悲しんでもアンタは平気なのか?」
 
「桜は、桜子は儂の生き甲斐だった。子供も産まれて順風満帆だったのに、シンジケートの乱れ、アゲハの件、桜子は儂を見放した、そして子供の死だ」

 多分だが、今も桜ちゃんを大切に思っているのではないか、きっと桜ちゃんも同じ気持ちなのかもしれない。夫婦のことは誰にも分からない。
 
「桜ちゃんの手だけ握ってりゃあ良かったのにな、多くを求め過ぎたんだよ」
 
「儂にはもうポリスしか残っとらん、桜子には悪いが全て頂く。誤算はキーナ、お前の存在だ」

 だろうな。さて、西鎌を奈落に落としたところで喜ぶファミリーなんかいやしない。
 そういえば、忘却の神から力を貰ったなあ、ならその力を使わせてもらうとしよう。

「西鎌さんよ、罪は罪として受け止めろ、後は桜ちゃん次第だ。余生は大事にしな」
 
「生意気なことを。お前にこの先はないぞ」

 何処からか車が連なる爆音が聞こえてきた。
 やはりあの電話で仲間を呼び寄せたんだろう。

「私を"ジョーカー"と知っての奇襲。いいだろう、受けて立つ!」
 
「フッ、小賢こざかしい。この間の様にはいかんぞ」

 なるほど、あの時のハンターはこいつの差金か。まさか、ハンターも牛耳ってるのか。
 とにかく潰すのみだ。久々に暴れてやる!


 ハンター達が一斉に車を降り、大勢が私を取り囲んだ。ほとんどの者が武器を所持。
 さすがに前の様にやられる気なんか更々ない、一気に片付けてやる。

 戦闘モード。
 "《処理能力オーバークロック》《強化エンハンス》"
 私は力を強化し、処理能力を上げた。

「さあ、私にひざまずけ――」

 "《稲妻ライトニング》"


 稲妻がハンターの身体を避けるように、次々と車体目掛け落雷する。そのエネルギーは地面を伝い、強力な静電気となりハンターを襲う――

「痛っ! 痛ってぇー! し、痺れる……!」

 車は木っ端微塵、ハンター達も次第に白目を剥いて昏倒した。唖然とする西鎌と、その横にブルブルと震える男がひとり――
 
「あれ? お前どっかで……?」
 
「ハッ!……」
 
「これはこれは、菅野彰吾さん。いつ舞い戻ってきたんだ? へえ、西鎌とグルだったとはねえ、お前も手広くやってんなあ」
 
「あ、いや、その……私はただハンターを……」
 
「もしかしてハンターの元締めはお前か? 呆れたなあ、次は無いぞ。ほれ、さっさと消えろ!」

 菅野は血相を変えて逃げて行った。残るは西鎌だ、どこから記憶を消すか。
 悪いが桜ちゃんとの出逢いから全て忘れてもらおう、悪事も何もかもリセットだ。
 先はそう永くないかもしれないが、残された時間は真っ当なままで終わって欲しい。

「西鎌琉ニよ、余生は静かに暮らせよ。じゃあな」
 
「な、なにを訳の分からんことを……」

 "《砂時計アワーグラス》"
 "《記憶エングラム ・忘却レテ》"


 術が発動すると、西鎌は頭の中で何かを思い出しているのか、一点を見詰め、遊び疲れた子供のように、足元から崩れ落ちて気を失った。

「東御桜子の記憶を消去した。しばし眠れ――」

 ハァ、桜ちゃんに怒られちゃうかな……。
 壊滅請負人の仕事は双方を潰すのが目的、依頼は果たせた、とは到底言い難い。

 桜ちゃんは任せると言った、私は私なりの仕事をしたと思う。後はふたりの問題、私の知るところではない。

 おっと、黄昏ている場合ではない。
 私は來斗に連絡を取り、ポリスと桜ちゃんを連れて来るように頼んだ――

 
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