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27話 魔女狩り②
しおりを挟むアゲハに実の父親がいることが判明した――
「好きだったパパやママ。でも、すべてポリスが奪ってしまった……」
來斗も堪らず参戦する。
「俺の親父がシンジケートの幹部に殺された。その幹部がお前の本当の父親だろ?」
來斗なりにいろいろ調べての追撃なのか、直斗の資料と合致する人物と照らし合わせて分かったことなのか、どちらにせよ、親子で幹部を調べていたのなら、多少の推測はついていたのだろう。
「だからって、一斉に撃ち返すことないじゃない、逮捕すれば済む話しでしょ? パパの死、父さんの死、もうどうでも良くなったわ」
そのとき、來斗がある資料を皆んなに配った。資料とは当時の事件記録だ。
幹部を逮捕しに向かった來斗の父親が、幹部に撃たれて亡くなった。応援に来ていたポリスがそれを受けて一斉に発泡した、そんな内容だった。
これが事実であれば、正当な行為だと思う。
アゲハはふたりの父親を同時に失った、また同時に正気をも失ったと考えるべきか、でも何かが違う気がしてならない。
すると――
「フフフッ、笑っちまうぜ、大したもんだ」
「ホントですよ。ねえ、クルックさん?」
リーフとルートが資料を手に、アゲハをクルック(詐欺師)と貶んだ笑みを浮かべて言う。
私は尽かさず尋ねた。
「リーフ、どういう意味だ、本心ではないと?」
「キーナさんも感じてるんでしょ? コイツは生まれながらの詐欺師、犯罪者ですよ。2年前、コイツに依頼されてある幹部を狙っていたんです」
ルートが続ける――
「そう。自分はその幹部に狙われている、だから敢えて自分が囮になるからそこを狙えってね」
「それがどうよ、ポリスを囮に仕掛けたんですよ。多分、幹部もよく確かめずに撃ったんだと思いますがね、僕らが見た限りでは」
來斗が咄嗟に聞き返す。
「おい、それじゃ親父は間違えて殺された?」
「そういうことです。まさか幹部がコイツの親父だとはね、嘸かし手に余ったんじゃないのか?」
「まあ、それなりに悲痛な表情で銃を構えてましたよ、子供の始末は親がってやつですかねぇ……」
何なんだこの会話は、耳を疑うぞ。
"事実は小説よりも奇なり"って言うが、実際に起こるのか、そんな事が……。
ふたりの異様な発言に、私達は恐ろしい魔女を相手にしているのかと、改めて身を引き締めた。
尚もアゲハは悪びれた様子もなく、嘲笑うかのように話す。
「チッ、どいつもこいつも余計なお喋りを。だから何よ、騙される奴がバカなのよ。楽して生きるには一番いい方法でしょ? ポリスも間抜けよね」
「何だと! ポリスをバカにするな!」
熱り立つ來斗をルートが宥める。
「まあまあ、來斗さん。別に庇うつもりはないが、コイツは一度、ポリス達に喰われそうになったことがあってな」
リーフが言う――
「その中のひとりが見兼ねて助けたんですよ。よくポリスや支援団体の連中と調査にきていた人で、あれは西側のドンって呼ばれた男だったかと」
「琉ちゃんが? そのためにアゲハを……アタシは琉ちゃんを誤解してたのかい……」
確か、西鎌がアゲハを保護したと言っていた、多分このことだろう。ポリスの汚名も隠したかった、そんなところか。
「プッ、バッカじゃない? わたしが喰われる? 冗談でしょ、そう仕向けたのよ。それなのにお爺ちゃんったら――フッ、所詮ポリスもただの男ってことよ、笑っちゃうわ! アハハ!」
何という浅ましい女、いやはや、何度も予想を覆してくれる。
売春行為が金のためか道楽かなんて、もう考えたくもないし理解したいとも思わない。
反撃バトルはアゲハの勝利か――
桜ちゃんよ、私が参戦してもいいんだよ、請負人らしく掻き乱してやる、一緒にバトルしようじゃないか。
「桜ちゃん、そろそろ請負人の出番じゃないか?」
「キーナさん……お願いできる?」
「ああ、バトンタッチだ。後は任せな」
さあ仕事だ。その誇った顔を曇らせてやる。
「バカねぇ、今更あんたがシャシャリ出て来たからって、何ができるって言うのよ、自慢でもしたいのかしら? 笑うわ」
「自慢かあ、私には自慢する夫がいる、君の自慢は何だろう。おそらく悪臭まみれの毒吐く口かな? その可愛い顔と臭い息のギャップが堪らないよね。おまけに糞が付く女なんだろ? 自慢したくもなるよね。ククッ!」
「どういう意味よ! わたしをバカにする気?!」
「バカになんかしてないさ、ただあまり臭いと逆効果だと思ってね。だって來斗にこうもアッサリとダメ出しされたってことは、よっぽど臭かったってことだろ? ほら、皆んなも眉間に皺寄せてるよ?」
「ブッ、クククッ、フフッ……」
「リーフ、笑い過ぎ……ブッ!」
屈辱的な言い回しを並べてみた。成功?
「フン、來兄に見る目が無かっただけよ。まったく、あんたみたいなデカい女のどこがいいんだか! 神経疑うわ!」
「ホントになあ、でもさあ、可愛いって言ってくれるよ? 綺麗だって、優しいって、私を自慢してくれるんだよ。君はさあ、誰かに認められたいとかないの? これが君の本当の姿なのか?」
出会った時、私を男だと思っていたのかもしれない。でも、痴漢騒動で捕まった私を助けてくれた、タバコ屋で優しく接してくれた、あれも全部嘘とは思いたくないんだ。
「そんなの知らないわよ。わたしは今のわたしに満足してるの、本当もウソもこれがわたしよ」
「そうか、私より小さくて可愛いくて女らしいのにな。私もいちおう女だけど、女言葉は不慣れでね。でもね、それで笑われたこともないし、馬鹿にされたこともない。なあ私と君、何が違うと思う?」
「だから知らないって言ってんでしょ! しつこい女は嫌われるわよ!」
「君みたいにか。しつこいっていうのは、言い換えれば傲慢、執着、自分勝手だ。君はそのすべてを兼ね備えたゲスウーマンだ。醜いなあ」
「な、なんですって! 失礼な! 男女みたいなデカい怪物よりマシでしょうよ、偶然の産物? みたいな。アハハハ!」
なるほど、偶然の産物か――確かに、お飾りのドールが偶然と神の目に止まり、力を得て怪物になった。でもドールの私からしてみたら、人間のほうがよっぽど怪物に近いと思うけどな。
ああ、そうか、神は醜悪な人間の対抗策として、私を創り出していたのかも、移りゆく人の心を危惧して……怪物ねえ。
「やれやれ、怪物のお出ましか。私が怪物ならお前は腐った屍だ、怪物よりも使い物にならない屍、臭いお前にピッタリだろ?」
「屍って、そんな……」
「そう、振り返ることも考えることもしない屍どうぜんの骸だ。お前は親切にしてくれた大勢の人を泥足で踏み躙った。私の制裁は甘くない、覚悟しろよ」
初めてアゲハの顔に恐怖が滲む――
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